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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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234 水着で海水浴!

 海水浴場までは、町から馬車で行くことができた。

 直通便がたくさん出ていた。


 馬車で15分。


 それほど遠い場所ではなかった。


 海沿いの道を、馬車に揺られてカタコト。


 途中で会話するのはカメ様のことだった。


「……ねえ、クウ。結局、カメ様ってなんなのかしらね。カメで、魚人で、なんか偉い人とか言ってたけど」


 海を眺めつつアンジェがつぶやいた。


「カメの偉い人なんじゃないかなぁ」

「そのまんまね」


 我ながらそう思う。


「でも、カメ様っていうくらいだし、そうなんじゃないのかなー」

「子供だましの作り話な気もしたけど」


 お兄さんの態度を思い出すと、そんな気もするよね。


「でも、カメの人はいるよ」


 私は知っている。

 カメの人はいる。

 いるのだ。

 悲しいけれど、少なくとも私の幼なじみたちが……。


「いるんだ?」

「うん。私、知ってるし。だから、この海にいても不思議はないかな」

「じゃあ、海には凶悪な魔物もいるのね……」


「……わたくしたちが昨日の夜、砂浜でオバケに遭遇しなかったのは、運がよかったからなんでしょうか」

「気になるなら今夜もこっそり行ってみる?」

「あの、クウちゃん? わたくし、別にオバケが見たくて言ったわけでは」


「セラ、オバケが見たいのならここで出してあげようか? ボクの力なら、夜にならなくても呼び出せるよ?」

「遠慮しておきますっ! やめてくださいね、ゼノちゃん!」

「はははっ! わかってるわかってる。ごめんね」

「もうー」


「セラはかわいいねー」


 私は思わずセラの頭をナデナデした。


「もう、クウちゃんっ! わたくしを子供扱いしないでくださいっ!」

「ごめんごめんっ! セラがかわいくってさ、つい」

「もうー!」


「いずれにせよ、ボクが見た限り悪霊の気配はなかったから安心してもいいよ。出てくるとしてもただのバケモノだね」

「ならいいですけど……。って、よくはないですよね」


 セラが苦笑いする。


「平和なのが一番だねー」


 私も笑いつつ、海辺の景色に夢中なエミリーちゃんの頭をナデナデした。


 海水浴場に到着。

 馬車から降りて、広がる光景に私は感動した。


「おおっ!」


 まさに海水浴場だった。

 砂浜の奥に木の建物が並んでいる。

 海の家だ。

 表には水着にエプロン姿のお兄さんやお姉さんがいて、客引きをしている。


 客の姿も多い。


 大いに賑わっていた。


 みんな水着姿だ。


 明らかに獣人ばかりだけど、お姉さんに誘われるままに海の家に入った私たちを見ても嫌がる人はいなかった。

 うん。

 楽しい時間を過ごすことができそうだ。


「さあ、みんなー。水着はいろいろ準備しておいたから、サイズの合ったものの中から好きなのを選んでねー」


 私はテーブルの上に水着を広げた。

 すべて、おとなりのブティックで買ってきたものだ。

 どれもお洒落でかわいい。


 最初は恥ずかしがっていたセラも、実際に海水浴場に来てみて、まわりがみんな水着姿なので安心したようだ。


 私たちは楽しく水着を選んで、更衣室で着替えた。

 みんなの衣服は私がアイテム欄に入れた。

 これで盗難の心配はなし。

 しかも、汚れが落ちてピッカピカ。


 さあ、というわけで。


 お披露目たーいむ!


 まあ、みんなで一緒に着替えたわけなんですけれども。


 そこはそれ。


 眩しい太陽の下、白い砂浜の上でこそ、さらに若葉は輝くというわけで。


 ゼノが黒いビキニで、アンジェは赤いビキニ。

 私たちはワンピース。


 私は水色。

 エミリーちゃんは黄色。

 ヒオリさんは緑色。

 フラウは黒色。

 シルエラさんは紺色。

 セラは白色。


 それぞれに似合う色があって面白い。

 まあ、そう選べるように買ってきたのは私だけど。


 特にセラは、うん。

 前世の古きゆかしきスクール水着っぽいデザインが、白色の生地と合わせて、とてもよく似合っている。

 とはいえ、それは前世的な感想だ。

 口にはできない。


 となれば……。


「ゼノはわかるけど、アンジェって意外に大胆だったんだねえ」


 そう。

 赤いビキニのアンジェ。

 そこはかとなく、というか水着的にも、えっちだ。


「せっかくなんだし、思いっきり開放しないとねっ!」

「ねえ、ボクはわかるってどういうこと?」

「いや、だって。そもそも妖艶だよね。よく似合っているなーと思いまして」


 えっちい感じでは、うん。

 アンジェの勝利だね。


 曲線美でいえば、ゼノが妙に見惚れる。

 まるで工芸品だ。

 さすがは闇の大精霊。

 というか闇なのに陽射しの下にいて平気なのかなと思ったけど、今更すぎるし気にしないことにした。


 あとのメンバーは、私も含めて年齢相応。

 普通にかわいいです。


 まわりが獣人ばかりなのもいいね。

 人間や亜人の私たちは、たいして人目を引いていない。


 セラとアンジェとエミリーちゃんとシルエラさんには魔法障壁をかけておく。

 事故防止だけではなくて日焼け防止も兼ねて。

 私とフラウとゼノとヒオリさんは種族的に日焼けしないし、事故に遭っても平気だろうからそのままだ。


「ねえ、クウ。じゃあ、早速だけど泳ぎ方を教えて?」

「わたくしもお願いしますっ! この機会です! 水泳を学びたいです!」

「2人とも真面目だねー」


 まあ、いいけど。


 といわけで、セラとアンジェに水泳教室を開くことになった。


 まずは波打ち際で戯れて。

 慣れてきたら、今度は海に浮かんでみる。


 その後は、お手本で泳ぐところを見せてあげたんだけど。


 2人は運動神経抜群。

 しかも物覚えがいい。


 あっという間に泳ぎを覚えて、すいすい進めるようになりました。


 エミリーちゃんは最初から泳げて、私のそばで遊んでいた。

 川でよく泳いでいるそうだ。


 シルエラさんも普通に泳ぐことはできて、セラの近くに控えていた。


 ヒオリさんとゼノとフラウは、海の家で浮き輪を借りて、ぷかぷかと波間に浮かんでのんびりとしていた。

 と思ったら、いつの間にか海の家で焼きそばを食べていたけど。


 ともかく。


 そんなこんなで。


 変なヤツに絡まれることもなく。


 私たちは、晴れた空の下、穏やかな青い海で楽しく遊ぶことができた。


 海の家でランチを取って。


 たっぷりと泳いで。

 休憩がてら砂浜でお城なんかも作ってみたりして。


 あっという間に楽しく1日は終わった。


 着替えて、帰りの馬車に乗る。


 町の発着場に着いた頃には、空は赤く焼け始めていた。


「あー疲れたー。今日は遊びすぎた気がするわねー」


 通りを歩きながらアンジェが背伸びをする。


「ですねえ……。わたくしも体が重いです……」


 セラはぐったりと肩を落としている。


 2人とも日焼けはしていない。

 私の魔法障壁は、バッチリ効いていたようだ。


「クウちゃん、今夜はどうするの?」


 エミリーちゃんが聞いてくる。


「宿に泊まろうか。それで夜はお笑い大会をしようっ!」

「えー。今夜やるのお。私、くたくたなんだけどー」


 アンジェが悲鳴みたいな声をあげる。


「やろうよー。だって最後の夜は、どうせ静かな方がいいって言うでしょー」

「なら明日の夜でいいでしょー」

「だって明日の夜には、何か起きてるかも知れないしー。今夜は平和そうだから今夜しかないと思うのー」


 ねーねー。


 アンジェにすがりついてお願いする。


「もー。セラはどうなの?」

「わたくしは……クウちゃんがやるというなら死ぬ気でがんばりますけど……」

「死ぬ気でって……。ほら、クウ。どうするの?」

「うう……」

「あ、いえっ! ちがいますよ! わたくしが言ったのは、しぬ……しぬ……しーんとぬるやかな気持ちってことです! 楽しみですねえ! 楽しみですねえ! ものすごく楽しみですわたくし!」

「ほらー」

「うううう……」


 はい。うん。

 アンジェに言われなくてもわかったよ。


「……なら、明日ね?」


 私は上目遣いで確認する。


「そうね」

「絶対だよ?」

「わかったからー」

「ホントだよ?」

「私もなんか芸を考えておくから期待してて。ね、セラも」

「は、はいっ! もちろんですっ!」


 ならいっかー。


「じゃあ、みんな! 明日の夜ね! 旅のメインイベント! 第3回、シルエラさんを笑わせようの会!」


「ほいほーい。ボクとひおりんは、もう考えてあるからいつでもいいよー」

「はい。お任せ下さい、店長」

「わたしもっ! ネタはあるよっ!」


「なんの話かわからないのであるが、クウちゃんがいつも見せてくれているようなものを妾もやればよいのであるか?」

「フラウには突然すぎる話だから、今回は見学でもいいよー」

「ふむ……。それが妥当な気もするのであるが、やはり仲間として旅をしている以上は参加するのである」

「無理しなくてもいいからね?」

「任せておくのである。クウちゃんの芸を真似てみるのである」


「……み、みんな、乗り気なのね」

「アンジェの芸も期待してるよー」

「わかってるわよ。やるからには任せといて! 前回に負けない笑いの大輪をクウたちに届けてあげるから!」


「わ、わたくしも! 楽しみにしててくださいね! クウちゃん!」

「うんっ! 楽しみにしてるー!」


 盛り上がってきた。

 これは、うん。

 明日の夜は、すごいことになりそうだね!



 と、楽しく話しつつ歩いていると――。


「いたぞ! 昨日の連中だ!」


 海賊っぽい衛兵さんたちが、私たちの方に向かって走ってきた。





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― 新着の感想 ―
[一言] 水着はおとなりのブティックで買ってきた どうやってクウちゃんは全員の体のサイズを知る事ができたのかな(笑)
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