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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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232/1359

232 陰謀の予感?

 連れて行かれたのは、浜辺から離れて10分ほど歩いた先にあった建物。

 サウス辺境伯領ランウエル衛兵事務所。

 と、看板が出ていた。


 中に入ると事務所があって、海賊の親分みたいな風体の、長い髪の日焼けした男が机に座って書類を読んでいた。


「隊長、不審者を発見、拘束して連れてきましたよー」

「はぁ? マジか。めんどくせぇなぁ。って、おい、なんだその娘どもは? まさか貴様ら悪戯目的か!?」

「ちげーますよ。こいつらが浜辺で呑気に寝てやがったんですよ」

「……はぁ? どっから入った?」


 長い髪の頭を掻いて、隊長と呼ばれた男がぼやいた。


 ソウルスロットの銀魔法を敵感知に変えてみたけど、反応はなかった。

 事務所の雰囲気からして海賊の拠点には見えないので、どうやらこの海賊みたいな連中は本当に衛兵のようだ。


「さあ。これから聞いてくださいよ」

「めんどくせぇ」


 この後、私たちは砂浜にどこから入ったのかをしつこく聞かれた。

 主に私が対応した。

 作戦はたった一つ。


 必殺、子供のふり!


 知らないってばー。

 夜の散歩してたら迷子になって、いつの間にか来てたのー。


 知らないってばー。


 もう、あんまりしつこいとパパに言うよ!


 パパって誰だよ!

 と我ながら突っ込んだけど、私にはいなくてもセラとアンジェには強いパパがいるしね問題はない。


 そもそも私たちは、自分でいうのもなんだけど、みんな美少女だ。

 しかも仕立ての良い服を着ている。

 しかもメイドさんがいる。

 特にセラとアンジェは、どこからどう見てもご令嬢だ。


 まあ、最後はアレです。


 面倒になったので、久しぶりに帝国印のペンダントを使わせてもらいました。

 皇帝陛下のお墨付きです。

 選ばれし者しか持つことを許されない品です。


 これで隊長さんは折れた。


「もういい。このご令嬢様どもを荷馬車に乗せてリゼントに送り返せ」

「隊長、3時間はかかりますぜ?」

「おまえらホントにどうやって来たんだよ!?」

「だから、知らないってばー! 散歩してたらいつの間にか来てたのー!」


 というわけで。


 私たちは、たっぷりと3時間。


 荷馬車に揺られてリゼントの町に戻った。


「……ねえ、クウ。テント、どうする? ……置いてきちゃったわよね」


 最初にまず、アンジェが聞いてきた。

 次にセラが、


「どうして観光名所になりそうな場所が立入禁止なんでしょうか」


 と、疑問を口にする。

 するとゼノがとても楽しそうに言った。


「陰謀の予感がするね!」

「陰謀かぁ……」


 たしかに怪しい。


 荷台から見たけど、ランウエル海岸の周囲は本当に柵で覆われていた。

 ゲートには「立入禁止」と大きく書かれていた。

 なんの理由もなく、そんなことはしない。

 なにか理由があるのだ。


 ただ、私たちは、普通に一晩を過ごした。

 平和で、綺麗で、素晴らしい砂浜だった。


 隊長さんにも部下の人にも聞いたけど、教えてもらえなかった。

 駄目なものは駄目。

 だった。

 町に連れて行ってくれた海賊っぽい衛兵さんとは道中で仲良くなったけど、それでも教えてはもらえなかった。

 見た目も態度も海賊なのに、なかなかに口は堅かった。


 ゼノに闇の力を使ってもらうか権力を笠に着れば聞き出すことはできたかも知れないけどそれはやめておいた。

 敵対していない人に力任せのことするのは気が引ける。

 それに、海賊に見えても衛兵さんだし。

 昨日は敵対したからブチのめしたけど。


 あれ、というか。


「ねえ、私たちってさ、普通に町にいて平気かな?」


 ふと思った疑問を口にしてみる。


 通行人がね。


 ちらちらと私やゼノのことを見て、目をそらしたりしているし。


 うん。


 昨日は派手にやったしね。

 目撃者は、とてもたくさんいただろうし。


「みんな、とりあえずローブを着ようか」


 私はみんなにローブを渡した。


 そして、手近な食堂に入った。

 お任せで人数分x2の名物を注文してから、私は声を上げた。


「作戦会議! どうすれば私たちが平和にバカンスを楽しめるかー!」

「もう無理じゃない?」


 アンジェが無慈悲に肩をすくめる。


「でも、これはこれで素敵な旅ですよねっ! わたくし、怖い人たちに連れて行かれた時には本当にドキドキしましたっ!」

「あの……店長。いっそ場所を変えるというのは?」

「妾は空腹なのである。早く食べたいのである」

「ボクもー。クウってば意地悪して、町に戻る途中で何も出してくれないしさー」


 ふむ。


 前向きな意見がないね!


 ちなみに道中で空腹のゼノとフラウとヒオリさんを無視したのは――。

 さすがに衛兵さんの前でアイテム欄を披露するべきではないという、私の超大人な判断によるものだ。

 断じて意地悪ではないのだ。


「エミリーちゃんはどう? なにかいいアイデアはない?」


 私はエミリーちゃんに聞いてみた。


「わたし、よくわからないけど、海岸に入ったらいけないのって陰謀なのかな?」

「ふむ。陰謀かどうか、か……。陰謀かも知れないね……あるいは……」


 可能性としては有り得る。


「わたし、知ってるよ。それなら元から断たないと駄目なんだよ。雑草と同じでそうしないとまた生えてくるの」


 なるほど。

 一理ある。


「でも、元ってどこだろ……」

「それは……。きっと、偉い人、だよね……」


 領主かな?

 大事になりそうだ。


「はーい! お待たせー! リゼント名物、エビとカニの塩茹でだよー! 殻を剥いて食べてねー! 特製スパイスはお好きにつけてねー!」


 考えていると、ウェイトレスのお姉さんがやってきて。

 テーブルにどかん、と。

 甲殻類を山と積んだ大皿が置かれた。


 ヒオリさんとゼノとフラウがわっと食らいつく。


「うわぁ。美味しそうですね」

「すごい迫力ねえ」


 セラとアンジェは湯気を立てるエビやカニに息を飲む。

 おそるおそるカニを掴んで、あとは夢中で食べ始めた。


「エミリーちゃんもどうぞー」

「クウちゃんは?」

「私はもう少し考えてみるよ」

「ならわたしも考える。クウちゃんのお手伝いがしたいの」

「ありがとう。でも、食べながらでいいよー。私も食べるからー」


 私が食べないとエミリーちゃんも食べそうになかったので、食べることにする。

 カニを手に取って、甲羅を指でパリンと割る。

 そして中身をほじって食べる。


 うまっ!


 なんとジューシーな肉!

 噛まなくても、口の中でほろりと解けていく!

 まるで熟れた果実のように!


 食べつつ、決めた。


 とりあえず、町の人に聞いてみよう。


 どうして立入禁止なのか。

 実は町の人なら普通に知っていることかも知れないよね。



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