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23 異世界もふもふ岩山生活




 真っ白な巨大狼と目が合う。

 巨大狼に私を襲ってくる様子はなかった。


「どうしたの?」


 たずねると近づいてくる。

 私のとなりにしゃがんだ。


「食べる?」


 リンゴをあげると食べた。


「君、どこから来たの?」


 返事はない。

 別のこともしゃべってみたけど返事はなかった。


「まあ、いいか」


 どう見ても敵意はなさそうだ。

 私のとなりで丸まって、巨大狼は目を閉じている。

 私も眠くなってきた。

 巨大狼に背中を預ける。

 純白の毛はもふもふだった。

 しかも温かい。


 私の意識はすぐに溶けていった。


 目覚めれば、朝。


「あれ?」


 巨大狼の姿は、どこにもなかった。

 私は岩の上でひとりで寝ていた。

 もしかして、夜、私を守るために来てくれたんだろうか。

 そうかも知れないのでお礼を言っておく。


「狼さん、昨日はありがとね」


 朝食を食べる。

 さあ、今日も採掘だ。

 ブロンズピックを肩に担いで、とんがり山の方向に出発。

 ソウルスロットは、黒魔法、採掘、敵感知。

 一応、戦いにそなえているんだけど、あまりに平和すぎて、黒魔法も敵感知もいらない気がしている。

 でもまあ、念の為に。


 新しい採掘ポイントはすぐに見つかった。

 近くにいたオオトカゲくんに挨拶して、着地。

 オオトカゲくんは場所を空けてくれた。

 ありがとね。


 オオトカゲくんに見守られながら、早速、掘ってみる。

 熟練度が上がって採掘ポイントが目視できるようになったので、失敗することなく一撃で掘ることができた。


 ガツン。


 鉄鉱石が出た。


「おおお!」


 感動だ。

 目的の鉱物が一発で出てくるとは。


 私は掘りまくった。


 途中でブロンズピックが壊れたので、アイアンインゴットを生成、木材と組み合わせてアイアンピックを作った。

 喉が乾いたらバケツの水を飲む。

 水が少なくなったら谷底の川に汲みに行く。

 お腹が空いたらパンだ。


 鉄鉱石が出る岩場の一帯はオオトカゲくんの住処らしく、たくさんのオオトカゲくんに出会った。

 ごめんね住処を荒らして。


 結局、丸一日、日が暮れるまで鉄鉱石を掘り続けた。


 なんと300個も集まった。

 ホクホクだ。

 これだけあれば、鉄の剣が何十本も生成できる。


 採掘熟練度は50になった。

 たぶん、鉄鉱石の採掘で上がる限界まで育った。


 夜は昨日と同じ岩の上で寝た。

 巨大狼くんがまた来てくれて、2人で寝た。

 そして朝。

 目覚めると昨日と同じように、もう巨大狼くんはいなかった。

 お礼を言って、朝食を取って、出発。


 今日は昨日よりも、さらにとんがり山に近づいた。

 採掘ポイントを見つけたので、早速、掘ってみる。


 ガツン。


「おおおお!」


 思わず声を上げてしまった。

 銀鉱石が出た。


 銀貨作り放題だよこれ!

 やった!


 と思ったけど、私のレシピに銀貨はなかった。

 残念。

 なんでも作れるとはいっても、レシピ表にあるものに限られるのが私の弱点だ。

 なら、なんでもじゃないね、うん。

 貨幣なんて勝手に作ったらこの世界でも確実に重罪だろうし、一瞬、喜んだけど作れても作らないけどね。


 ともかく、銀鉱石があれば装飾品が作れる。

 すごい高値がつくかも知れない。

 頑張って集めよう。


 銀鉱石の取れる山はグリフォンくんたちの住処だった。

 興味深そうに近寄ってくる。

 もしかして掘っちゃいけないのかな……?

 とも思ったけど、やめさせようとする様子はないので掘らせてもらった。


 途中で子供のグリフォンが頭に乗ってきて「くるるる」と楽しそうに鳴くものだから振り払えずに困った。

 爪を立てずに乗ってくれたので痛みはなかったけど、首が疲れる。

 リンゴをあげたら降りてくれたので助かった。


 ちなみにここしばらく体を洗っていない。

 なのに体は綺麗だった。

 大発見があったのだ。

 なんと『透化』すると体の汚れが落ちる。

 手に持った鉱石の汚れも『透化』すると落ちた。

 まさに万能クリーナー。

 おかげで髪もサラサラでキラキラのままだ。

 素晴らしい。

 アイテム欄も同様に、汚れを落として鉱石を収納してくれていた。

 有り難い。

 ただしローブだけは、『透化』しようがアイテム欄に入れようが、汚くて埃臭いままだった。


 なんでだろうなぁ……。


 調べたところ、判明。

 なんとアイテム名が「汚れたローブ」だった。

 やむなし。

 これ、洗ったらどうなるんだろうか。

 アイテム名が変わるんだろうか。

 洗剤が手に入ったら試してみよう。


 そんなこんなでこの日も頑張って、200個の銀鉱石を手に入れた。

 鉄と比べると疲れやすくて取得数は減ってしまったけど、熟練度は70まで上がった。


 日が暮れて夜。


 私はいつもの岩の上で、いつもの真っ白な巨大狼くんとくつろぐ。


「あ、そうだ。私、そろそろとんがり山の近くに寝る場所を移そうと思うから今夜でお別れになっちゃうかも」


 この岩も、けっこう遠くなってきた。

 狼くんにお礼を言う。

 いつものごとく、返事どころか何の反応もなかったけど。


「すぐには無理だけど、また来るから。また会おうね」


 翌朝。

 目覚めるといつものように巨大狼くんはいない。

 私は今日も採掘だ。

 大地の裂け目を飛び越えて、この日はさらにとんがり山に近づいた。

 いよいよ麓が近い。

 ポイントがあったので掘る。


 なんとミスリル鉱石ゲット。


「やった!」


 思わずガッツポーズをしてしまった。

 ミスリルがあれば、魔法の武具を作ることができる。


 私は張り切って採掘を進めた。


 しかし残念ながら、なかなかミスリルは出てくれなかった。

 大半が宝石の原石だった。

 それはそれで価値はあるんだけどね。

 加工してアクセサリーにすれば、大金へと変わるはずだ。

 私、お金持ち確定。

 数日前までの金欠はどこへ行ってしまったのか。

 いかん、笑いがこぼれる。

 まあ、ただ、こっちの世界に来てからの経験に鑑みると、一気に売るのはやめたほうがいいだろう。

 他の人の生活を壊してしまうかも知れない。

 なのでここは冷静に。

 やはり、工房の宣伝を目的として、ミスリルを第一に集めよう。

 いきなり大金を手にしても仕方がない。

 地道な第一歩を目指そう。

 ミスリルがあれば、ロックさんたちに渡せるレベルの武器も作れるはずだ。

 ロックさんたちのパーティー『赤き翼』は有名みたいだし、最高の宣伝塔になってくれるはずだ。


 私は頑張った。


 夢中になって掘り続けた。


 なので気づくのが遅れた。


 ん?


 なんだか急に暗くなったなぁ。

 顔を上げてみると。


「え」


 大型バスよりも大きな黒い竜が私の頭の上にいた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 邪神関係以外は敵対しないのかな。 そうかんがえると雑に敵対してくる人間って邪悪だわw
[一言] 他作品から伝って見つけてここ迄拝読させて頂きました。 軽いテンポでついついするっと読んでしまいます。 設定もクリティカルヒットでこの後も楽しみです。 あれか、精霊様なので魔物からも崇めら…
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