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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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214/1359

214 当たり前でしょー。騎士なんだし





 騎士の一団がやってきた。

 先頭にいた鎧姿の男が馬の上から私たちに目を向ける。


「あれ、ノルロアさんじゃん」

「君は――クウちゃんか。どうしてこんなところに」


 そう。


 馬に乗って現れたのは、Aランク冒険者パーティー『赤き翼』のメンバーで貴族令嬢なノーラさんの親戚――。

 20代半ばから後半くらいの貴族男性――。

 見た目は軽薄そうだけど、話してみると真面目な軍人さんだった――。

 ノルロアさんだ。


「一体、何があったのだ? 騒ぎと聞いて急行したのだが。フロイトのこの醜態はどういうことなのか」


「隊長! すぐにこのガキどもを捕らえて下さい! こいつらは反逆者です!」


 フロイトが喚く。


 ノルロアさんはそんな中で気づいたようだ。

 私のとなりに誰がいるのかに。


「こ、これは――っ! 全員、すぐに馬から降りろ!」


 命じると共にノルロアさんは馬から降りた。

 片膝をついて頭を垂れる。


「大変に失礼致しました、セラフィーヌ皇女殿下」


 その言葉を聞いて、他の騎士たちも慌てて同じ姿勢を取る。


 お店の中で様子を見ていた人たちが、おおやっぱりそうなのか……とひそひそ声ながらも歓声を上げる。


「私は中央騎士団所属、正騎士ノルロア・フォン・タージェと申します。現在、この一帯の治安維持活動を行わせていただいております」

「この者は貴方の部下ですか?」


 フロイトを見据えるセラの目は冷たい。

 ノルロアさんが認めると、セラがフロイトを断罪する。

 するとフロイトが見苦しくも、そこまではしていないと否定してくる。


「本当にさぁ……。なんで反省しないの?」


 私はローブを脱いで、腰に手を当てて、地面に座って縛られたままのフロイトのことを見下ろした。


「お、おまえは……!」

「こんなことばっかりしていて、いくら貴族だって何度もチャンスはないよ?」

「黙れっ! 貴様、よくも私を騙したな! 隊長、このガキは重罪人です! セラフィーヌ殿下に成りすまして――」

「殿下なら今、彼女のとなりにいるが?」

「う――。そ、それは……」

「そもそも私、セラだなんて名乗ってないしー」


 うん。


 相手が勝手に勘違いしただけだ。


「黙れ偽姫が!」

「無礼者。こちらのお方も姫君だ。先日のパーティーでは皇太子殿下のエスコートで入場されたお方なのだぞ」

「なっ……。そんなバカな……」


「ねえ、なんでそんなにエッチなの? いつも女女って」


 わけがわからないよね。


「黙れ! 貴様のようなガキに興味などない!」

「ウソつけー! 私のことも、前にエッチな目で見てたくせにー!  まだ幼いが美しいとか、存分に保護してやるとか、言ってたよねー!?」

「なっ……。ク、クウちゃんのことを……そんな……」


 話を聞いていたセラがよろめいた。


「セラ、見られただけだからね? 私、なんにもされてないからね?」

「許せません。――ノルロア!」

「ハッ」

「この者に情状酌量の余地はありません。直ちに帝都に送還、厳罰を与えなさい」

「まあ、待ってよ、セラ」

「クウちゃん! この不埒者をかばうのですか!?」

「そういうわけじゃないんだけどね……」


 セラが感情的になっている分、なんとなく冷静になってしまった。

 精霊だけに?


 れいせいとせいれい。


 ふむ。


 これはちがうか。


 失敗。


 私はフロイトの前にしゃがんだ。


「ねえ、なんで反省しないの? なんでそんなにエッチなの?」


 正面からじっとフロイトの顔を見てたずねた。


「私は任務に忠実なだけだ!」

「だーかーらー、そういうのはいいからさー」


 フロイトが私のことを睨みつけてくる。


「隊長」


 そこに兵士の1人が走ってきた。


「どうした?」


 ノルロアさんがたずねると、兵士の人が小声で報告する。

 森に魔物が出た。

 哨戒に出ていた冒険者が発見したそうだ。

 低級だけど数が多く、じわじわと町に近づいてきているという。


「任務に忠実なら、もちろん戦うんだよね?」

「ま、魔物とか!?」

「当たり前でしょー。騎士なんだし」


 私はフロイトのロープを解いた。


「……クウちゃん、この不埒者を許すのですか?」

「許すというか帝都に送っても厳罰は難しいだろうし、それならここで任務を全うしてもらおうかなーと」

「……わかりました。クウちゃんがそう言うのならば、わたくしも納得します」

「ありがと、セラ」


 セラに笑いかけてから、私はフロイトに冷たい目を向けた。


「――せいぜい頑張りなよ? ヨワヨワのボンボンでも騎士なんだから、せめて意地くらいは見せてよね」

「くっ。言いたいことを……!」


 ヒオリさんに頼んで、他の連中の拘束も解いてもらった。


「感謝いたします、姫様。フロイト、立て! 行くぞ!」


 フロイトの尻を蹴って急かし、ノルロアさんは馬に乗った。


「御免!」


 セラにそう告げて、颯爽と馬を走らせる。


「お、お待ちを! 行くぞおまえら!」


 兵士たちを連れて、フロイトは後に続こうとする。

 最後に私への捨て台詞は忘れない。


「貴様……。おぼ、おぼ……お……」

「なぁに?」

「くっ。なんでもない!」

「はいはい。覚えていてあげるから、ちゃんと戦いなよ」


 さすがに姫様と知ってか尻すぼみになったけど、フロイトの敵意がセラではなくて私に向いたのはよかった。

 私ならなんとでもできるしね。


 やがて夜の街道にフロイトたちの姿は消えた。


 ヒオリさんたちが私のところに来る。


「店長、大丈夫でしたか?」

「あんな奴、殺しちゃえばよかったのにー。そうすれば後腐れもないのにー」

「さあ、夕食に戻るのである」

「クウちゃん……。フロイト、反省していないね……」


 ヒオリさん、ゼノ、フラウ、エミリーちゃんが、それぞれ声をかけてくる。

 お腹も空いたし、とりあえず食堂に戻って夕食を取ることにした。

 魚料理は絶品だった。

 食堂の空気は、最初、微妙だったけれど……。

 うん。

 私たちのせいだね。

 ものすごーく、視線を感じる。

 ただ、幸いにも、しゃべりかけてくる人間はいなかった。

 その内にお店は賑わしさを取り戻す。


 食事をおえて、私たちは部屋に戻る。


「さて。というわけで、なんか出てきたみたいなので私は少し行ってくるね」

「ボクも行くねっ!」

「いいけど、まずは様子を見るからね。すぐに暴れちゃダメだからね」

「わかってるってばー。クウじゃあるまいに」

「ならいいけど」

「あれ、いいんだ?」

「あれ? あ、よくない? まあ、いいか」


 私は窓を開けた。

 川の流れる音と共に、湿った夜の空気が部屋に入ってくる。


 人と魔物の争いということでフラウは静観を申し出てきた。

 フラウにはセラたちのことをお願いする。

 セラたちは留守番だ。

 セラは残念そうに肩を落としたけど、多数の魔物が相手ではなにがあるかわからないので連れて行くことはできない。


「もしかしたらこっちにくるかも知れないし、その時はお願い。特に悪霊なら回復魔法が攻撃手段になるし」

「そういえば悪霊騒ぎもあると言っていましたよね。わかりました。その時にはわたくしもがんばります」

「うん。お願い。ヒオリさんもお願いね?」

「はい。某も守りを固めておきます」

「わたし、応援しているね。クウちゃん、ゼノちゃん、がんばってね」

「うん。ありがとー」


 最後にエミリーちゃんの頭をなでて、私は夜の空に舞った。




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[気になる点] ノルロアさん、158話ではノルロア・フォン・タージェさんだったような
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