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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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167 バドローナ地下洞



 山の麓のダンジョン町についた。


 私は飛んできたけど、聖都とは整備された街道でつながっていて移動は楽そうだった。


 姿を消して浮かんだまま、ふわふわと町に入る。


 町の様子は、なんというか、神社の門前町みたいだった。

 まっすぐに続いた緩やかな上り坂の道の左右に、木造の建物が並んでいる。

 その奥には白い神殿が見える。


 ……あれ、ここ、ダンジョン町だよね?

 ……間違えたかな?


 と、最初は疑ってしまった。


 実際、リゾートで来ている人もいるようだ。

 商人でも冒険者でもなさそうなご老人やカップルの姿も通りにはあった。


 道は、神殿に突き当たって、神殿の前で左右に分かれていた。

 ダンジョンは左に進んだ先のようだ。

 看板が出ていた。


 お。


 3人の冒険者たちが左の道の奥から走ってきた。

 10代の半ばから後半くらいに見える若い子たちだった。

 みんな獣人族だ。

 熊っぽい大柄な男の子が、血まみれになった猫耳の女の子を背負っている。

 神殿に入っていった。


 姿を消したまま後をついていくと、神殿には白装束の神官がいて、すぐに怪我人の治療を始めてくれた。

 幸いにも治療は間に合って、怪我人は回復した。


 仲間たちが涙して感謝する。

 彼らは、今回が初めてのダンジョン探索だったようだ。

 いきなり死者が出なくてよかったね。


 神官は、すべては聖女様のお導きですと微笑む。

 冒険者たちが膝をついて聖女様に祈りを捧げる。

 神官は満足した優しい笑みを浮かべた。

 冒険者がなけなしの銅貨を渡そうとしても、神官は受け取らなかった。

 聖女様への感謝の心さえあれば、それで十分だと言う。


 えっと。


 そこは精霊様じゃないのかな……?


 精霊神教なんだよね……?


 なーんて、かしこい精霊さんな私は思ったりもしたけど、あえて姿を出して突っ込んだりはしなかった。


 何度も頭を下げつつ、若い冒険者たちは神殿を後にした。


「やっぱり聖国に来て正解だったな!」

「ジルドリアなら、獣人の俺らなんて簡単に見捨てられるよな……」

「本当だよ、向こうならこれでおわってたよね、私!」

「聖女様には本当に感謝だな! 俺、もっと祈るよ!」

「私も!」


 と喜んでいる。


 ジルドリア、なんか悪評が……。

 エリカ、どうした……。


 神殿を出て、彼らは元来た左の道に戻った。

 道の先には広場があって、広場には宿が立ち並んでいた。

 その宿は冒険者専用の宿のようだった。

 なんと、ダンジョンに潜って一定量の魔石さえ取ってくれば、広場の宿は無料で使用できるみたいだ。

 神官の派遣も含めて聖女ユイが6歳の時に決めたことらしい。

 無理なノルマではないみたいで、5年前にその制度が始まって以降、ずっと滞在している冒険者もいるようだ。


 彼らも、ここでの長期滞在を目指しているようだ。

 姿を消して、なんとなく後をつけつつ、私はそんな話を聞いた。


 次こそ頑張ろう!

 と、彼らは気合を入れていた。


 がんばれー。



 さあ、私もダンジョンだ。


 今回もいつも通り、こっそりと入らせていただきますかー!


 彼らと別れて、私は広場から奥に進んだ。

 ダンジョンの出入り口は、しばらく進んだ突き当りだった。

 そこは、かつてトンネルの出入り口だった場所だ。

 トンネルは大昔に崩落した。

 たくさんの死者を出した突然の災害だったという。

 そして……。

 被害者たちの思念によってか否か……。

 正確なところは誰にもわからなようだけど……。

 トンネルは構造を変えて、いつしかダンジョンとして再生していた。


 それが、ダンジョン『バドローナ地下洞』だ。


 私は姿を消したまま、検問所をすり抜けて、中に入った。

 視野が暗転して、開ける。

 バロドーナ地下洞は、人工的に整えられたように見える、切り揃えられた岩肌の洞窟世界だった。

 浅い場所ではあちこちに冒険者が待機していて、敵のポップを待ち構えて、湧いたところを即座に狩っていた。

 その様子は、帝国近郊のFランクダンジョン『マーレ古墳』と同じだった。


 弱い敵と戦うばかりでは、成長にはつながらないと思うけど……。

 安全にお金は稼げる。

 それはそれでアリなのだろう。

 死んでもホームポイントに帰ってやり直せるわけじゃないし。


 洞窟はそれなりに迷路になっていた。

 マップで位置を確認しつつ、私は奥へと向かった。


 帝国のマーレ古墳みたいに複数人必要なギミックがあると困るなーと少し心配していたのだけれど、幸いにもなかった。


 ボス部屋には、問題なくたどり着くことができた。

 待ち構えていた2つ首の黒い獣と戦う。


 オーバーキルしないように反射ダメージだけで少しずつ削った。


 そして、撃破。


 大きめの魔石といくつかのアイテムをゲット。


 とりあえずアイテム欄に入れて、帝都に戻ったらリリアさんに売ろう。

 聖国の魔石って、たぶん珍しいよね。

 喜んでくれるはずだ。


 ボスを倒すと、奥の扉が開いた。

 このあたりのギミックは、ダンジョン共通のようだ。

 中に入ると転移陣がある。

 早速、登録する。

 完了。


 バドローナ地下洞:最奥


 ゲット。

 やったね。


「んー。あとは、どうしようかなー」


 これで目的は達成した。

 もう聖都に戻ってもいいんだけど……。

 マーレ古墳のように、悪党を隔離するのに便利そうな隠し転移部屋があるならここでも登録しておきたい。

 マップを見れば、まだまだ空白地帯はあるし。

 私は、もうひと頑張りすることにした。

 目的の場所は、滝をすべり落ちて急流の水路を抜けた先にあった。

 いや、うん。

 私は宙に浮けるし、事実上の霊体化もできるし、マップで確認しつつ移動できるから行くことはできたけど。

 普通の冒険者では、まず無理だね……。

 そもそも滝をすべり落ちて先に行ってみよう、なんて思わないだろう。

 水路の先には、たぶん手つかずの地下遺跡があった。

 遺跡は、ピラミッドみたいな形をしていた。

 そんな大きくはない。

 せいぜい宿屋程度だ。

 まわりには、それなりに強そうなゴーストが何体も徘徊していた。

 ただ見破りの力はないみたいで、『透化』状態の私に気づいて襲いかかってくることはなかった。


 隠し転移部屋は、遺跡の壁をすり抜けた中にあった。

 マーレ古墳と同じように壁に小さな模様があったので私は短い時間の調査で見つけることができた。

 そしてこれもマーレ古墳と同じで、隠し部屋には転移陣と共に真っ黒なモニュメントがあった。

 すべての光を吸い込む黒い板を左右から二本の柱が支えている。


「何だろうね、これ……」


 触っても何も起きない。

 ともかく、転移陣の登録はできた。

 転移先リストに「バドローナ地下洞:隠し部屋」が乗った。

 さて、これでいいかな。

 私は銀魔法『離脱』で、ダンジョンの外に出た。




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― 新着の感想 ―
[良い点] よかった! \(^o^)/ よかった! ユイちゃんは、前世やりたかった事もしっかりやってるみたいですね~ エロは……まだ年齢がね~www ありゃりゃ(^_^? エリカちゃんは……もしかし…
2021/09/14 18:41 退会済み
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