表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

154/1361

154 セラの社交界デビュー



 ついにこの日が来た。

 今日はセラが、貴族社会にデビューする記念すべき日だ。

 いろいろあって私も一緒に参加する。

 しかも、遠い国の王女として。

 詳細は不明。

 やんごとなき事情で押し通すことになっている。

 いいのだろうか本当に。

 と、思わなくはないのだけれど、陛下もまわりの人もそれでオーケーと言っているのでいいのだろう。


 今日はお昼から大宮殿に行って準備をすることになっている。

 パーティーは夕方からだけど、お化粧をしたりドレスを着たり、いろいろとやることは多いようだ。

 ランチもごちそうしてくれるらしいので楽しみだ。


 お店には、本日休業の札をかけておく。

 不定期なお店でごめんよ。


 私は朝から出かけて、商業ギルドに行った。

 ぬいぐるみやオルゴールの素材を即決払いで大量に購入して、魔法のバッグことアイテム欄に入れた。

 前は能力を隠してわざわざお店に運んでもらったけど……。

 もう、うん。

 面倒なのでやめた。

 いいよね、私、設定的には、どこかの国の王女様だし。

 ともかく、これでまた当分は作り放題だ。


 その後で『帰還』。


 メイドさんが待っていてくれたので、案内されるまま大宮殿に。

 食堂でセラと合流した。

 しばらくおしゃべりしつつ待っていると陛下と皇妃様が来た。

 ナルタスくんも一緒だ。


 アリーシャお姉さまとカイストお兄さまは、ご友人とのランチとのことだった。

 ちなみに学校は夏季休暇に入っているそうだ。


 いつの間にか夏が来ていた。


 こちらの世界の夏は、前世の頃みたいな体温超えの灼熱地獄ではない。

 昼間でも、普通に散歩できるくらいの気温だ。

 しかも夜は十分に涼しくなる。

 なので、夏だけど、あまり気にせず普通に過ごせている。


 それにしても……。


 陛下も、絶対に忙しいだろうに家族で食事を取るなんて立派だね。

 と、思ったけど、なんのことはない。

 私に注意事項という名の説教をしたいだけだった。


 食事後、私はセラに愚痴をこぼした。


「まったく、私は動物じゃないんだよ! 精霊さんだよ、精霊さんっ! 何度も何度も言われなくてもわかるの!」


 行動する前に少しは考えろ、だの。

 直感だけで動くな、だの。

 とにかくゆっくり呼吸しろ、だの。


 意味、全部同じだよね!


「あはは。今日は大勢の前に出るわけですから、お父さまも神経質になられていただけだと思いますよ」

「ならいいけど……」


 食事の後はしばらくセラの部屋で過ごした。

 その後はダンスの練習や礼儀作法の確認。

 あっという間に時間はすぎて、お着替えの時がやってきた。

 私は言われるまま、座ったり立ったりしているだけ。

 全部、メイドさんがやってくれた。


 化粧とドレスのパワーはすごいね。


 完成して鏡で見て、驚いた。


 別室でセラと合流すると、セラも立派な淑女になっていた。

 感動しあってから、移動。


「そういえば、セラのエスコート役は誰なの?」

「お父さまです」

「あー、なるほど。そうだよね」


 私たちは控室に入って、しばらく待機となる。

 パーティー会場に招待客が揃った後で、最後に登場する段取りだった。

 私的には、地味に目立つことなく、いつの間にかパーティー会場にいるただのお客さんでよかったんだけど……。

 私はセラの前に、お兄さまにエスコートされて入るわけで、これはもう目立つことこの上ないだろう。

 まあ、とはいえ今更だ。

 ここはひたすらに楽しむ方向で行こう。

 人生初の立派なパーティーだしね。


 ホールの方からは、次第に賑やかな声が聞こえてくる。

 会場入りが始まったようだ。


 控室にお兄さまが来た。

 まさに王子様な感じの、立派な正装姿だ。


「ふん。馬子にも衣装だな」


 私の姿を見るなり、吐き捨てるように言いましたよ。


「あ、奇遇ですね。私もそれ思いました」


 まあ、私は余裕の人なので、笑顔を見せますけれども。


「セラは純粋によく似合っているぞ」

「あ、奇遇ですね。私もそれ思いました」

「貴様は動物か? 鳴き声のように同じ言葉を繰り返すな」


「お兄さま! 仮にもエスコート相手に、会うなり喧嘩を売ってどうするんですか!」


「あ、奇遇ですね。私もそれ思いました」

「クウちゃん……」


 セラに呆れた顔をされた。

 ごめん。


 さあ、そんなこんなの内、私とお兄さまが呼ばれた。

 いよいよ会場に入るようだ。


 セラは一番最後。

 今日の主役だしね。


「じゃあ、セラ、後でね」

「はい。また後で」

「ではお兄さま、よろしくお願いします」

「わかっている」


 エスコートのされ方もちゃんと勉強済みだ。

 軽く腕を取って、寄り添う。


「なんだか緊張しますね」

「安心しろ。任せておけ。貴様は黙ってついて来ればよい」

「はーい」

「いいか? くれぐれも余計なことはするなよ? くれぐれもだ」

「もー。わかってますってばー」


 もしかして私、信用がないのだろうか。

 個人的には、かなりしっかりしていると思うのだけれど。


「ほら、笑顔を作れ」

「はーい」


 すでに目の前には会場に入る両開きのドアがあった。

 給仕さんがドアを開けてくれる。


 広くて豪華絢爛なホールでは、みんながお兄さまの入場を待っていた。

 さすがは皇太子。


 ただ、注目を浴びるのは私の方だった。

 あちこちから、あれは誰だという囁き声が聞こえる。

 とはいえ事前に情報は流されている。

 私が遠い国の王女で接待でエスコートされているだけだと説明する人もいて、大きな混乱にはならなかった。


 私はお兄さまに連れられて、まっすぐに皇妃様のところに向かった。

 皇妃様とお姉さまはすでに会場にいた。

 形式通りの挨拶をする。

 これも練習済みだ。


 挨拶がおわったところで近くにいた人たちに、皇妃様が私のことを紹介する。


「皆様にも紹介させていただきますわね、こちらはクウ・マイヤ。現在、帝国の賓客となっている、とある国の王女です。詳しい事情は申し上げられませんが、ぜひお見知りおき下さいませ」

「――お初にお目にかかります、クウ・マイヤと申します」


 まわりにいた人たちに向けて、改めて自己紹介をする。


 近くにいたローゼントさんが真っ先に声をかけてきて、親しい間柄であることをアピールしてくる。

 その後はバルターさんだった。

 2人の奥様とも言葉を交わさせてもらった。


 続けて、ウェイスさんとブレンダさんの父親、モルド辺境伯と話した。

 辺境伯は貴族というより、まさに武人だった。

 よく笑って、きっとよく怒る、直情的で豪放な中年男性だった。

 あと、スキンヘッドがよく似合っていた。


 モルド辺境伯は1人で来ていた。

 奥様は来ていない。

 奥様は、留守を預かっているとのことだった。

 辺境伯の領地はジルドリアとの国境地帯。

 油断は禁物らしい。


 辺境伯は、ブレンダさんから私のことを聞いていたようで――。

 本当に強いのかと値踏みするような視線も向けられたけど――。

 私はキチンと、愛想笑いで切り抜けました。

 えらいっ!

 私はトラブルなんて起こさない、温厚なよい子なのです。


 騎士団長グラバムさんからの挨拶も受けた。

 グラバムさんもザ・武人という雰囲気の中年男性だったけど、辺境伯と比べれば随分と知的に見えた。

 グラバムさんは、実は名前だけは知っていた。

 初めてこちらの世界に来た時、シルエラさんが呼んでいたから。

 グラバムさんからは騎士団の見学に誘われた。

 もちろんうなずいた。

 こちらの世界での一流の剣、私も見てみたいし。


 さらには魔術師団長のご老人、アルビオさんまでもが私のところに来た。

 アルビオさんからは魔術師団の見学に誘われた。

 もちろんうなずいた。

 こちらの世界での一流の魔術、私も見てみたいし。


 うなずいてから、また勝手に約束したことに気づいて、私はおそるおそる皇妃様の方に目を向けた。

 皇妃様はにこやかに言った。


「ええ。構いませんよ」


 よかった許された!


「――ですが、みなさん。

 クウちゃんは極めて優秀な子ですけれど、まだ11歳です。

 お手柔らかにお願いしますね。

 何かあれば、わたくしに必ず連絡を下さいませ。

 帝室の庇護下にある少女ということだけは、どうかお忘れなく」


 騒動は起こすなということですね。

 わかります。


 近くにいた他の人たちも友好的に挨拶をしてくれる。

 変な目を向けてくる人はいなかった。

 私にとっても味方――。

 皇帝派閥の人たちなのだろう。


 なにはともあれ。

 目立つことは目立ったけど、問題なく会場に入って馴染むことはできた。

 よかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ナルタスくん! 生存確認( ᐛ )وよし! おにいさま俺様王子様( ̄^ ̄) クウちゃんパリピデビュー! うぇ~い( 厂˙ω˙ )厂乁( ˙ω˙ )厂乁( ˙ω˙ 乁)うぇ~い
2021/08/31 14:52 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ