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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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142 ブリジットさんと夕食



「ねえ、ブリジットさんたちってさ、実はすごいの?」

「……あのなぁ、クウ。どうしておまえは俺の目を見ながら、ロックさんじゃなくてブリジットさんと言う?」

「え? なんで?」

「いや、俺が聞いているんだが」


 夜。


 約束通り、ロックさんたちと夕食。


 ちゃんとブリジットさんも来てくれて私はほくほくだ。


 場所はいつもの『陽気な白猫亭』。


 ヒオリさんも一緒にいる。

 いつも通り、会話より食べることメインだけど。


「だって、Aランクなんだよね? 帝国に10組しかいないって聞いたよ?」

「まあな。どうだ? 尊敬したか?」

「したしたー」

「はははっ! なんだおまえ、実はいい子だな!」


 今夜もお店は賑やかだ。

 大きな声で笑っても気にしなくていい。


「……さて」


 ロックさんといくらか会話したところで。

 私はいよいよ本番に向かう。


「えっと。あの、ブリジットさんもダンジョンには潜るんだよね?」


 そう。

 今夜はブリジットさんとおしゃべりしたかったのだ。


 今のところブリジットさんは、黙って果実水を飲みつつ、黙って蒸した芋を食べているだけだった。

 ちなみにフードはかぶっていない。

 お昼のままのリボンでまとめた髪が顔の左右には流れていた。


「潜るよ」


 普通に返事が来た。


「そ、そうなんだ。た、大変?」

「大変だよ」

「そ、そうなんだー。えっとね、えっと、」


「わははは! おい、クウ。おまえ、なに緊張してるんだ?」

「ロックさんは黙ってて」


 今、大事なとこ。

 私はブリジットさんと仲良くなりたいのだ。


「ブ、ブリジットさんって! お、お笑いは好きですか!?」

「お笑いは私の生き甲斐だよ」

「そそそそそそっ! そうなんですかー! え、じゃあ、じゃあじゃあ、1人でぶつぶつ言うのって、もしかして、」


「あーこいつのアレな。悪い癖だよなー。すぐに自分の世界に入り込んで、面白いことを考え始めるん――」

「ロックさんは黙ってて!」

「あ、おう……」


「いやー、私、ブリジットさんのお笑いを聞いた時から、ブリジットさんは只者ではないと感じていたんです! お別れしてからも、なんか頭に残ってて! そかー! あれは計算された芸だったんですね! 天然だとしたら、あんまり面白い面白いって言うのも失礼かなーって思ってたんですけど! そうかー! あははははは! これで私、思う存分に笑えます! ブリジットさん、私、感服しています!」


「おまえ、意味不明に語るタイプだな……」

「店長のお笑いにかける情熱には、某も感服です」

「2人は黙ってて!」

「は、はい……」

「あ、おう……」


「私のセンスに、ついてこれたの?」

「はいっ! 全力で!」


 ついていきます!


「全力……。クウちゃんが……全力……」


 ブリジットさんがうつむき、なにやら考え始めた。

 私は息を呑む。


「はーい! おまたせー! 焼いたソーセージの山盛りだよー!」


 くうううううう。

 クウちゃんだけにぃぃぃぃぃ。


 メアリーさん、なんてタイミングで!


「え。どうしたのクウちゃん? そんな怖い顔して?」

「いや、なんでもねーから、メアリーちゃんは気にしなくていいぞ。単にこいつがおかしいだけだから」

「あはは。おかしくはないと思うけどねー」


 ブリジットさんがソーセージを食べ始めてしまった。

 せっかく「今日のくくく」があると思ったのに。


 その時だった。


「……ソーセージが美味しい。

 ……もぐもぐ。

 ……もぐもぐ。

 ……もぐら?

 ……むっ! 畑を見に行かねば!

 ……え、ソーセージ1本で金貨1枚!?

 ……はーたっけー。

 ……それは値段や! ぷ。くくく」


 ソーセージ!

 もぐらでソーセージだけに、畑!

 は・た・け!


 あははははははははは!


 いかん!

 笑いが止まらないっ!



「……いや、だから、意味がわかんねーんだが」

「感性の違い」

「そういう次元の問題か……?」

「そうだよ」

「まあ、いいけどよ。べつに。なんかクウのやつが死ぬほど笑ってるし」


「店長はお笑いには目のない方故に。某が見るところ、特にシュールな芸風を好む傾向が強いので、本当に肌に合うのかと」

「ヒオリちゃんも大変だな。こいつに雇われてるとは」

「いいえ、とんでもない。某は頼んで雇ってもらっている身です。毎日が幸せで楽しくて仕方がありません」

「まあ、退屈はしなさそうだな」

「はい。まさに」

「ヒオリちゃんもハイエルフなんだよな?」

「はい。某は夢幻の森より店長に会うために参りました」

「夢幻の森って遠いんだよな、かなり?」

「そうですね……。少なくとも、気軽に来られる距離ではありません」


「そうだ!」


 私はふいに思い出した。


「ロックさん、ブリジットさん、明日にでも私のお店に来てよ!

 装備、作ってあげる!

 あ、ルルさんたちも連れてきていいよ」


「遊びには行ってやるが、製作の方は気持ちだけ受け取っとくよ」

「えー。なんでー」

「武具は俺達の生命線だ。さすがに子供に任せられるか。そもそも俺達が使うのはミスリル配合の品だぞ」

「おおー。そうなんだー?」

「おうよ。全部ってわけじゃないけどな。すげーだろ?」

「うん、すごい」


 ならば対抗してミスリル100%の武具を!

 と行きたいところだけど……。

 確実に騒ぎになるよねえ……。

 さすがに私も学んだ。

 また陛下にジャンピング土下座することになるのは、さすがに避けたい。


 ただ、せっかくロックさんたちとも仲良くなったんだし、私にできることでロックさんたちの冒険を助けたい。


 と、なると……。


「ならさ、魔法の指輪なんてどう?」

「付与アリの品ってことか?」

「うん。そう」

「モノによっちゃ、ぜひともほしいところだが……。持ってるのか?」

「たとえば、こんなのとか」


 ポシェットに手を入れて、アイテム欄から指輪を出す。


「これ、魔法の発動体になってて、魔力の自動回復もついてる」

「はぁ!? なんだそりゃ有り得ねぇだろ!?」


「クウちゃん、鑑定していいかな?」

「うん。どうぞ」


 私は指輪を渡した。

 ブリジットさんが呪文を唱える。


「……名称、フェアリーズリング。

 ……効果、スペルトリガー、オートリフレッシュ。

 本当だね」


「……おいクウ、こんなもん持ち歩くな。歩く宝石箱かおまえは」

「私が作ったんだよ、これ」

「ウソつけ」

「ホントだよー。仲良しグループのシンボルなんだー」

「はぁ?」


「店長の言っていることは本当ですよ。某も店長が主宰するフェアリーズの一員として身につけています」

「マジで?」

「はい。ご覧のとおりです」


 はめた指輪を見せつつ、ヒオリさんが誇らしげにうなずく。


「ねえ、こういうのでよければ作ってあげようか? 赤き翼だからさ、赤い指輪」

「本当に作れるのか?」

「うん」

「ハイエルフの秘術ってやつか?」

「精霊の秘術だよ」

「精霊っておまえなぁ……」

「私、精霊だよ?」

「ああ、そう言えばそうだったな」


 盛大に笑われた。

 くっそ。

 まったく信じてないね、これは。

 まあ、いいけど。


「しかし、本当に作ってくれるのか? それならぜひほしいが」

「うん、いいよー。仲良くしてくれてるし」

「マジかっ!」


 ロックさんは乗り気になってくれたみたいだ。

 そこにブリジットさんが、ソーセージを食べつつ静かに告げた。


「ロック、ダメだよ」

「……あ、おう」


 その言葉でロックさんは意気消沈する。


「……だわな。気持ちはありがたいが、これを買うだけの金はねーわ」

「うーん。プレゼントでいいんだけど」

「なあ、クウ。俺らはダチだが、家族じゃねえ。ケジメはつけようぜ」

「そかー」


 そう言われると、しつこくはできない。


「店には行かせてもらうな。いいもんあったら売ってくれ」

「うん。わかった」


 さすがは超一流の冒険者ってところなのかな。

 逆に信頼できる人たちだね。

 さすがはロックさん。

 じゃないか。

 さすがはブリジットさんだ。


「……て、店長」

「どうしたのヒオリさん。震えた声で」

「……そ、某、なんの思慮もなく無邪気にタダでもらってしまいました。100年かけてもお金は払いますので!」

「いや、ヒオリさん、今更そういうのいいから。めんどくさいからやめてね?」




お読みいただきありがとうございましたっ!

ブクマや評価もしてもらえると作者がとても喜びますっ!

よかったらよろしくお願いします\(^o^)/


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― 新着の感想 ―
[良い点] ひおりん×ブリちゃんの……邂逅? ロックさん、お口チャックの刑 (´・¬・`)不憫なり でも、本日の【ギャグで賞】は、ロックさんにあげましょう\(^o^)/ 受賞【歩く宝石箱かっ!】 …
2021/08/19 15:33 退会済み
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