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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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1361/1364

1361 目覚めすぎ!? 夕方の帝都のケンカ騒ぎ



 こんにちは、クウちゃんさまです。


 夕方。


 赤く焼けた世界の中。


 唐揚げを食べてお腹いっぱいになって、ご機嫌になってくれたマリエとお別れして、その後で私はユイナちゃんのことを思い出した。

 すっかり忘れていた。

 魔力感知で探してみると、なぜかボンバーのアジトにユイの反応があった。

 なので……。

 そのことはナオには言わず……。

 うん……。

 ハッピーちゃっちゃ♪とか目の前でやられたら、今度こそ私のナイーブなおつむが大爆発しかねないしね……。

 あれはもう、本当に勘弁なのです……。

 ナオには中央公園のベンチで待っていてもらって……。

 私は一人で姿を消して……。

 浮遊して……。

 ユイを迎えに行ったら……。

 なぜかユイは、ボンバーとシャルさんと厨房にいて、なぜか三人でラーメンのスープを作っていた。

 姿を消したまま近づいたら、ユイに「あっちに行け」と言わんばかりに、ぶっきらぼうに手を振られた。

 事情はまったくわからないけど、どうやら今の時間を過ごしたいらしい。

 ユイに体調の悪そうな様子はない。

 まるで普通の女の子のように、とても楽しそうにしていた。


 なので、まあ。

 いいか。


 と、私はユイをシャルさんのお店に残し、ふわふわとナオの元に戻った。


「ただいまー、ナオ」

「ユイは?」

「んー。なんか楽しそうに遊んでてねー。まだ帰りたくない様子だったから、とりあえず置いてきたよー」

「元気そうだった?」

「うん」

「なら、いいか」

「だね」


 ユイは、自分の身くらい自分で守れる。

 それこそ悪魔に襲われても撃退できる。

 悪い男にコロッと騙されそうなチョロさは怖いけど……。

 まあ、うん……。

 ボンバーなら大丈夫だろう……。

 そう考えて私は、ボンバーのことをそれなりに信頼している自分に驚いたけど、それは顔には出さない。


「さ、ナオ。私たちはどうする? 工房に帰る?」

「もう少し散歩しよう。せっかくの帝都だし、しっかり味わいたい」

「リョーカイ」


 ナオの気の向くまま歩いていくことにした。

 夕暮れの帝都は賑やかだ。

 中央広場では、姫様ドックと姫様ロールのお店、それにぬいぐるみマートもまだお客さんで賑わっていた。


「帝都は本当に繁栄している。それに平和ですごい」


 その景色を見ながら、ナオがしみじみと言う。


「だねー」


 それには私も同意する。

 本当に帝都は、平和でよい都市だ。


「サギリ姉さんは元気?」

「ごめん、最近は会ってないかなー」

「そかー」


 と、ナオが私の真似をする。

 私はスルーした。


「でも、帝都は平和だし、サギリさんは元気だと思うよ」

「それなら嬉しい」


 サギリさんは、この世界にたった二人だけ残されたナオの肉親の一人。

 親戚のお姉さんだ。

 旧獣王国の崩壊後、仲間と共に帝国に亡命して、今は特務部隊「黒頭巾」の幹部として帝国の治安を影から守っている。

 サギリさんは帝国に忠誠を誓っている。

 新獣王国が建国した今でも新獣王国には関わっていない。

 ナオとも去年の御前試合で再会したきりのようだ。


 私はナオと二人、帝都の平和を満喫した。

 していたら……。

 なんとも物騒な会話が近くにいた若い男の人たちから聞こえた。


「おい、ケンカだってよ! ケンカ祭りとか言ってド派手にやってるらしいから俺らも見に行こうぜ!」

「祭りだと! いいね!」

「行こう行こう! やれるなら俺等もやろうぜ!」


 男の人たちは意気揚々と走っていった。

 私はその背中を見送りつつ、ナオには笑ってごまかした。


「あー、うん。そういうこともあるよね、あはは」

「クウ、見に行こう。帝都のケンカ、興味がある」


 というわけで。


 私たちもケンカを見に行くことにした。


 ケンカは、一般人の迷惑にならない裏路地の一角で行われていた。


「あははははは! 誰でもこーい! この私! 最強獣人のイスカ様に勝てるヤツがいるならば! この私にアイスを奢らせてやるぞおおお! あああ目覚める! 目が覚めて覚めて覚めるううううう! みんなも目覚めよおおお!」


 女の子の、そんな声が聞こえた。

 調子にノリまくった、かなり威勢のよい声だ。


「つえぇ……。やっぱり学院生は違うってことかよ……」

「くっそ! なめられてたまるかよ!」


 集まった男連中が、面白半分や怒り心頭や本気勝負、それぞれの感情で女の子に挑んでは殴り倒されていく。


 女の子は、白い髪に白い耳を生やして、学院生の制服を着ていた。

 うしろには白い尻尾が伸びている。

 薄く魔力の浸透した体は、かすかに輝いて見えていた。


 その姿を男連中のうしろから見て――。


「はぁ」


 珍しくナオがため息をついた。


「ねえ、もしかして、さ。あの子?」


 女の子は自分でも名乗っていたし、きっとそうなのだろう。


「あの子です。やるしか、やるしかぁぁぁぁ。かもしかー、に負けて、つい力を貸してしまいました。やるしか、かもしか。やるしか、かもしか。うむ。思い出しても笑えてくる言葉で困るのです」

「それなら、まあ、しょうがないよね、生姜焼き。どう? 今の?」

「5点」

「そかー」


 無念でござる。です。








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― 新着の感想 ―
これは面倒ごとw
こういうのを見ると力を与えるのも考え物ですね そういう意味ではクウちゃんは周りの人に恵まれてるのかな 致命的なことになる前にお灸を据えないと後味の悪いことになりそうです
…………ユイさん楽しんでますね。 これも激務が原因でしょうけど、こういう日を数日で良いから設けて上げたくなりますね(苦笑) あと馬鹿が暴れてるけど如何するのかな?獣人族の恥知らずが誕生しちゃった様な…
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