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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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136/1359

136 ブリジットさんに告白? 許しませんよ?



「というわけでおじさん、私とブリジットさんが表に出るね! 商品をテーブルに運んだり列の整理とかすればいいんだよね?」

「お嬢さん……。うちはセルフサービスだから、運ぶ仕事はないんだが……」

「クウでいいよ。クウちゃんね」

「いや、あのな……」

「任せてっ! 私、自信あるからっ!」

「頼むから話を……」

「頑張ろうね、ブリジットさん!」


 ブリジットさんと目が合って、だいたい一緒に敬礼。

 うん。

 息はぴったり!


 おーし。

 決まったからには頑張ろう。


 というわけで開店の時間になった。


 さすがは今、帝都で一番にホットなお店だけある。

 すぐにお客さんがやってきて、賑わい始めた。


 はいはーい。

 みんな、ちゃんと並んでね!


 食べてく人は、注文してお金払ったらテーブルに行ってていいよ。

 今日は私たちが運ぶからね!


 こらクソガキ!

 走るな!

 え。

 私もガキだって?

 ふざけたこと言ってると蹴るよ?


 え?

 姫様公認なんて怪しいって?

 あー喧嘩うってんのかこらー!

 このクウちゃんさまがオーケーしてるんだからいいんだよっ!

 私が姫様だっ!


 お。

 ブリジットさんすごい。

 並んでいる人に先取りで注文を始めた。

 やりますね!

 ならばテーブルに運ぶのはお任せあれ!

 記憶できるのかって?

 任せて!

 直感には自信、あるから!


 注文したのとちがうって?

 もー。

 そんなこと気にしない!

 おいしいんだから文句いわないの!

 私の直感が、これはここって言ったんだからこれはここなの!


 あれ。

 屋台から店長なおじさんが出てきたよ。

 そういうわけにはいかないって?

 前払いでお金はもらってる?

 おじさん、固いなー。

 いいんだよ?

 こういうのはテキトーでさ?

 テキトーなのがフレンドリーでウケるんだから。


 え。

 ダメだって?

 そんな、どうかお願いしますって泣いて頭下げなくても……。

 わかったわかったからー。

 ここは私も大人になって、店長なおじさんの顔を立ててあげるからね?


 あー?

 おい、客。

 なに調子に乗って偉そうにしゃべってるんだー!?

 客に下げる頭はないんだよ!

 何様のつもりだ!

 うるせー。

 ケンカ売ってるのかー!


 おう!

 やるならやってやるぞこのやろうがー!


 イチャモンつければ謝る店員ばかりと思ったら大間違いだぞこのやろう!


 え。


 イチャモンじゃないって?

 まっとうな意見?


 ふむ。


 うおう。

 なぜ店員さん2名、私の方を羽交い締めに?


 相手が違うよ!

 相手がっ!


 え。


 可憐で素敵で最高なお嬢さまにしかできない仕事がある?

 どうしてもそっちをお願いしたい?

 もー。

 しょうがないなー。


 というわけで。


 私、マスコットになりました。


 お店のまわりで「いらっしゃいませー♪」と愛想を振りまきます。


 まさに看板娘。


 ふふ。


 みんな、見る目があるね!


 よし、頑張ろう!


 と、そんな感じで、お店は大忙しだった。


 そんな中、知っている顔が屋台の行列に並んだ。

 巨躯なのですぐに気づいた。


 タンクトップに筋肉を包んだ、まさにミスターマッスルな岩の男。


 そう。


 武闘会に出ていた爆弾野郎のボンバーだ。


 なんか、あの時のボンバーコールが頭に鳴り響くよ。


 まあ、と言っても友人でも知人でもない。

 ボンバーが列を乱したりとかのトラブルを起こしたわけでもないので、ただ気づいたというだけの話なんだけど。


 そう。


 それでおわると思ったんだけど。


「――あの、少しだけよろしいですか?」


 おや。


 ボンバーが仕事中の、笑顔で美少女モードのブリジットさんを呼び止めましたよ。

 ブリジットさんがボンバーのところに行く。


 すると突然、ボンバーが体を90度に折り曲げて、叫んだ。


「惚れましたぁぁぁぁ! 一目惚れです! どうかこの私と、結婚を前提にお付き合いをしていただけませんでしょうかぁぁぁぁ!」


 あまりの大声に、賑わしかった広場が静まり返る。


 ブリジットさんは笑顔で美少女な営業モードのまま、こう言った。


「ご注文、順番が来たらおうかがいしますね♪」


 見事なスルー!


「まままま、待ってください! この私、ボンバー! 今まで己の直感だけを頼りに生きてきたのです! そして今まで生きてきて、このような衝動に突き動かされたのはまさに生まれて初めてのこと! これは運命! そう、運命なのです! どうか! どうかこの運命を受け入れてはもらえないでしょうか!」


「ご注文、順番が来たらおうかがいしますね♪」


 さらに見事なスルー!


 ここで我慢しかねたのか、ボンバーが顔を持ち上げる。


 そして、一歩、前に。


「可憐だ……! なんて明るい笑顔……」


「ちょっとまてぇぇぇぇ!」


 私は一瞬の跳躍で、2人の間に割って入る。

 両腕を広げてボンバーを止めた。


 いやいやいや。


 許さないからね!?


 ブリジットさんは私が仲良くなる予定なんだから!


 どこの筋肉とも知れないやつに、渡さないよ!?


 ボンバーが、ゆっくりと私に視線を下ろす。


「お嬢さん、どいてくれるかな? お兄さんはね、お姉さんに真面目な話があるんだ」


「ご注文、順番が来たらおうかがいしますね♪」


 あ、睨み合う私たちを残して、ブリジットさんは行ってしまった。

 さすがだ。


「ああ……なんと可憐な。お嬢さん、早くそこをどきなさい」

「ダメです」

「どうしてだい?」

「美女と野獣は物語の中だけで十分です」

「ふふ。美女と野獣ですか……なかなかにロマンチックな言葉です……。まるで私と彼女を映すかのようだ……」


 あれ前向きに取られた!?


 なんかボンバー、幸せそうな顔になったぞ。


 ぐぬ。


 この岩男、なかなかによい精神構造をしているようだ。


「だが許さん! ここを通りたければ、この私を倒してからにするといい!」


「ふむ……。困りましたね……。ここで君を投げ飛ばしてしまっては、彼女への心証がとても悪いものになります」

「あきらめて、姫様ドッグを買って帰ってね?」

「そうはいきません! この恋は、まさに人生、まさに運命なのです!」


 いかん、このボンバー。


 知性と良識のかたまりのようなこのクウちゃんさまとは正反対の……。

 人の話をまったく聞かないタイプだ!


 いや、正確に言うならば、都合のよい話しか聞かないタイプだ!


「よー! やっぱりクウ、来てたか。心配になったから来てみたけど、おまえ、いきなり喧嘩とかしてねーだろーなー?」


 そこにヒーローが現れた。


「このひとです」


 私はロックさんの腕を取って、引き寄せた。


「は? どうした?」


 ロックさんがキョトンとした顔をする。

 私はボンバーに断言した。


「このひとがブリジットさんの恋人なのです。いや、結婚相手なのです。だから横恋慕せずにあきらめて帰ってね?」


「……おい、なんの話だ?」


 意味がわからないといった顔で、ロックさんが眉をひそめる。


「な。ななななな……」


 衝撃のあまり、ボンバーが全身で震えている。


 ふ。


 勝った。


 おや。


 なぜか店長のおじさんまで話を聞いていたようだ。


「ロック……。

 おまえ、うちの娘に手を出したのか?

 責任は取ってくれるんだろうな!」


「はぁ?」


「そうです! その通りです! だからボンバー、もう帰って、ね?」


「おい待て、クウ。おまえ、何を言っている?」


 なんかロックさんが真顔で聞いてくるけど。

 ごめん。

 今は忙しいのだ。

 それどころではないから後にしてね?



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― 新着の感想 ―
[一言] >>知性と良識のかたまりのような ふぁっ!?
[良い点] ブリちゃん、華麗なるスキル! ( ^ω^ 三 ^ω^ )ヒュンヒュン 爆弾魔め!  なかなかしぶとかったな! ╭( ・ㅂ・)و ̑̑フンッ ロックさん、さすヒロ! NICE タイミン d…
2021/08/14 13:51 退会済み
管理
[一言] クウは恋のキューピット
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