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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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132 怒られるほうがマシな気がした



「クウちゃん――。起きてください、クウちゃん」

「……むにゅう?」


 肩を揺らされて目を覚ますと、木漏れ日の中、目の前にセラがいた。


「おはよー」

「おはようございます。じゃなくて、クウちゃん、まわりを見てください」

「むにゅ?」


 寝ぼけたまま身を起こして、まわりを見る。


 おお。


 たくさんの小動物や鳥が、何故か私たちを取り巻いている。


「おはよー」


 挨拶してみると、楽しそうな鳴き声で応えてくれた。


「あ、通じた」

「うわぁ。すごいですね。さすがはクウちゃんです。わ、わたくしも……たぶん、駄目だと思いますけど……」


 セラがおそるおそる、「おはようございます」と言う。

 するとみんな鳴き声を上げた。


「わたくしにも応えてくれましたっ!」

「やったね!」

「ありがとうございますっ! 嬉しいですっ!」


 私は精霊だからだろうけど、セラは光の魔力を持っているからなのかな?

 セラが手を広げて、「みんなおいで」というと、待ってましたとばかりに小動物と鳥たちが寄ってきた。

 それからしばらくたわむれた。

 楽しい触れ合いだった。

 それこそ、時間を忘れるくらいに。


 ふと我に返るように気づいた時には、すでに太陽がそれなりに傾いていた。


「セラ、そろそろ帰ろうか。夜までには帰らないと怒られるし」

「そうですね……。残念ですけど……」


 私だけなら『帰還』で即帰れるけど、今日はセラもいるし、飛んで帰らないといけない。


「じゃあ、みんな、またねー!」

「みなさん、楽しかったです。ありがとうございました」


 手を振りつつ空に浮き上がる。


 鳥くんたちはしばらくついてきたけど、やがてお別れした。


 帝都に着いた頃には、すっかり空は赤かった。


 疲れた。

 かなり私は魔法を頑張った。


 でもおかげで、夜までには帰れそうだ。


 帝都の夕景色を見つつ、ふわふわと空の高い場所を2人で進んだ。

 最後は大宮殿の奥庭園、いつもの願いの泉のほとりに降りる。


 腕組みした陛下が、満面の笑みで私たちを出迎えてくれた。

 皇妃様にバルターさん、ローゼントさん。

 それにシルエラさんを始めとしたメイドや執事や護衛の人たちもいる。


「ただいま帰りました、お父さま」

「なんか大勢ですね」


 みんな、仕事はいいのかな?

 演説会がおわったばかりで忙しい時期だと思うけど。


「おまえが帰ってきたと物見から報告を受けたのでな。こうしてわざわざ仕事を中断して待っていたのだ」

「なるほど」


 まあ、うん、いつも私はここが基点だしね。


「空の旅はどうでしたか、セラフィーヌ」


 皇妃様が穏やかにたずねる。


「素晴らしかったですっ! 鳥さんやリスさんとお友だちになりましたっ!」

「それはよかったわね。羨ましいことです」

「あとクウちゃんから、魔力の流れ方も教わりました」


「そうそうっ! 決して、ただ遊んでたわけじゃないですからね!? 私たちは課外授業をしていたのですっ!」

「そうね。セラフィーヌのためにありがとうございました、クウちゃん」

「はい! お任せください!」


 よし!

 皇妃様に感謝されてすかさず乗っかった。

 これで安心だね!


「そうやって必死になっているということは、自分が怒られるようなことをしたと少しは自覚があるのかな?」


 横から陛下がちくりと刺してくる。

 図星なのだけど、ここで認めては怒られるから駄目だ。


「セラが次の段階に向かうためには、どうしても必要だったのです。私はかしこい精霊さんなので常に考えて動いているのです」


 うむ。


 そういうことにしておこう。


 ここでなぜか、ローゼントさんが前に出てきた。


「やはり君は精霊様なのだな……? 精霊様の祝福は、共に精霊様をもこの世界に呼び戻したということなのだな……?」

「はい、まあ……」


 祝福と同時には来たよね。


「おおおお……。おおおおおおっ! なんということだ!」


 どうしたんだろう。

 頭を抱えて、ローゼントさんがのけぞる。

 かなりのオーバーアクションだ。


「お父さま」


 皇妃様がたしなめるように声をかける。

 するとローゼントさんは姿勢を正し、すうっと冷静な顔に戻る。


「失礼した。

 もちろん、にわかに信じられる話ではない。

 空を飛ぶことも、前後の奇跡のような出来事も……。

 しかし、女神の瞳を偽ることはできない。

 そして不思議なことに私自身も、自然と認められたのだ。

 彼女は精霊様なのだと。

 この世界に真の調和をもたらす、至高にして奇跡の存在なのだと」


「あはは。ども」


 まっすぐ褒められると照れるね。


 ローゼントさんが私の前で片膝をつく。


「――精霊様。よくぞ我らが帝国においで下さいました。我ら帝国臣民、すべてを以て歓迎いたします」

「えっと……」


 どうしたらいいんだろう。

 困って皇妃様に視線で助けを求める。

 皇妃様は困った声で言う。


「お父様は、昔から熱心な精霊神教の信徒なのです。クウちゃんのことは、まさに神の化身に見えるのでしょう」

「娘よ。まさに、ではない。真実に、だ」


 ローゼントさんが力説する。


「とりあえず恥ずかしいので立ってもらえると嬉しいんですけど……」

「はっ!」


 困った。

 今度は陛下に助けを求めてみる。

 目を逸らされた!

 頼りにならない最高権力者!


 じゃあ、バルターさんに……。

 視線を向けると、にっこり微笑んでからこう言ってくれた。


「公爵、クウちゃんは堅苦しいのが苦手でしてな。セラフィーヌ様たちと同様に接してあげないと避けられますぞ」

「これは失礼。では、そうさせてもらおう」

「はい。その方がいいです」

「承知しました」


 ローゼントさんが私に一礼する。


「それで、えっと……。私、怒られないってことでいいんですか?」


 頼りにならない陛下に聞いてみる。


「怒るですと! 精霊様を怒るなど――。どこの誰ですか!? 精霊様に対してそのような無礼を働く者など、この私が八つ裂きにしてくれましょうぞ!」


 ローゼントさんがすごい剣幕で吠えた。


 こわっ!


「いえ、あの……」


 ていうか、相手、すぐそばにいるよ?

 陛下だよ?


 ちらりと陛下の方を見ると、一瞬、視線が合うんだけど……。

 また私から目を逸した!


「おじいさま、乱暴な物言いはやめてください。クウちゃんが困っています」

「その通りです。お父様、いい加減にしてください」


 セラと皇妃様にたしなめられて、ローゼントさんは剣をしまってくれた。


「……そうだな。すまん。しかし精霊様、もしも何かあれば、どうぞ遠慮なく私めにご相談ください。ご意思のままに敵は滅ぼしましょう」

「もう。おじいさま、その物言いが駄目なのです。もっと優しくお願いします」

「おお、すまんすまん。わはははっ! またやってしまったな! まさにセラフィーヌの言う通りだ反省しよう!」


 これさ。


 陛下に怒られた方がよっぽどよかったよ。

 うん。

 私は心からそう思った。




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― 新着の感想 ―
おじいちゃんクウちゃんにとって最強の味方じゃないですかーやったー! でも過激派すぎて笑っちゃいました 陛下のストレスが発散できる場がどんどんなくなっていくのがかわいそうですけど面白いです(*´ω`*)…
[一言] おちゃめなおじいちゃんめ!
[良い点] やったゼ!\(^o^)/! モフモフパラダイス!\꒰ ´͈ω`͈꒱/! わあ……めんどい人に見っかっちゃったね(((( ノノ) ギャ~! 頼りにならい最高権力者! ww(゜∀゜)ww …
2021/08/10 12:15 退会済み
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