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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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1316/1360

1316 春。2年生の最初の朝



 季節は流れた。

 冬から、春へ。

 今は4月初め。

 今日は、新学年の始まる日だった。


 そう。


 私たちは、今日から帝都中央学院の2年生となるのだ。

 朝。

 私も部屋で、久しぶりの制服に着替えた。

 そろそろ通学の時間だ。



 たくさんのイベントが密集していた冬休みがおわって、そこから始まった1年生の3学期にもいろいろなことはあったけど――。

 時間は過ぎていった。


 お兄さまは、無事に学院を卒業した。

 赤いマントを翻して立ち去る姿には寂しさも覚えたけど――。

 結局、大宮殿や工房や騎士の訓練場で、なんだかんだと顔を合わせるので、まったくお別れということはなかった。

 定期的にお呼ばれして、夕食も一緒に取るしね。


 マウンテン先輩は、中央騎士団の新人として頑張っている。

 将来は大迫力の騎士となって、帝国の平和を守ってくれることだろう。


 お姉さまは、引き続き生徒会長を務める。

 メイヴィスさんにブレンダさん、それにセラにアンジェにスオナも、去年度から続いて生徒会に在籍する。

 なので新年度も運営は万全だ。

 今年もたくさんのイベントを行う予定だという。

 実に楽しみだ。


 ウェイスさんは学院を卒業してモルドに戻るのかと思っていたけど、当面の間は帝都に滞在してお兄さまと行動を共にするそうだ。

 それもまた、モルド次期当主としての修行らしい。

 実際のところは、まだまだ帝都で遊びたいだけの様子だったけど。

 あとは、うん。

 私のダンジョン修行にも、まだまだ参加したいそうだ。

 お兄さまからもお願いされているし、たまには連れて行ってあげる予定だ。


 悪魔については、大きな動きはない。

 メティを呼び出しては、実験につきあってもらっている程度だ。

 メティはすっかりあきらめてくれた様子で、大人しく言うことを聞いてくれる。

 実にいい子になった。

 悪魔絡みの事件は、最近では聞かなくなっている。

 どういうことかと思ったら……。

 なんと悪魔連中は、私とユイのいるここ中央大陸に見切りをつけて別の大陸で活動を始めているとのことだった。

 それは大変なことなんだけど……。

 現状、正義の味方になって、悪魔討伐には出ていない。

 だって、さ。

 その場所は、オークの大帝国だというのだ。

 中央大陸とは完全に価値観の異なる、人間なんて害獣扱いの場所らしい。こちらで言うならオークやゴブリンだ。

 とてもじゃないけど、私でもまともに冒険はできそうにない。


 オークの大帝国については……。

 国交どころか、一度の交易すらもない、完全に隔絶した遠い別大陸の国だし――。

 私も、まったく乗り気にはなれなかったので――。

 陛下たちとも相談して、当面は静観ということに決まったのだった。



 ロックさんとブリジットさんは、無事にディシニア高原のダンジョン再調査をおえて、今では普通に姫様ドッグ店で働いている。

 ただ、冒険者を引退するつもりはないようで、春になったらザニデアの大迷宮にしばらく潜りに行くと言っていたので――。

 そろそろ準備をして、出発することだろう。


 ボンバーとタタくんは順調だ。

 あまりにも順調すぎて、仕事の依頼が詰まりすぎて途切れず、遊ぶ時間をまったく取れないのが悩みのようだけど。

 とはいえ、それでも一気にAランクを目指して――。

 今は、ひたすらに頑張ると言っていた。

 すごいね。

 ボンバーもチャラポラに見えて、あれでも実際には強いしね。

 仲間たちからの信用もあるようだし。

 Aランクどころか、将来はロックさんたちに続くSランクにも、あるいはなってしまうのかも知れない気がする。


 順調と言えば、私のお店「ふわふわ美少女のなんでも工房」もだ。

 フラウとエミリーちゃんとファーが、3人でしっかりと回してくれている。


 特にファーとフラウは、この3ヶ月で私の生成魔法を使えるようになった。

 なんでも自由にとは、さすがに行かないけど……。

 2人は、すでに「精霊ちゃんぬいぐるみ」「精霊ちゃんランプ」「精霊ちゃんオルゴール」を生成できるのだ。

 その3つは工房の定番売れ筋商品だ。

 なので私の工房での仕事は、ますます減っていた。


 1人だけ取り残されたエミリーちゃんは本当に悔しがっていたけど……。

 ファーとフラウは存在的にチートだしね……。

 なにしろ私の子と竜王だし。

 必死になりすぎず、自分のペースで頑張っていってほしいと思う。



 ユイとエリカも元気にやっている。

 リゼス聖国とジルドリア王国は、ますます発展していた。


 特にエリカは、反体制派の貴族をついに一掃した。

 親戚の公爵家も潰したそうだ。

 それについては、エリカの言葉に耳を貸すこともなく、昔ながらの傍若無人を繰り返し続けた向こうの責任だから、止む得ない話だけど。

 エリカはすでに、成人後に女王となることを決めている。

 兄たちも賛成している。

 兄たちはそれに合わせて、新設する公爵家の当主となるそうだ。

 エリカの家族は、全員揃ってエリカ信者だしね。

 問題はないのだろう。



 ナオも元気にやっている。

 ただ残念ながら、新年度から学院に留学するという話はなしになった。

 新生したばかりの新獣王国では日々、多くの事件が発生する。

 その解決を即断即決で行えるのは、現状ではナオしかいない。

 国王のクナは、まだ幼子だしね。

 昼の時間くらいなら空けても大丈夫――とナオは言っていたけど、なかなかそういうわけにはいかなかったようだ。


 また機会があれば、いずれ。

 ということになった。


 学院祭には、ぜひ遊びに行きたいと言っていたから――。

 招待状は送らせてもらう予定だ。

 去年のユイの時みたいな大騒ぎだけは勘弁だけど。


 ゼノも元気にしている。

 配下のアンデッドたちと共にウェーバーさんのお屋敷で魔法少女アリスちゃんの育成に励んでいる。

 アリスちゃんは今のところ、慢心することなく、素直に元気に育っている。

 能力もどんどん上がっている。

 このまままっすぐに伸びれば、すごい存在になりそうだ。

 逆に闇落ちしてもすごいことになりそうだけど。

 と、私がそんな懸念を口したら、ゼノには「何言ってんの? そもそも闇だよ?」と呆れられましたが。


 あと、ゼノと言えば、私が差し上げた「ガワ」――メイドロボ「ファーツー」の育成にも精を出している。

 最初の頃は、ファーツーの姿で帝都を散策しては騒動に巻き込まれて……。

 性能試しも兼ねて力づくで解決しちゃうものだから……。

 その飛び火がうちの工房というかファーに降り掛かって大変だった。

 さすがに厳重注意させていただきました。

 今はもう落ち着いたので、そういうこともなくなったけど。

 ゼノさんは、なんだかんだ言って、しっかりしている。

 どこかの幼児コンビみたいに、何度注意しても何日閉じ込めても、解放された明日には綺麗に忘れている……。

 ということはないので、私としても安心はしています。



「さあ、行きますか」


 私は部屋を出て、1階のお店に下りた。

 お店にはフラウとファーがいた。


「じゃあ、行ってくるね、フラウ、ファー」

「お店は任せるのである」

「いってらっしゃいませ、マスター」


 フラウとファーに見送られて、私は元気よくお店を出た。

 ヒオリさんは、もう先に出ている。

 新学年は、学院長も大忙しなのだ。


 エメラルドストリートには朝日が満ちていた。

 眩しくて気持ちいい。

 空は青くて、今日もいい天気だった。


「もー! クウさまおそーい! いつまで待たせるのよー!」


 外に出ると、空に浮かんでいたキオが、プンプンと頬を膨らませて下りてきた。


 どこかの幼児コンビの片割れこと風の大精霊のキオは、うん……。

 ちゃっかり私の家にいることが多い……。

 イルのように、素敵な契約者は未だに見つかっていないのだ。


 イルはお姉さまに丸投げして、今では大宮殿の子だ。

 手がかからなくて実によい。

 と思ったら……。


「ぷぷーなのー! イルの言った通りなのー! ルーズで怠惰なクウさまがすぐに外に出てくるはずなんてないのー! 賭けはイルの勝ちなのー! さあ、キオはイルのために、山盛りのカラアゲを手に入れてくるなのー!」


 と、キオを好きなだけ煽って、イルまで下りてきた。


「はあーもー! クウさまのせいよー!」


 キオは怒るけど、私はちゃんと時間通りに出た。

 余裕で朝礼には間に合う。

 要するに2人が、せっかちすぎただけだ。


 ちなみにこの2人は、好き勝手に帝都の空を飛んだり、喧嘩をしたり――。

 割と自由に暮らしているけど――。

 帝都の人間には、すっかり受け入れられている。

 慣れとは恐ろしいものです。

 私もなんだかんだ、慣れてしまっている。

 中には精霊たる2人を利用しようとする悪い人間もいるので、そこだけは本当に気をつけてほしいところだけど。

 ただ2人は、意外にも他者からの悪意には敏感なので、今のところ、私の心配は杞憂におわっている。

 そのあたりは、幼児コンビでも実は私より年上と言ったところか。


「ほーら! カラアゲ! カラアゲ! なのなのなの!」

「うるさーい! しるかー!」


 うわっ!


 キオが風の矢をイルに放った。

 即座にイルは反撃する。


「おい」

「「ひっ」」


 ひと睨みしたら、やめてくれたけど。


「ち、ちがうなの! 今のはキオが悪いだけなのー!」

「わたしのせいにしないでよー! イルが悪いだけなのよー!」

「私は学校に行くから、2人は大人しくね。また騒ぎを起こしたら、今度はビリビリ刑だけじゃ済ませないからね?」

「おおおお、大人しくするなのー! イルは大宮殿に帰るなのー!」

「わわわ、わたしは」

「キオは空の上で風に流れていなさい」

「は、はいいい!」


 2人は私の目の前から消えていった。


「ふう。まったく、もう」


 そんなこんなで――。


 いつも通りに騒がしく、私の新学年は始まるのでした。







というわけで! 一気に月日は流れて、季節は春!

2年生編のスタートです!

よろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
なんだかんだこの作品初の時間飛ばし。とてもゆっくり時間が進みましたからね。充実していて好きですが、これからの物語を考えると妥当かと。 ナオやユイはともかく、エリカは女王になったら世継ぎが必要になります…
「完」とか出そうな展開でドキドキしましたw
最終回かと思いましたよ。でも季節を飛ばすのは良いかもですね、エピソードごとに季節飛ばして現実世界の一年でクウちゃん世界の一年分物語が進むとか、エピソード厳選してエミリーちゃん学院入学まで最速でいってそ…
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