1301 一緒に食べよっ!
まずはファーをアイテム欄から出して、ファーに現状を教えてあげる。
「というわけで、アタッチメントを付ければ食事はできるようになるよ! すぐに付けてあげるからいろいろ食べてみようっ!」
「はい。ありがとうございます、マスター」
ふむ。
お礼を言う割には、メイド姿なファーの表情は浮かない。
「どうしたの?」
「質問をよろしいでしょうか、マスター」
「うん。いいよー」
「アタッチメントというのは、いくつ付けられるものなのでしょうか?」
「3つだね」
「そうですか……」
「どうしたの?」
「マスター、食事をしたいとは私の言ったことですが、やはりキャンセルとさせていただいてもよろしいでしょうか」
「なんで? どうしたの?」
「付けるのであれば、工房の役に立つものを付けたいと思います。マスターの不在時にも商品補充ができるように生成の技能を希望します」
「あー。なるほどー。ファー、安心してもいいよー。アタッチメントは、私なら自由に付け替えることができるから。なのでまずは食事を楽しんで、普段のアタッチメントについては、それから一緒に考えようか」
「はい。ありがとうございます」
「では! ファー、はじめてのグルメ祭り、開催しよー!」
私が元気よくそう言うと――。
「おー」
ファーが無表情のまま、無機質な声で腕を上げた。
私はそれを思わず見つめた。
何故なら、うん、クールなファーには似合わない言動だったからね……。
するとファーは恥ずかしげに腕を下ろした。
「皆様のことを真似してみたのですが……。私には変……。だったでしょうか……」
「あ! ううん! よかったよ! おー!」
私はあわてて元気に真似をした。
ともかくファーの背中に手で触れて、フェロー用のシステムメニューを開いて、メニュー経由でアタッチメントをつけてあげた。
とりあえずは食事だけ。
アタッチメントは、最初から基本的なものはそろっている親切システムだ。
「どう? 何か変わった?」
「はい。体の中に線が走ったような、不思議な感覚を覚えました」
「食事は取れそう?」
「どうなのでしょうか……。いえ……。新規のシステムを確認しました。可能なようです」
「それはよかった」
成功だねっ!
「そうだ! せっかくだし、ちゃんとお店で食べてみようか! 姫様ロール店のカフェでオシャレに決めよう!」
「しかし、今は営業中ですので……」
「いいからいいから!」
私はファーの背中を押してお店から出た。
中央広場の姫様ロール店は、私のお店からならそれほど遠い場所ではない。
丸一日潰れるわけではないしね。
というわけで行ってみたのだけど……。
まだ午前中だというのにカフェには行列ができていた……。
さすがは人気店……。
それならば、ロックさんか店長さんを呼んでVIP待遇で特別席に……とも思ったけどさすがにやめておいた。
あきらめて大人しく、お持ち帰り用のカウンターで買わせていただいた。
姫様ロールと姫様ドッグ。
姫様ロールはシンプルなバニラ味。
姫様ドッグは、辛さはマイルドで。
どちらも2つずつ。
広場にある木陰のベンチに座って、2人で食べることにした。
「本当にいただいて大丈夫なのでしょうか……。緊張します」
「あはは。平気だよ。何かあっても修理してあげるから。それより食べ方はわかる?」
「はい。いつも皆様のを見ているので……。いきます」
ファーがおそるおそるの様子で、ゆっくりと姫様ロールを口に運んだ。
ぱくり。
もぐもぐ。
ごくり。
ちゃんと味わって、飲み込むこともできたようだ。
私は様子を見守る。
飲み込んで、しばらくした後、ファーがこちらに目を向けた。
「マスター、美味です」
初めての食事を取ったファーの表情は、それほど変化していなかったけど……。
輝きを増した綺麗な目を見ればわかる。
大いに感動したようだ。
「それはよかった。姫様ロール、美味しいよねー」
私もいただくことにした。
ぱくぱく。
もぐもぐ。
うん。
今日も甘くてふわふわでサイコーです。
ファーはすぐに姫様ロールを平らげて、私が姫様ロールを半分も食べない内に、姫様ドッグまでをも食べてしまった。
「美味しかった?」
「はい」
うなずくファーの目線は、たぶん無意識だろうけど、私の分の姫様ドッグにあった。
どうやら食べたりないようだ。
「どうぞ」
私は自分の分をファーに差し上げた。
「それはマスターの分です。私の分ではありません」
「私は少食だしね。一緒に買ったけどロールだけで十分だよ。余っちゃうのはもったいないし食べてくれると嬉しいな」
「それならば、処理させていただきます」
2つ目も、ファーはペロリと平らげた。
「美味しい?」
「はい。大変に美味です。私は今、大きく思考が高ぶるのを感じています」
気に入ってもらえてよかった。
姫様ロールと姫様ドッグは、私にも大切な味だしねっ!
「アイテム欄のでよければまだあるけど、出そうか?」
「いいのでしょうか……」
「うん。もちろん!」
「では、せっかくの機会ですので……」
この後ファーには満足いくまで食べてもらいました。
計30個でした。
それでエネルギーは満タンとのことで、ちゃんと上限があってよかったです。




