1295 自由の空!
「おわったー!」
物質界の空の上に戻って、私は思いっきり背伸びをした。
挨拶会がおわっただけではありません。
旅行に、新年会に……。
調印式に、挨拶会……。
ついに冬休みのやらねばリストを、すべて消化したのです!
私の予定帳は、ついに白紙となったのです!
いやー、解放感!
今日から私は、何をやるのも自由!
どこへ行くのも自由なのです!
今回の冬休みは、本当にいろいろと詰め込んでしまって大変だったけど……。
濃密すぎて、それこそ一年にも感じるほどの長さだったけど……。
地道にやっていけば、おわるものなのです。
素晴らしいのです。
私が1人、しみじみとうなずいていると、ふわりと浮かんできたゼノが言った。
「ねえ、クウ。反省会もせずに帰って来ちゃっていいの? せめてリトやイフリエートからは意見を聞いた方がよくなかった?」
「いいのー。もうおわったの」
リトだって、ユイのところに帰りたがっていた。
それにイフリエートさんと真面目な話なんてしたら私が発狂する。
「まあ、いいけど」
ゼノが肩をすくめる。
「ならゼノに聞くよ。今日の挨拶会はどうだった?」
「クウらしくてよかったと思うよ。みんなも、女王というのがどんな存在なのか身に染みて理解できたと思うし」
「ふふー。だよねー」
我ながら、みんなと仲良くなれたと思うのです。
私もようやく、ちゃんと精霊の仲間入りができたのかなーと。
「ただ、丸投げはよくないよね?」
「え。なんで?」
「いやだって、クウも少しは仕事をしないとね?」
「精霊の?」
「うん」
「しないよ?」
「どうして?」
「だって私、こっちの世界で工房が忙しいし」
「丸投げしているのに?」
「……ねえ、ゼノりん」
「なぁに、クウ」
「私ね、思うの。こっちで丸投げして上手くいっているなら、向こうも丸投げすればうまくいくに違いないよね。私が関わったら、ロクでもないことになるよ?」
とりあえず想像してみてもらったところ……。
「あー。うん。そうだね……」
幸いにもゼノりんはわかってくれた。
「というわけで! 今まで通りによろしくねっ!」
「はいはい。じゃあ、それでいいや。精霊界のことは好きにやっていいんだね?」
「うん。いいよー」
すべてお任せします。
「でも、どうしても難しいことがあった時には相談してね」
一応、そう付け加えはしたけど。
さすがに、完全に無責任にするつもりはない。
なにしろ私も精霊だし。
仕事については、何をしたらいいかもわからないからどうしようもないけど……。
迫る脅威には対処できる。
私と『アストラル・ルーラー』ならば。
「そうだね。そうさせてもらうよ」
ゼノは再び肩をすくめた。
「あーそれにしても、予定帳が真っ白に戻るのはいいねー! ねえ、ゼノ、これから暇なら2人で遠くにでも飛んでみる?」
「クウは、丸投げ工房が忙しいんじゃなかったの?」
「それはそれだよー」
私は今、ビューンと飛びたい気分なのだ。
「遊ぶならイルとキオも誘ってあげればよかったのに」
「えー」
「2人はクウに懐いているでしょ」
「あーでも、そうかー。イルのことはどうしようね。挨拶会もおわったし、お姉さまと契約して帝都に住むのかなぁ」
「予定ではそうだよね。クウが決めたことでしょ」
「まあねえー」
今さらダメとは言えないか。
イルが帝都にいるなんて、正直、振り回されそうで怖いけど。
「キオはどうするの?」
ゼノが言った。
「キオは放置でいいよね?」
うん。
めんどいし。
「放置なんてしたら、またピーピー泣かれて、ついでに逆恨みされるよ?」
「と言われても……」
「もうさ、アンジェリカに丸投げしたら? 風属性だし」
「んー。そうだねえ」
私としても、それがいいとは思うけど……。
アンジェからは、現段階でのキオとの契約については、すでにご遠慮されている。
アンジェは寮生で、しかもまだ下級生。
目立ちすぎるのは避けたいとのことで。
ただ、風の属性を持つ人間として、キオには会いたがっていたので……。
まずは会ってもらえばいいか。
それでいろいろと上手いこと進むかも知れないし。
なんにしても、せっかく予定帳が綺麗になったのに、幼稚園組の面倒はつづくわけか。
なかなか人生、真の自由は手に入らないものだ。
私は、なんとなく賢者な気持ちでそう思った。
だからこそ!
「まあ、それは明日にしようよ。今日は遊ぼ!」
「それもそうだね。今日については、ボクもクウも十分に仕事はしたか。ボクもやっと肩の荷が下りたよ。本当に、みんなを集めるのには苦労したんだからね」
「ありがとね。ゼノには感謝してるよー」
「とりあえず、今日はクウに付き合うよ」
「やったー!」
たまには精霊2人もいいよね!
精霊の中では、ゼノが一番に気のおけない相手だし。
付き合いも一番長いしね。
この日は夕方まで――。
難しいことは何も考えず、ゼノと2人で大空を自由に舞って遊んだ。




