表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1294/1360

1294 閑話・精霊は試練を受ける





「皆、クウちゃんさまは今、面白いことをしたのです。面白いことをされたらどうするのか、ちゃんと考えて対応するのです」


 シャイナリトー様のその声で、私はハッと我に返りました。

 いけません!

 私は瞬間、今、何が起きていたのかを理解しました。

 今のは芸!

 すなわち笑う場面だったのです!


「あははは」


 私は急いで笑いました。

 まわりにいたみんなも、慌てて笑います。


 私は精霊。


 なんでもない中級の火の精霊です。


 今日は他の皆と共に、新女王の挨拶会に参加しています。


 新女王は……。


 伝説にある通り、苛烈なお方でした。


 サラマンディア様やバルディノール様を赤子のようにあしらうどころか――。

 嬉々としていたぶって――。

 今度は私たちに、挨拶や笑いを強要してきます。


「「「あははは。あははは。あははは」」」


 私たちは頑張って笑い続けました。

 いつまで笑っていればいいのでしょうか。

 と思ったところで……。

 やめてよし、というように、シャイナリトー様が片手を上げてくれました。

 私たちは笑うのをやめます。

 次は何を命令されるのか……。

 私たちは固唾を飲んで、新女王――ではなく、クウちゃんさまのお言葉を待ちます。


「じゃあ、次はみんなね。順番にお願い」


 クウちゃんさまが愛想良くニッコリと言いました。

 私は戦慄します。

 その笑顔の意味はすでにわかります。

 逆らえば――。

 いいえ、それだけではなく、失敗すれば半殺しにされるのです。


 そもそも何をすればいいのかもわかりません。


 私たちが困惑していると――。


「――それは我にも面白いことを言え、と?」


 私たちを代表して、バルディノール様がクウちゃんさまに質問しました。


「自己紹介だけでもいいよー。面白いことは難しいし、強引にやらせることではないしねー」


 よかったです。

 私はホッとしました。

 自己紹介だけなら、なんとかなりそうです。


「では、某から」


 バルディノール様が少し浮き上がります。

 まあ、はい。

 バルディノール様は巨体なので、浮き上がらなくても最初から抜き出てはいましたが。


「某はバルディノールと申す。正直、眉唾ではあったが、今にも伝わる女王陛下のお力、しかと拝見させていただいた。謹んで頭を下げる」


 バルディノール様が、深く丁寧にお辞儀をします。

 その後、さらに言いました。


「岩が、言わん」


 そして、バルディノール様は列に戻りました。


 私にはわけがわかりませんでした。


 最後の言葉は、いったい、なんだったのでしょうか……。


「岩が、言わん。か。うん、いいね」


 クウちゃんさまが笑顔を見せます。


「い、今のはまさかなの……! バル、ギャグだったなの!?」


 イルサーフェ様が驚きの声を上げます。


「うむ」


 バルディノールさんは肯定しました。


「す、すごいなの……。イルはバルのギャグなんて初めて聞いたのなの! あまりのセンスにイルはこう言わざるを得ないのなの!」


 宙に浮いたイルサーフェ様が自分の手で自分の目を隠して言いました。

 そして言います。


「水が、見ず! なの!」


 なるほど、ダジャレですね、私にもわかります。


「おー。イルもいいねー!」


 クウちゃんさまは満足されたようです。

 笑顔で拍手をしました。


 私たちは、尚もポカンとしていましたが……。

 シャイナリトーさまが真顔のまま、「あははは」と言って――。

 そうです!

 笑わないと!


「「「あはははは。あはははは。あはははは」」」


 私たちは頑張って声を出しました!


 こうして、私たちの自己紹介は始まりました。

 みんな、バルディーノ様とイルサーフェ様に倣って、一言、自分の属性に合わせたダジャレを付け加えます。

 サラマンディア様の時には本当にヒヤヒヤものでしたが――。

 気位の高いサラマンディア様も「炎が、ほのった……」とつぶやくことで拍手をいただくことができました。


 私の番も来ましたが――。


「火が、ひひ、と笑いました……?」


 という我ながら謎のダジャレで、なんとか乗り切ることはできました。

 正直、火の組は不利です。

 水や風や土と比べて、明らかにダジャレの難易度が高いです。


 やがて全員の挨拶がおわります。


「みんな、よかったよ! これからよろしくね!」


 最後にクウちゃんさまが言いました。


 私たちは――。


「「「あはははは。あはははは。あはははは」」」


 頑張って笑い声で応えました。

 幸いにも私たちは、全員がクウちゃんさまからの拍手をいただけました。


 こうして私たちは新しい精霊女王を迎えました。

 同時にその支配を認めました。

 今日から精霊界は、新しい時代へと突入していくのでしょう。

 良くも悪くも。

 とはいえクウちゃんさまは支配に寛容な方のようで、


「ねえ、クウ。みんなに今後の方針とかも伝えたら?」


 と、ゼノリナータ様に言われて――。


「そういうのはありません。そもそも私は支配とかするために来たわけじゃなくて、本当に挨拶に来ただけだからね? だからみんなは、いつも通りでいいです。私が精霊界の営みについて言うことは何もありません」


 精霊女王の挨拶は、まさに伝説の通りだったということで……。

 全員ぶっ飛ばされはしましたが……。

 抵抗したサラマンディア様なんて、それこそ消える寸前までボロボロにされましたが……。


 ともかく今まで通りでいいようです。

 それについては本当に良かったです。


「じゃ、かいさーん! まったねー!」


 クウちゃんさまの言葉で、挨拶会は〆られました。

 おわって良かったです。

 私は心からホッとするのでした。

 とはいえ当分は、サラマンディア様のご機嫌取りに苦労しそうですけど……。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
クウちゃんはパワハラを発動した 効果はばつぐんだw
「笑え」と命じられて笑うというのはなかなか厳しいですね。まあ襲い掛かった弱みがあるし、仕方がないことではありますかね。 クウさんが精霊界に関わるのが最初で最後だったりして。もう用事はないだろうし、挨拶…
いつも楽しく読んでます! どこかのブラック企業のような、朝の朝礼みたいでしたね(笑) 自由にしても良いと言っても、パワハラヤ残業、忘年会とかに芸の強要!とかしてくる社長のような! 本人は気づかず…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ