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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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129 誠意を見せる時が来た(緊張)



 ウェーバーさんとアリスちゃんが帰った後。

 私は予定通り、大宮殿の奥庭園、願いの泉に『帰還』の魔法で飛んだ。


 もうこっちの世界に来てそれなりに経つけど、私のホームポイントは相変わらず願いの泉のままだ。

 便利だしね。

 大宮殿にはよく来るし、もうここのままでいいかなと思っている。


 時刻は午前11時。


 顔パスで大宮殿に入って、セラの部屋に行ってみる。


 私、好き勝手に歩いていいのかとは思うけど、メイドさんや執事さんとすれ違っても会釈しかされない。

 咎められることも用件を聞かれることもなかった。


 トントン。


 ドアをノックするけど、返事はない。

 どうやらいないようだ。

 セラも勉強が大変みたいだしね。

 やむなし。


 たぶん、誰かに聞けば、セラがどこにいるかは教えてくれるだろう。


 でも……。


 その前に。


 そういえば私、大宮殿を探検したことがまだないんだよね。

 いつも誰かに連れられていたし。


 今は1人。


 ちょっとくらい、いいかな?


 探検は子供の特権だよね。


 うん、はい。


 私、最近、すっかり自分を11歳として認識している。

 最初の頃は、私は22歳だー!とか、よく言っていた気もするけど。

 今では思うことすらなくなってきたよね。


 あーでも、さすがにここはセラの家だし、探検はマズかぁ。

 勝手なこと、しない方がいいよねえ。


 とりあえず誰か……。


 知っていそうな人はいないかな……?

 と探していると。


 60歳くらいの貴族っぽい男性が、部下を引き連れて歩いてきた。

 ぽいっていうか貴族だよね。

 しかも、偉そうだ。


 私は立ち止まって、横に退いた。

 おじぎをする。


 すれ違うところで貴族の人が立ち止まって私に目を向けた。


「見かけない顔だな?

 ああ、君が異国から来たという王女か」


「どうも。こんにちは」


 私、異国の王女な設定なのだ。

 正式な発表はまだだけど、一部の貴族にはすでに伝えたと陛下は言っていた。

 彼はその一部のようだ。


 どうしよう。


 今はセラもバルターさんもいないから対応に困る。


「そう緊張しなくてよい。私はエダート・フォン・ローゼント。君の友、セラフィーヌの祖父だ。さらに君の弟子、メイヴィスの祖父でもある。君のことは聞いている。たいした剣の腕前だそうだな」

「私はクウです。クウ・マイヤと言います。よろしくお願いします」

「それで1人で何をしているのかな?」

「はい。セラのところに遊びに来たんですけど、いなくって。あの、セラって今どこにいますか?」

「ちょうどよい。一緒に来なさい」


 そういうとローゼントさんは歩き出した。


 セラのところに行くのかな?


 私はついて行った。


「セラフィーヌから聞いてはいたが、君は本当に空色の髪をしているのだな。エルフではないのだろう?」

「はい。エルフではないです」


 いろいろ聞かれたらどう答えよう。

 私は迷ったけど、そこから先は聞かれなかった。


「セラフィーヌは君に追いつくことが目標だそうだ。とても頑張っている」

「セラはすごいですよね」


 皇女なのに努力できて。


「――君が、見つけたのだろう?」

「なにがですか?」

「セラフィーヌに秘められていた魔力だ」

「はい。そうです」


 認めてもいいよね。

 ローゼントさんは知っているっぽいし、セラのおじいさんだし。


「セラフィーヌは将来、ユイリア・オル・ノルンメストに匹敵する聖女となる。対等な友を作ることも難しい存在となるだろう。君にはぜひ、セラフィーヌのよき友で在り続けてほしいものだ」

「はい。それは、まあ……」


 聖女って大変そうだ。


「……あの、ひとつ聞いてもいいですか?」

「なにかね?」

「この先って陛下の執務室のような」


 セラに会いに行くんじゃ?


「そうだが。なにか問題かね」

「えっと。心の準備が」

「緊張の必要はない。食事も何度か一緒にしているのだろう?」


 いえ、そういう問題では。


 私には、陛下に謝らねばならないという重要ミッションがあるのだ。


 すでに脳内でイメージはできているけど……。

 突然だと緊張する。


「あ、でも、はい。そうですよね」


 むしろ突然のほうがいいか。

 うん。

 やろうと思ってやった方が緊張するよね。


 私はちゃんとした子なのだ。


 気づいて反省したからには、きちんと行動に移すのだ。


 執務室の前にいた。


 護衛の人の許可を受けて中に入る。


 部屋には陛下とバルターさん、それに文官の人たちがいて、テーブルに置かれた書類を確認している。


「陛下、参りましたぞ」

「昼食前にわざわざ申し訳ありません、義父上」


 陛下が顔を上げて、私に気づく。


「……何故、おまえが一緒にいる、クウ」


 よし。


 怖気づかず、勇気を出すのだ、私。


 適当な気持ちで祝福っぽいことをしたせいで、陛下を聖者もどきにしてしまったのは私の痛恨の失敗だ。


 きちんと謝らねばならない。


 そして。


 謝るといえばこれしかない。


 誠意を見せるのだ。


 元日本人として。


 行くぞ……!


 私は表情を整える。

 当然、真顔だ。


 私は姿勢を整える。

 当然、直立だ。


「どうした……?」


 陛下が怪訝そうに眉をひそめる。


 私は呼吸を整える。

 ふう……。

 落ち着きも大切だ。


 慌ててはいけない。


「おい、クウ?」


 よし。


 気持ちは整った。


 床を蹴る。


 宙に浮き上がったところで、膝を折り曲げる。


 そのまま着地。


 足の痛みをこらえて、体を前に倒す。


 腕は折り曲げる。

 頭の左右に手のひらをつける。


 これぞ謝罪の奥義。



 ジャンピング土下座!



「この度は――。

 申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁ!」



 額を床にこすりつけ、誠意、叫ぶ。


 沈黙が降りた。


 私の誠意は、通じたのだろうか。


 まだわからない。


 相手からの反応を待つしかなかった。



 執務室のドアが開いた。


「――お父さま!

 クウちゃんが大宮殿に来ていると聞いたのですが!

 今、どこにいるのかご存知でしょう

 ――か」


「……セラフィーヌか。

 いや、これはだな……」


「お父さま……。

 いったい、クウちゃんに……。

 わたくしの大切なお友だちに……。

 何をさせているのですか……?」


「違うぞ、セラフィーヌ。

 まずは話を聞け。

 むしろ突然のことに困惑しているのはこの俺だ」


「何が困惑ですか! お父さま! 恥をお知りください!」


「私もぜひ、詳しい事情を知りたいものですな。

 未成年の少女、

 しかも娘の友人にこのような行為をさせるとは――。

 いかに陛下と言えど――」


「義父上も誤解だ!

 俺は何もさせていないし何も言っていない!

 単にこいつの頭がおかしいだけだ!」


「おかしいのはお父さまです!」


「だーっ!

 クウ!

 おい、クウ!

 貴様、いったい、なんのつもりだ!」


 呼ばれたみたいので、私はおそるおそる顔を上げた。


「……あの」


「なんだ!」


「許してくれましたか?」


「誰が許すかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 おまえ、本気で何を考えている!?」


 あれ。


「……あの、陛下。怒ってます?」


「怒っているに決まっているだろうがぁぁぁぁ!

 いいから立ち上がれ!」





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― 新着の感想 ―
いくらセラのおじいちゃんで貴族の当主だからって、異国の王女の王族にタメ口聞くのはまずいのでわ? まぁ異国の王女ってあくまでも設定なんだから別に大丈夫だろうけど笑
[良い点] クウちゃん、たぶん、永遠の11歳だよ~\(^o^)/ リカちゃんと一緒だよ~\(^o^)/ 陛下……未成年の少女……鬼畜の所業 (´Д`;)harmful rumors
2021/08/08 18:24 退会済み
管理
[一言] >「怒っているに決まっているだろうがぁぁぁぁ!  いいから立ち上がれ!」 前回は陛下耐えきっていたけど 今回はクウの大勝利?
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