1286 ふわふわの冬の日3
「さーて、今度はどこに行ってみようかなー」
私は再び空の上に戻って、ふわふわしつつ帝都の町並みを見下ろした。
まだ空は明るい。
帰宅するには早い時間だった。
「そうだ」
せっかくだし、久しぶりに薬草を採ってみようかな。
帝都からは出ちゃうけど。
私はふわふわと空の上から外壁を越えた。
大門には今日も大勢の人が並んでいる。
懐かしい。
久しぶりに並んでみようかなぁと思ったけど、面倒なのでやめた。
薬草は、大門を出て、そこから田園地帯を越えた先にある森の浅い場所で採れる。
魔物はまず出ない。
狼などの危険な動物もまず出ない。
まず、なので……。
たまに出て大騒ぎになることはあるそうだけど……。
基本的には、私のような子でも普通に入ることのできる平和な森だ。
森にはあっという間に着いた。
透明化を解除して、乾いた土の上に着地する。
冬の森は寂しい。
閑散としていた。
草木の緑も当然ながら少ない。
薬草は生えているのだろうか……。
私は早速、採集のスキルをセットして探してみた。
去年の5月――。
もう1年半以上の前のことだけど、初めて薬草採集をした時、私のスキルはまだ低かった。
前世のゲーム時代、私は採集や採掘をほとんどしていなかったのだ。
なので手探りだった。
あまり量を集めることはできなかった。
夕食分を稼ぐのが精一杯で、橋の下で寝るしかないかぁ、と、諦めるくらいだった。
幸いにも私はお金がなくても、セラに誘われるまま豪華な食事を楽しみ、さらにはおうちまでタダでもらえてしまった。
それで第二の人生は、楽々と始まったのだけど……。
「セラと友達になっていなかったら、私、どうなっていたんだろうねえ……」
本当に橋の下から私の第二の人生は始まっていたのかも知れない。
ハードモードだ。
スオナと2人で暮らしていたりしたのだろうか……。
スオナも昔は橋の下の子だったしね……。
それはそれで面白そうだけど、大変だったことだろう……。
ちなみに今、私の採集スキルは低くはない。
それなりには上がっている。
あれやこれや、なんだかんだ採集は頑張ってきたしね。
なのでスキルを発動させれば、リストにある品は目視できる。
キラキラと輝いて見えるのだ。
もちろん、薬草はリストに乗っている。
低レベルの素材だ。
ただ、去年と同じ場所に、残念ながらキラキラはなかった。
どうやら季節ではないようだ。
「なるほどぉ……。採れないから、採集の依頼は残っていたのかなぁ」
リリアさんに聞いてみればよかった。
サクナがいたから無理だけど。
「せっかく来たんだし、少し探してみようかなぁ……」
私はふわふわと浮かんで、森の奥へと入ってみることにした。
敵反応はない。
冬の森は静かなものだった。
ただ、森の奥には野犬の群れがいた。
犬たちが私に敵意を向けてくることはなかったけど、戦闘能力のない一般人が気軽に入るのはさすがに難しいようだ。
しばらく進むと湖があった。
「お!」
池のほとりにキラキラを見つけた!
近づいてみると――。
「あった!」
薬草だ。
早速、摘もう――。
と思ったけど、迷った末、やめておいた。
冬の薬草は貴重なものだろう。
必要もないのに摘んで、必要な人が来た時に困らせるといけないし。
「帰って覚えていたらリリアさんに聞いて、すぐに必要そうなら採りに戻ればいいよねー」
まあ、私のことだから帰る頃には忘れていそうだけど。
私の小鳥さんブレインは伊達ではないのです。
重要度の低いことは、まさに手のひらの水のようにこぼれていくのみなのです。
「んー。帰るか!」
来たばかりだけど、アンジェとスオナのところに遊びに行こうかな。
2人は冬休みなのに現在謹慎中であまり好き勝手には出歩けないみたいだし、きっと学院で退屈していることだろう。
私の芸の出番だね、考えてみれば!
私は浮かび上がって、帝都に戻ることにした。
知り合いを見つけたのは、その帰り道のことだった。
まるで象のように大きな体なので、街道を走るその姿にはすぐに気づいた。
「ハッ……! ハッ……! ハッ……!」
テンポよく呼吸しながら巨体を揺らして走っているのは――。
マウンテン先輩だった。
新年あけましておめでとうございます!
今年も頑張っていこうと思いますので、よかったら今年もお付き合い下さい!
新作も160話をこえて書いております!
そちらもよければ><ノ




