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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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1284 ふわふわな冬の日





 1月11日。

 朝。

 パチっと目覚めて、今日も元気に1日が始まる。


「んー!」


 ベッドから起きて思いっきり背伸び。

 窓ごしに見上げる空は明るい。

 気温は低いけど、今日もいい天気になりそうだ。


 おはようございます、クウちゃんさまです。

 ついに調印式もおわって、今の私は、とっても解放感に満ちています。

 まだ学院は冬休み。

 今日は何をやろうかなー、なんて、楽しく考えるのです。


 2階に下りて、ヒオリさんとフラウと朝食。

 ファーが給仕をしてくれます。


「ねえ、今日はお店、お休みにしようか? ふわふわのんびりデイなんてどう?」


 パンを食べつつ私は言った。

 すると申し訳なさそうにフラウが言った。


「クウちゃん、今日はできればお店をやりたいのである。今日は常連の娘が、友人を連れてくると言っていたのである」

「へー。そうなんだー。どんな子なの?」

「貴族の娘であるが、気さくな良い娘なのである。もちろん、クウちゃんが閉めるというならばそれでいいのであるが……」

「あーううんー。約束があるならやろうー」


 お客さんにも申し訳ないし。


「工房のことは我々に任せて、マスターはふわふわをお楽しみください」

「そうですね。某もまだお店に居られますし、店長はまず昨日の疲れをお取りください」


 ファーとヒオリさんにも言われて、お店はいつも通りとなった。

 すなわち、店長さんだけお休み。

 なんか私、最近はすっかりお店から離れています。

 常連さんの顔すら知りません。

 とはいえ……。

 今日の私はのんびりモード。

 お言葉に甘えて、ふわふわさせてもらうことにしました。


 なにしろ、うん。


 精霊はふわふわするのが仕事です。

 たまにはふわふわしないとね。

 アシス様にも申し訳が立たないのです。


 というわけで。


 朝食を済ませた後、私は空の上に浮き上がった。


「んんー!」


 あらためて、思いっきり背伸びをする。

 空の中だと開放感が違うね!

 100倍だ!

 早速、私は気楽にふわふわと流されてみることにした。

 風に身を預けて……。

 心地よい自然のゆりかごで、起きたばかりだけど、すややかな一時を……。

 と思ったけど、上空は思いの外に風が強かった。

 キオのイタズラかとも勘ぐったけど、近くにいる気配ない。

 自然の風のようだ。

 それなら仕方がない。

 私は気を取り直して、帝都の町並みを楽しむことにした。

 帝都は午前から賑やかだ。

 見下ろせば、本当にたくさんの人が動き回っている。

 屋根もキラキラと輝いて美しい。


「なにか面白いことはないかなぁ」


 私は何気なく魔力感知をして――。


「ん? んん?」


 気づいた。


 町の一角に、恐ろしい密度の闇の魔力のかたまりがあるね……。

 誰かの陰謀……?

 と思ったけど、その場所はウェーバーさんのお屋敷だった。

 すなわち魔法少女アリスちゃんのおうちだ。

 今では黒猫のゼノに加えて、ウィルを始めとした吸血鬼たちに幽霊から進化したミレイユまでもが使用人として暮らしている。

 そりゃ、闇の魔力が凝縮されているよね……。

 ふと見てびっくりしたけど、私は気にしないことにした。

 と思ったけど、やっぱり気になるので姿を消して様子を見に行ったところ……。

 なんと。

 メイド姿のウィルたちが普通に仕事をしていた。


 他の面々のことはよく知らないけど……。

 あのウィルが、だ……。

 ブラックタワーの廃墟の中で、ひたすらに怠惰していただけの子が……。

 お付きのメイドとして、家庭教師の授業を受けるアリスちゃんのことを、部屋の隅でキチンと姿勢を正して見ている。

 なんとびっくり、だらけていない……!

 まるで本当にメイドのようだ!


 高位吸血鬼の執事たちは室内で書類仕事をしていた。

 ミレイユは屋敷を掃除していた。


 うーむ。


 てっきり私は、メイドも執事も形だけだと思っていたけど、そうではないようだ。

 気のせいか、全員、有能にすら見える……。


 遊べる雰囲気ではなかったので、私はお屋敷から離れた。


 なんとなく冒険者ギルドにも行ってみる。

 冒険者ギルドでも、すでに新年の仕事は始まっていた。

 ボードにはたくさんの仕事依頼が貼られている。


 お!


 仕事依頼に薬草採集がある!

 去年は全然なくて、あやうく私は冒険者資格を維持するために、下水道の清掃をやるハメになるところだったけど……。

 復活したのか、これは素晴らしい。

 めでたいね!


 まあ、うん。


 だからと言って、やるわけではないけど……。


 見ているだけだけど……。


 あーでも、冒険者資格をなくさないためにも、依頼は受けないとダメかぁ。

 それなら薬草採集は楽でいいよねえ。

 私が受けるかどうしようかボードの前で迷っていると……。

 奥の受付カウンターから、若い女の子の大きな声が響いた。


「私はクウちゃんずの一員なのだぞ! 問題はないはずだ!」


 叫ぶのは、若葉のような髪を背中に輝かせる着流し姿のエルフ少女だった。

 ちなみにヒオリさんではない。


「仲良しグループのことを言われても困りますが……。繰り返しますが冒険者資格が発行されるのは15歳からなので無理です」


 エルフ少女は大いに受付嬢さんを困らせていた。


「では、研修だけでも頼む! 私は修行がしたいのだ!」


 うん、はい。

 サクナです。


 ちなみにクウちゃんずという組織は、ごくたまにノリで組まれることもあるけど、その場限りのものなので現存はしていない。

 なので一員はいない。

 この私、クウちゃんが言うのだから間違いはない。

 ただ……。

 うん……。

 姿を見せて否定することまではしない。

 下手にサクナに絡んだら、貴重な今日という平和な1日が潰れてしまう気がする。


 私は華麗にスルーして、姿を消したまま、冒険者ギルドから外に出た。


 薬草採集は、また今度……。

 次に来た時もボードにあったらその時に受けよう。

 今日は無理だね。







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― 新着の感想 ―
上空は思いの外に強かった。→風が強いってことですよね?
クウちゃん面倒回避w
ヒオリさんに押し付ける?(悪魔の尻尾フリフリ)
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