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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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1271/1359

1271 ソードとナオ





 新獣王国の使節団は、町を歩いて湖岸の会場にまでやってくる。

 私たちはそれを会場で待っていた。

 町の治安維持の任務には、ジルドリア騎士団の精鋭とコレルリースさん率いる『ローズ・レイピア』が就いている。

 敵感知にも反応はない。

 なので問題なく、ナオたちは到着することだろう。


 ただ、うん。


 私は焦れた!


「聖女様。では予定通り、私は新獣王国使節団の先導に行ってまいります」


 ということにした!

 うん。

 行ってみよう!


「え、そんな話あったっけ?」


 ユイがキョトンとする。


「では」


 なかったけど、私は空に浮かび上がった。

 いいのだ。

 なぜなら私はふわふわのクウちゃん。

 まさに浮かび上がることこそ、私という存在を示しているのだ。


 ナオたちの一団は、すぐに見つけることができた。

 ナオを先頭に堂々と通りを歩いていた。

 ナオに同行するのは、わずか3名。

 いくら警備しているとはいえ、よくもそんなにも無防備に入ってきたものだと思う。


 ナオの近くにいるのは……。

 まず、ダイ・ダ・モン。

 正装の背中に戦斧を担ぎ、ナオのうしろを歩いている。

 彼に動揺した様子はない。

 ナオと同じで、実に堂々とした姿だった。


 さらには、白狼族のユキハさんがいた。

 腰には刀がある。

 悪魔フォグにそそのかされて一度は道を外しかけていた彼女も、今では立派なナオ直属の最精鋭部隊『風魔衆』の幹部だ。

 以前は黒に染めていた髪と尻尾は、今では誇り高く、元の白色に戻っている。


 最後の1人は、なぜか彼だった。

 帝都の御前試合で威勢のよかった黒豹族の戦士。

 名前は確か、ダバ・ボヤージュ。

 なぜか、というのは失礼か。

 いかにも跳ねっ返りの若者ではあるけど、ナオが将来を見込んでいる1人なのだった。


「やっほー、ナオ」


 ざっと様子を確かめてから、私はナオの横に姿を現した。

 ナオに驚く様子はない。

 ナオは私の気配を感じ取れるしね。


「私と貴方は親しい間柄だったか?」


 ナオはそっけなかった。


「えー」


 私は唇を尖らせたけど、そういえばソードだった。

 ナオたちの姿を静かに見ていた観衆も、いきなり現れた私に驚いている様子だ。


「おいおい、どこの誰かはわかるが、いきなり失礼な――。あいて!」

「黙っていろ」

「そのお方に構う必要はない。無礼な言葉遣いをするな」


 うしろでダバ・ボヤージュとダイ・ダ・モン、それにユキハさんのそんなやり取りも聞こえた。


「こほん。とりあえず、一緒に行こうか」

「そかー」


 と、これは私ではありません。

 突き刺すような眼差しでまっすぐに前を見続けるナオちゃんです。


「余裕はありそうだね」


 私は安心して笑った。

 それに対してナオは、表情を変えないまま、


「さすクウ」


 と言った。


 私は最初、何のことかわからなかった。

 私は今、ソードだしね。


「町がまるで神殿のよう。結界の見本のような結界。この強度なら、ヒトが自ら抱いた悪意でさえ鎮めることができそう」

「私とリトの渾身の合作だからねー。今日いっぱいは安心してくれていいと思うよー」


 結界の効果は永続ではない。

 特に強くかければ、弱くなるのも早い。


 しかし、このソードことクウちゃんさまに躊躇なく「さすクウ」するとは……。

 ブロックする隙間もなかったよ……。

 さすがはナオ。

 カメの子は伊達ではないということだね……。


 それはともかく……。


 結界があるとしても、周囲の気配に注意することだけは忘れない。

 ナオたちに観衆が向ける眼差しは歓迎のものばかりではなかった。

 むしろ、その逆のものを多く感じる。


 ここファーネスティラはジルドリア南方、トリスティンに近い町。

 ジルドリアの中央より、トリスティンとの交流が盛んだった町だ。

 実際、この町の近くのダンジョンで産出していた魔石は、長年に渡ってその大半がトリスティンに横流しされていた。

 この町では、獣人の立場は、さぞや低かったことだろう。


 とはいえ……。


 ナオたちに罵声や石が飛ぶことはなかった。

 歓声もなかったけど。

 そのあたりについては、先にこの町に着任していたハースティオさんが十分に住民とオハナシ合いをして、すでに理解を得ているようだ。

 そもそも、私も手伝ったからさすがに覚えているけど、反抗勢力は領主も商人も構成員もすべて容赦なく排除したね。


「ソード……。ついに今日、おわる。あの夜、砂浜で覚悟を決めて……。それから、まだ長い年月は過ぎていない。それはわかっているけど、私は長い長い道を歩いてきた気がする」

「そうだねー」

「それこそ一生分」

「変なフラグを立てちゃダメだよー」

「フラグではない。本当に、そう感じているだけ」

「そかー」


 ならいいけど。


 私、戦争がおわったらオダンゴをお腹いっぱいに食べるんだ、なんて言ったら、まさに死亡フラグそのものになるしね。


「私、戦争がおわったらバーガーをお腹いっぱいに食べるんだ」

「立てたー!」

「どうしたの?」

「あ、うんん……。なんでも……」


 さすがはナオさん、まさか即座に来るとは。


「よかったら姫様ドッグとかどう? アイテム欄にたくさん入っているし」

「それはいい提案。食べたい。あれは本当に美味だった」

「おわったら一緒に食べよー」

「――あの帝都での1日は、本当に楽しかった。ハッピーさんは元気? 彼のハッピーは、戦争がおわったら新獣王都で流行らせたい」

「やめとこうね!?」


 ハッピー、ちゃっちゃ♪

 ハッピー、ちゃっちゃ♪


 あー!


 あああああああああああああああああああ!


 否定しつつも、頭の中にリズムが湧き上がるうううううう!

 どうして私はこうなのかー!


 今はダメよ私!


 今は絶対に、ハッピーする時じゃないからね!?

 だいたい私はハッピーさんことボンバーじゃないしね!?


 ハッピー、ちゃっちゃ♪

 ハッピー、ちゃっちゃ♪


 やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!


 響くなメロディぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!


「はーはー。ぜーぜー」

「ソードは、いきなりどうして疲れている?」

「あ、ううん……。なんでも……」








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― 新着の感想 ―
動揺してるwwww けど阿呆のクウさんじゃぁ抗えないでしょうし、これは仕方が無いでしょうなw
相変わらずユカイなパワーバランスやで…
クウ、ソード様が振り回されてる
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