1249 私、異世界で悪の大幹部になりました。
ハンターゴッコ。
それは、魔法少女と正義のアンデッド軍団が、悪の大幹部と戦う物語。
私はこの度、悪の大幹部を拝命したクウちゃんさまです。
話が決まったところで黒猫ゼノに別室に連れて行かれて、ヒトの姿に戻ったゼノに軽そうな白い布を渡されて言われた。
「さあ、クウ。これに着替えてよ」
「なんで?」
「悪の大幹部の衣装さ。まさか普段着で大幹部をするつもり?」
「あー。なるほどー」
それはたしカニ。
v(・v・)v
カニカニしてから、私は衣装を広げてみた。
「水着じゃん!」
それが第一の感想だ。
そう。
白い布はとても生地が少なくて、完全にただの水着だった。
マントもセットにはなっていたけど。
「悪の幹部って、こういう服なんだよね? 違った?」
「あー。うん」
私は、悪の幹部のすべてを知っているわけではないけど……。
悪の女幹部と言えば……。
水着っぽい衣装にマント。
そう言われると、なんとなくそんな気もする。
というか、うん。
その知識は、私がゼノに語ったものだね。
「いやでも、さすがにこれは無理!」
恥ずかしすぎる!
「安心して、ほら。これで正体は不明だよね」
と言って、ゼノからアイマスクを渡された。
「いやわかるよね簡単に!」
「平気だって。もしもバレてもボクがなんとかするからさー」
「ならいいけど……。じゃなくてね!?」
「ほらほらー。アンデッド軍団も着替えているんだからさー。まさか、今さらやめるなんてノリの悪いことは言わないよね?」
「言いませんけど!」
このクウちゃんさまが、そんなことをするわけがないよね!?
ノリで生きているんだからさ!
というわけで。
覚悟を決めて、水着にマントの姿に着替えました。
着替え自体は、『ユーザーインターフェース』の装備欄を使えば、一瞬で済ませることができるので簡単です。
「おー。似合ってるよー」
ゼノがパチパチと拍手して、着替えた私を称えてくれた。
早くも恥ずかしいんだけど……。
「あーでも、こうやってあらためてよく見ると、クウは本当に成長しているんだねー」
「よく見なくていいからね!」
ちなみに私の身体が成長しているのは事実だ。
初めてこの世界に来た時から、背は伸びたし、体つきも変わってきた。
「なんか、ボクの方が小さくなってきたよね……。クウに置いていかれるのも嫌だし、ボクも成長できるように願いながら生活してみようかな」
「それはいいかもだね。どうせなら、一緒に大人になろうよ」
「うん。そうだね。そうする。成長したいって願えば、できるよね」
「きっとね」
精霊や古代竜を始めとした精神そのものが命である存在は、そうした特質を持つ。
心の在り方によって外見は形作られる。
たとえばフラウは常に新鮮な目線でありたいと願って5歳児の姿で暮らしている。
さあ、ともかく。
私はアイマスクもつけた。
これで完了。
あとはやるだけだ。
ちなみに寒さは気にならない。
部屋は温かいし、外に出ても寒気は魔法で防げるしね。
戦いの舞台はウェーバさんちの裏庭だった。
てっきり帝都全体を使って派手にやるのかと思ったけど、そこは自重したようだ。
残念。
じゃなくて、よかった。
裏庭に出ると、すでにアリスちゃんたちがいた。
アリスちゃんは魔法少女姿。
黒を基調としたゴスロリだ。
ウィルとミレイユと2人の吸血鬼紳士は、黒いスーツっぽい姿だった。
あくまで主役はアリスちゃんということだろう。
「ふふふ。待たせたわね」
私はなんとなく、悪の幹部っぽく尊大に振る舞ってみた。
こういうのはノリが大切だよね。
するとウィルが、赤い魔眼を見開いて、心底、驚いたような顔をする。
「クウお嬢様、冬にそんな薄着をして寒くないんですか? それ以前に、そんなに素肌をさらしてはしたない。本当に淑女ですか?」
「ほとんど裸ですよね……。クウ様は露出趣味だったのですね。私と気が合いそうです! どうですか今度一緒に秘密の解放を!」
体に氷をきらめかせるミレイユは、本気のように見えるけど気のせいだろう。
うん。
まあ、ともかく、真実を知る術はない。
なぜならば、もう黒スーツ軍団は全滅したのだから……。
全員、問答無用で打ち倒しました。
「ちょっとクウ! どうして会話がおわる前に倒しちゃうのさー! それって、悪の幹部としては失格だよね完全に!」
ゼノが文句を言ってくるけど、知ったことではないのです。
むしろ、木剣で我慢してあげた私の優しさに感謝してほしいところです。
「さあ、アリスちゃん。やろうか」
私はアリスちゃんに木剣の切っ先を向けた。
「なの!」
アリスちゃんは怖気づくことなく、私に向けてマジカルステッキを構えた。
この後は、楽しい時間を過ごすことができた。
アリスちゃんは本当に将来有望だ。
今年で7歳の子なのに、早くも手足のように闇の魔力を使っていた。
ステッキからのビーム攻撃も強力だった。
アリスちゃんの攻撃を避けていくことは私にも十分な運動になった。
将来が末恐ろしいね。
ゼノは、アリスちゃんをどこに連れて行くつもりなんだろうか。
勝負については、適度に戦って、私は倒れました。
私は悪の幹部だしね。
「ぎゃー。や、やられたぁ……」
「やったーなのー! ついに、悪の大幹部クウちゃんお姉ちゃんを倒したなのー!」
負けるのは運命なのです。




