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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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1243/1359

1243 その新名物は……。





「おおおお! これは! ふっくらほふほふ! なんと柔らかく、ディシニア小麦の甘味が口の中に優しく広がるのか!」


 くくく。


 クウちゃんだけに、くくく、ですよ、これは。

 9かける9かける9なのです、数が多すぎて私には計算できませんが。


 まんじゅう、成功しました。


 蒸した生地は、まさにウェルダンが感動している通り、ふっくらとした見事なまんじゅうへと生まれ変わってくれました。

 社員の人たちも、これこそディシニア小麦のための調理法だと感動してくれている。


「しかし、確かに素晴らしくはあるが、やや淡白ではあるな……」


 ウェルダンがもっともな感想を言う。

 今回作ったのは、ただ生地を丸めただけものだ。

 普通はクリームやアンコを入れるしね。

 私はそのことも教えてあげた。


「それはまさに、無限の可能性ですね! 早速、研究しないと!」


 私の話を聞いた社員たちが興奮した声をあげた。


「うむ! おまえたちはすぐに動け! まんじゅう、我が商会のものとするぞ!」

「「「おー!」」


 ウェルダンの号令で社員たちは即座に動いた。

 有能な人たちのようだ。


「言っとくけど、まんじゅうは私のオリジナルではないからね? 聖国にあるものだし」

「あると言っても有名なものではなかろう? 私は見たことがないぞ」

「まあね。聖国でも、スイーツはケーキ類が中心だしね」

「それは知っている。聖女様のお好みだろう? 聖国の菓子職人は、聖女様のために日々情熱を賭けてケーキ類を作っていると聞く」

「すごいよねー」


 和食大好きなユイだけど、スイーツについてはケーキ類が好物なのだ。

 聖国の食文化は、思いきりユイの影響を受けている。

 なのでまんじゅうは、せっかく紹介されても、流行っていなかった。


「だからこそ、我らに商機はあるということだな」


 ウェルダンが不敵に微笑む。

 と思ったら、眉をしかめた。


「どうしたの?」

「しかし、本当にウィートのヤツも上手くやりおって。これだけの商機を、あんなヤツと共有せねばならないとはな……」

「あはは。まーまー、儲かればいいでしょ」

「無論、おまえについてのロイヤリティはちゃんと払わせてもらうが」

「あー。私はいらないから」

「そんなわけにはいくか」

「あのさ、私が今、いくら持ってると思う? これ以上ためこんだら、帝都の経済に影響が出るくらいの量だよ」

「……本当にいらないのか?」

「いらないー」

「なら、いいが。あとから文句を言ってきても知らんからな?」

「言わないよー。文句を言うほど困るなら、別のところに泣きつくから平気だってー」


 幸いにも私には、泣きつける場所が多い。

 ユイちゃんナオちゃんエリカちゃんを始めとして、

 陛下とかフラウとかね。

 どこに泣きついても、多分、なんとかしてくれるだろう。


 なんとかならなくても……。

 まあ、うん。

 はい。

 ゼノちゃんにちょっとだけオネガイしてね……。

 記憶をいじってしまえばね……。

 と、それはやっちゃダメだね! なしなし!


「好きに儲けてよ。その代わり、エミリーちゃんのことはお願いね」


 私は気持ちを切り替えて明るく笑った。

 ディシニア高原の未来も明るくなりそうでよかった。

 ウェルダンには頑張ってもらって、まんじゅうを名物にしてほしいものだ。

 そうすれば自然と小麦も売れるだろうしね。


 話に一段落ついたところで、オダンさんが帰ってきた。

 エミリーちゃんの件については快く了承してもらえた。

 ウェルダンが言っていた通り、オダンさんは普通の子と同じようにエミリーちゃんを扱ってほしいと私に言ってきた。

 エミリーちゃんの口座を勝手に作っちゃう件は……。

 秘密にしておこうと思ったけど……。

 迷った末、やっぱり言うことにした。

 オダンさんは当然のように反対してきたけど、万が一の時のために、という私の言葉に最後にはうなずいてくれた。


「本当に、エミリーのことを想ってくれてありがとう」


 深々と頭を下げられてしまった。

 いえ、はい。

 私こそ、勝手に決めちゃってごめんなさい。


 空気がしんみりしてしまったけど、同じ場所にはウェルダンがいた。


「オダン氏よ、頭を下げている暇はないぞ! これはさらなる発展の機会なのだ! すぐに幹部会を開いて次の動きを決めよう!」

「そうだな。俺達は飛躍していくのだものな」

「うむ! 我らの商会こそが帝国の食の未来を支配するのだ! では、またなクソガキ! アイデアが浮かんだら、また教えるのだぞ!」

「はーい」


 また支配とか、人に聞かれたら問題にされそうな発言を言って。

 と私は思ったけど、ツッコミは入れなかった。


「じゃあ、クウちゃん、またな。ゆっくり会話できなくて済まない。エミリーのことは、本当に心から感謝している」

「ううんー。気にしないでー」


 ウェルダンは、オダンさんと共に慌ただしく行ってしまった。

 用事も済んだし、私も会社から出た。


 時刻はいつの間にか、お昼を過ぎていた。

 冬の太陽は、すでに少し傾いている。


 でも今日は、まだまだ自由だ。


 次はどうしようかなー!


 お腹も空いたし、いつもの『陽気な白猫亭』……。

 ううん。

 シャルさんのバーガー屋に行ってみよう!









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― 新着の感想 ―
[一言] 白餡やこし餡等も良いですし、チョコやピーナッツなんかも饅頭には合います。 其処を巧く活用していけば確実に売れるでしょうけど、饅頭だけに囚われると人は飽きる生き物ですし、その時用に“次”考える…
[良い点] いつも楽しく読んでます! ま、食の世界の世界征服なら許されるかな(笑) 次代に残る何か残せたら良いよね〜
[一言] 泣きついた頃には大惨事になってそうw
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