表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1235/1360

1235 門閥派の人たちと





 やったぜ。

 私は心の中でガッツポーズを決めた。

 イルとラシーダに続いて、オルデも丸投げすることができた。

 これで私は自由!

 今年の私は、実に最高なのではなかろうか!


「皆様、クウちゃんと物語の主人公さんを連れてきましたわよ」


 ディレーナさんのお仲間の人たちと合流する。

 門閥派と呼ばれる由緒正しき中央貴族のご令嬢の方々だ。

 その中には、私も見知ったご令嬢――オーレリアさんやエカテリーナさんの姿もあった。


 アンジェとスオナはいない。

 2人は会場から出て中庭を散歩しているようだ。

 逃げたのだろう。


 ノーラさんといい、公での交流が苦手な人は、中庭に出るのが上策のようだ。



 エカテリーナさんとは最初に目が合った。

 エカテリーナさんは微笑みを返してくれたけど――。

 明らかに、すでに疲れていた。

 ディレーナさんと同じく精霊の祝福を受けた者として、チヤホヤされる反面、きっと気苦労が多いのだろうね……。

 まあ、はい。

 またもや私のせいですねごめんなさい!


 最初にオーレリアさんと挨拶して、それから他の人たちとも挨拶を交わす。

 オルデも無難に挨拶した。

 その後で、ディレーナさんが言った。


「それにしてもオリンス様、ご立派なドレスに素晴らしい宝石ですわね。やはり婚約者からの贈り物なのかしら?」

「いえ、これは皇妃様にご準備いただいたものです」

「あら、そうでしたの。なるほど、納得しました。敗戦続きで降伏間際のトリスティンから贈られたものにしては、素晴らしすぎると思いましたわ」


 うわぁ。

 これはまた、わざとらしすぎるほどの悪役令嬢トーク。

 さあ、この嫌味に対して、オルデはどう切り返すのか、腕の見せ所だ。


「はい。本当に素晴らしくて、私も感動してします」


 オルデは正面から受け止めた。

 見事だ。


「貴女は、感動する前に皇妃様の御慈悲に感謝をするべきでしょう。これだから自分の利益しか見えない平民は困るのです」


 ディレーナさんが容赦なく追い打ちをかける。

 ここで私は、オーレリアさんが動揺した顔で私を見ていることに気付いた。


 私はオーレリアさんに小さくうなずいてみせた。

 オーレリアさんが、アレはいいのですか? みたいな視線を返してくる。

 私は再びうなずいた。

 それで賢明なオーレリアさんは、ディレーナさんと私が最初から通じていることを理解してくれたようだ。

 オーレリアさんは前に出ると、優しい笑顔でこう言った。


「ディレーナ様、彼女は将来はともかく、今はまだ着飾っているだけの平民なのですよ。あまり正しい言い方はどうかと」

「そうですわね。失礼しました」

「まだ彼女には、何が正しいかもわからないのです。お可哀そうなことですね……」


 オーレリアさん、いきなりノリノリだ……。

 もしかして、これが素なのかな、私にはわからないけど。


「勉強させていただきます」


 オルデは怖気づいた様子なく、ペコリと頭を下げた。

 いいね。

 落ち着いていて礼儀正しいし、自分から喧嘩を売るような言葉や表情もないし、見ていて好感の持てる姿だった。


 私が満足していると、エカテリーナさんがこっそり袖を引っ張ってきた。

 少しだけ場から離れる。


「……クウちゃん、よろしいのですかアレは」

「ん? アレって?」

「オリンス様のことです」

「あー。大丈夫だと思うよ。本人にもああいう練習をするって伝えたし」


 必要なことだよね。


「まさかとは思いますが、クウちゃんがやらせているのですか?」

「え。なんで?」

「いや、その、空気的に……。まさかとは思いますが……」

「さすがはエカテリーナさん、わかるんだねえ」


 すごいね。


「本当にそうなのですか!?」

「え。あ。うん」


 それはね。

 ディレーナさんが言い出したことではあるけど、否定はできない。


「嫌がらせなど悪趣味です。やめさせるべきです」


 エカテリーナさんが眉をひそめる。


「いや、うん。練習ね、練習。これからトリスティンに行けば、まわりは確実にああいうのだらけだろうし、対処に慣れておかないといけないよね」

「ああいうのという言い方もどうかと思いますが……。本人は承諾しているのですか?」

「うん。そうだよ」

「……なら良いのですが」

「エカテリーナさんもよろしくね?」

「私は嫌です。ああいうのは好きではありません」

「ディレーナさんたちは?」

「皆様はお好きでしょうね。と、何を言わせるのですか。今のはなしです!」

「あはは」

「笑い事ではありません!」

「エカテリーナさん、声がおっきくなってるよ」

「……失礼しました。しかしクウちゃんは、本当に顔が広いですね」

「工房やってるしねー。でも、うん……。やっぱりよくないか。ごめん、エカテリーナさんの言う通りかもだね」


 私は、ディレーナさまたちとオルデの間に割って入った。


「すみません、ディレーナさん。オーレリアさんも。やっぱりやめておきましょうか。今日は楽しい新年の日ですし」

「クウちゃんがそういうならそうしますわ」


 ディレーナさんが軽く肩をすくめる。


「あの、クウちゃん。わたくし、やりすぎてしまいましたかしら?」


 オーレリアさんが不安げにたずねてくる。


「いえ、見事な悪役令嬢っぷりでしたよ。意図を汲んでくれてありがとうございます。オルデもごめんね。ちょっと意地悪な試練だったよね」

「そんなことはありません。私には必要な経験だと理解しています」

「大変だったよね。この人たちは生粋だから」


「あら、クウちゃん。それはどういう意味かしら? わたくしたちが、まさに生粋の悪役とでも言いたいのかしら?」


 うお。


 ディレーナさんが怖い笑みを向けてきた!


「そんなことはないですよ! では、私はこれで! あとはお願いしますね!」


 私はくるりと背を向けた。


「はぁ。仕方ありませんね。では、オリンス様。早々ですが訓練は切り上げて、ここからは普通に楽しくお話しすることにしましょう」

「わたくしも、つい先程は流れに乗ってしまいましたが……。失礼いたしました」

「ご指導ありがとうございました、ディレーナ様、オーレリア様。正直、わかっていても怖くて今にも倒れそうでした」


 オルデが、緊張からやっと解かれたような、はにかんだ笑みを浮かべる。


「あらそれは、まさにわたくしが生粋と言いたいのかしら?」


 ディレーナさんが愉しそうに追求をかけた。


「生粋のお嬢様とはこういうものかと、本当に緊張しました」


 オルデはそれに明るい笑顔で答えた。


「ふふ。そうですか」

「良い勉強をさせていただきました」


 2人が微笑み合う。


 うむ。


 オルデのことは、ディレーナさんにお任せして大丈夫そうだ。

 私は退散させてもらおう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 稀代の悪役令嬢みたいな言い方してるから怒られるのよ?w けど言いたくなる気持ちも理解出来ます。凄い迫力でしたしw
[一言] まさかの敵役追加w よく耐えたなあ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ