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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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123/1359

123 褒められているらしい



 まず、確認だ。

 私、頑張った。

 かなり頑張ったと思う。


 なにしろ悪役令嬢の野望を未然に防いだわけだしね。

 自爆した悪役令嬢を助けてもあげた。


 うん。


 頑張った。


 なのにどうしてだろう。


 私は今、生徒会室で、ぽつんと1人で椅子に座っていた。


 私の前にはお兄さまがいて、今、深いため息をついたところだ。

 となりには副会長のウェイスさんがいる。


 お姉さまたちも来ていた。


 なぜかみんな、私の目の前に立っていた。


 武闘会の後のことだ。

 表彰式もおわって解散となったところで私は連行された。


「あの、私、屋台巡りに行きたいんですけど……」


 学院祭がおわるまでには、まだ猶予がある。

 せっかく珍しい食べ物が売られているんだから、買って保存しておきたい。


「ハァ……。おまえというやつは……」


 またお兄さまがため息をついた。


「あの……。私、褒められているんですよね?」

「当然だ」


 お兄さまがうなずく。


「私、頑張ったよね?」

「当然だ」


 お兄さまがうなずく。

 まったく笑顔じゃないけど。


「……あらためて聞くが、おまえの仕業で間違いないんだな?」

「仕業と言うと?」

「祝福だ」

「あ、はい。そうですけど」

「……今、すごい勢いでひとつの噂が広まっていてな」

「あ。まさか……。またセラのせいになっちゃってるとか?」


 だとすれば申し訳ない。


「安心しろ。違う」

「よかったー」


 私がほっとして笑うと、またもお兄さまがため息をついた。


「もー。なんですか?」


 目の前で何度もため息をつかれると、とても褒められている気がしない。


「ディレーナ・フォン・アロドが精霊の祝福を受けたという噂でな。あいつの株が急上昇してるんだわ」


 ウェイスさんが噂を教えてくれた。


「へー。よかったですね」


 彼女も酷い目にはあったけど、よいこともあったんだね。


「よくはないが?」


 なんかウェイスさんに睨まれた。


「そうなんだ?」

「あのなぁ、あいつは敵派閥だぞ」

「昨日の敵は今日の友?」

「いつあいつが友になった?」

「さあ」


 私に聞かれても困る。


「おまえが言ったんだろうが」


「もー。なんですかこれ。私、もしかして怒られてるんですか?」


 いいことしたのに。


 するとお兄さまが言う。


「おまえはよくやってくれた。おまえが手を出してくれなければ、ディレーナたちは死んでいたかも知れない」


 さらにお姉さまが付け加える。


「そうね。いくら自滅とはいえ、そんなことになればわたくしたちも困ったことになっていたでしょうし。クウちゃんには感謝しかないわね」


「へへー。どういたしまして」


 私、頑張ったしね。

 認められて、褒められるのは嬉しいことだ。


 お兄さまが言葉を続ける。


「しかし、そのおかげで今や、ディレーナは聖女候補だ」


「いいんじゃないですか? こっちには本物のセラがいるし。ディレーナさんに光の魔力はないですよ」

「そうだな。本人も強く否定している」

「あ、そうだ! それに陛下も聖者って呼ばれてるんですよね!」


「父上も否定しているがな」

「お父さまにも光の魔力はないですしね」

「そうだな」


「帝国、3人も聖なる者が生まれて、安泰ですね」

「そんなわけがあるかっ!」

「やっぱり怒ってるじゃないですかー!」

「フン。当然だ」


 腕を組んでお兄さまがそっぽをむく。


「本当に感謝はしているのよ。ねえ、お兄さま」


 お姉さまがフォローを入れてくる。


「あーいいですよ、お姉さま。別に私は怒ってないですしー」

「あら、そうなの?」

「はい」

「それはよかったわ」


「だいたいお兄さまって、いつもこうじゃないですか。こんなやりとり、前にもあった気がしますし。私、この間も陛下に同じようなこと言われて、あーでも、陛下は最後まで怒ってないと言ってましたけどねー。言っちゃう分、お兄さまはまだまだ未熟ということなんですよねー。もっと精進しないとダメですよねっ!」


 わっはっはー。


 笑って締めてやった!


 ざまあ!


「貴様! 黙って聞いていれば言いたいことを!」

「そっちだって言いたいこと言ってるじゃないですかー! 私だって言います!」

「阿呆か貴様は! 俺は言いたいことの半分も言っておらんわ!」

「なら言えばいいじゃないですかっ! どーせ好き放題に言ってるんだし!」

「それは子供のすることだ!」

「私は11歳ですー!」

「ガキが!」

「反抗期ー!」


 お兄さまと思いっきりにらみ合う。


 がるるるるるる。


 腹立つー!

 負けない!



「……なあ、アリーシャ。こいつらはいつもこうなのか?」

「いつもというほどの機会はなかったと思いますが、どうだったかしら。よくわかりませんわね」


 ウェイスさんとアリーシャお姉さまが呆れた声で会話を始める。


「俺たちはどうすればいいんだ?」

「静かに見ていればいいのではないかしら」

「じゃあ、そうするか」


 じっと見られた。


 いや、うん。


 恥ずかしい。


 お兄さまも同じ思いのようで、お互いに目を逸らして息をついた。


「……まあ、いい」

「とりあえず、もういいです」

「すまなかったな、クウ。おまえが頑張ってくれたことは確かなのに、俺の態度は適切なものではなかった」

「もういいですよー。私もムキになってごめんなさい」


「クウちゃん、お兄さまが苛立つのには個人的な理由があるのです」

「……どんなですか?」

「お兄さまとディレーナには、まだ婚約者がいないの」

「へー」

「アリーシャ、余計なことを言うな」

「実は、前々からあった話なの。2人が婚約したらどうか、と。2つの派閥の融和にもなるという理由で。特にアロド派――中央貴族の側から。それで2人はフリーの状態が続いていましたの」


 皇帝派としては、わざわざアロド派の権力基盤への介入を許す必要もないので、断り続けてきたそうだ。

 ただ、完全に無視することもできず……。

 圧力もあり、お兄さまの結婚相手は未だに決められない状況なのだそうだ。


「なるほど。ディレーナさんの評判が上がると、それは困るね」


 圧力が強まって断りきれなくなるね。


「そういうことですわ。もっともディレーナ本人は乗り気でないどころかわたくしたちと敵対しておりましたが」

「田舎貴族がー。みたいなこと言ってたしねえ」


 なかなか面倒な問題みたいだ。


「よし、そういうことなら! このクウちゃん様がまた一肌脱いであげよう!」

「なにか良い手があるのかしら?」


「要するに、負けてなければいいんだよね?

 ふっふー。

 ならば!

 お兄さまにも、すっごい光の柱をプレゼントして――」


 私、かしこい。

 同じ条件にしてしまえばいいのさ。


 でも、なぜか不思議なこと、言いおわらないうちに、うなだれたお兄さまにがっちりと両方の肩を掴まれた。


「……頼むからクウ。余計なことはしてくれるな」

「え。でも。名案」

「本当に感謝する。おまえはよくやってくれた。もう本当に十分だ」


 ここでブレンダさんが大笑いを始めた。

 つられてメイヴィスさんや他の生徒会の人たちまでもが、何故か不思議なことに謝りながら笑い始めてしまって。


 みんな、なんにウケたのかは不明だけど……。

 とても楽しそうだ。


 楽しそうということは、すなわちハッピー、幸せな気持ちということだよね。

 さすがは私ということだよね。

 意識しなくても人を笑わせることができるなんて、まさに達人の領域。

 素晴らしいことだ。

 ただ今回は、私ひとりだけの功績ではない。


「やりましたねっ! お兄さま! なんかウケてますよ!」


 功績は分かち合う。

 独占はしない。

 私は公正なのだ。


「おまえというやつは……」


 お兄さまがますます深いため息をついたのは、多分、芸の一環なのだろう。

 だってみんな、ますます楽しそうだし。


 私も楽しくなって、とりあえず笑った。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] ずっと考えてたけど、こんな調子でよくもまぁ大学に受かりましたね。しかも年齢考えると進級もしてるのかな。 それとも、精霊になった事で、性格とかに何か影響が?
[気になる点] 前から思ってたけど、王族権力弱すぎだろ・・・名前だけで実際子爵ぐらいの権力しかないんじゃないの?何が起きても困ってるし、何も出来ないし・・・犯罪犯した奴は、貴族といえど捕まえるぐらいは…
[良い点] みんな仲良く笑顔のwww ヽ(*´∀`)人(*´∀`*)人(*´∀`*)人(*´∀`)人(*´∀`*)人(*´∀`*)ノ お兄さま、持ちネタだったんwww [気になる点] せっかく改心し…
2021/07/31 20:17 退会済み
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