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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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1207/1359

1207 勝負の後で





「マリエ、貴女、なかなかよかったわ。特別に認めてあげる」

「なの。ニンゲンにしては、まあまあやるなの」

「ありがとうございます」


 負けたクセに偉そうな顔で差し伸べられたキオとイルの小さな手を、マリエは笑顔で握り返した。

 さすがはマリエ、人間ができている。


「クウさまは口ほどにもなかったわね」

「なの。ざこなの」


「「ざーこざーこ」」

「は?」

「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!」」


 睨むと揃ってマリエの背中に隠れたキオとイルに負けたのは、恥ずかしながら私です雑魚でごめんなさい。

 でも、生意気な幼女は許しませんよ?

 人間ができていなくてごめんなさい。


 あと、少なくとも、この2人には勝っている!

 私は3位だったのだ!


「少し反省しようか?」


 私は指をポキポキ鳴らして、2人に近づいた。


「マリエ、助けてなの! クウさまに拷問されるの!」

「ふえーん! ふえーん! 怖いよー!」

「あの、クウちゃん……?」

「マリエ、ちょーっと退いててもらえるかなー。巻き込むと大変だし」

「クウちゃんよく見て! 私、退こうとしているよ!」

「ふふ。かばうんだ?」


 確かにマリエは動いているけど、そのうしろにはぴったりとキオとイルが張り付いているのだ。


「ついてくるのー! 見ればわかるでしょー!」

「マリエシールドなの! この鉄壁の守り、崩せるものなら、まずはマリエから始末してみろなの!」

「ふえーん! ふえーん! 助けてー!」


 まあ、うん。

 本気になれば一瞬なのですが。


「つーかまえたっ♪」


 私は2人をつまみ上げた。


「「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」」


 じたばたしても、もちろん逃しません。

 ほんの少しだけ魔力を流してあげると、ビクンとして2人はいい子になってくれました。

 私は椅子に座って、2人の頭をなでなでしてあげた。

 まったく、大人しくさえしていれば、2人とも可愛い子なのにね。


「クウさま……。お2人ともヤっちゃったの?」


 妖精のミルが羽をぱたつかせて、おそるおそる近づいてくる。

 アクアも一緒だ。


「あははー。まさかー。2人はね、いい子になってくれただけだよー」

「そっかぁ。いい子かぁ。ねえ、それならさ、クウさま」

「うん。なぁに?」

「アクアに、あらためてキチンとご挨拶させてくれないかなぁ。水の大精霊様は、アクアを進化させてくれた恩人様だし。なのにまだ、ほとんどオハナシとかできていないし」


 一瞬、水の大精霊様って誰?

 と私は思ったけど……。

 私の膝で大人しくしている水色髪の幼女のことか。


「いいよー」


 私は笑顔で応じてあげた。


「イル、キオ、妖精さんたちと遊びなー」


 魔力を抜いてあげると、2人は飛び跳ねるように私から離れた。


「はいなの!」

「わかりましたっ! キオは言う事を聞きます!」


 2人のことはしばらく、ミルとアクアに任せるとしよう。



 部屋を見れば、他のみんなはファーのところに集まって、大喜利の司会役の達成を大いに称賛していた。

 エミリーちゃんはファーの腕に絡んで、フラウは正面に立って腕組みして偉そうな顔をしていて、ヒオリさんは脇で微笑んでいて――。

 うん。

 3人は特にファーの面倒を見てきたしね。

 嬉しさもひとしおなのだろう。

 気のせいか、ううん、気のせいではないよね……。

 ファーの表情も朗らかで、リラックスしているのがわかる。

 セラとアンジェとスオナも、感情豊かなファーに興味津々の様子だ。


 私は、うん。


 なんか、ポツンとしちゃいましたね……。

 竜の里を思い出しますね……。

 カメの子たちが集った時も、私、こんな感じですよね……。


 いや、うん。

 いいの。


 私、こう見えて、いつも中心にいるしね。

 たまにこうやって、みんなのことを静かに見守るのも。


 いや、うん。


 やっぱり寂しいので、私もファーのところに行った。

 すると、ファーに直立されてしまった!

 なんだか緊張されている!

 みんなも、自然に場を空けてくれた……。

 なんだか私、偉い人みたいです……。


「ファー、お疲れ様。初めての仕事なのに、すごくよかったよ」


 私は笑いかけた。


「ありがとうございます、マスター」


 まあ、うん。

 ファーから見れば偉い人だよね、私。

 なにしろマスターだし。


「ふふー。わたくし、初めてクウちゃんに勝ってしまいましたねー」

「うん。セラもすごくよかったよー。負けちゃったよー」

「店長は途中から明らかにペースを崩されましたね。何かありましたか?」


 ヒオリさんがたずねてくる。


「あー、うん。今回は、なんか頭が回らなくてねー。あははー」


 私は笑って誤魔化した。

 私は空気の読める子なのだ。


 クウちゃんだけに、と、ヤマスバに、翻弄されたんだよ!


 とは言わない。


 セラは、実に楽しそうにしているし。

 ファーも誇らしげだし。

 みんなが幸せなら、私もその幸せに乗っかるのだ。


「最近のクウちゃんは大忙しだったのである。やむを得ないのである」


 フラウがうんうんとうなずいた。


「そうですね。正月の間は、ゆっくりお休みください。家の細かなことは某達で済ませておきますので」

「クウちゃん、お店はいつから開けるの?」


 エミリーちゃんがたずねた。


「そうだねえ、いつからにしようかぁ」

「わたし、明日でもいいよ! ファーがいてくれれば、クウちゃんやフラウちゃんが忙しくても平気だし!」

「エミリーちゃんは、家族とも一緒に過ごそうねー」

「家族とは夜にいるよー。わたしね、思うの。お正月はかきいれ時だよ? 開けていれば儲かるよ。姫様ドッグ店だって姫様ロール店だってぬいぐるみマートだって今日から開いているし」

「んー。そかー」


 正直、うちは儲けを追求していない。

 なにしろ、すでに人生を何周もできる分のお金がある。

 とはいえ、だ。


「マスター、お任せください。今までよりも上手に接客する自信があります」


 ファーもこう言っている。

 せっかく従業員がやる気なのに水を差すのも無粋だ。


「エミリー、ファー、店を開けるのは3日からがいいと思うのである。明日はファーの身体能力を測定するのである」

「そうですね。今後のためにもファー殿が実際にどれくらいできるのかは見ておいた方がいいかと。おそらく100人程度の強盗集団であれば、すでに単身で制圧可能だと思いますが」

「で、ある。念のため、確かめておくのである。訓練もするのである」


 あの、うち……。

 帝都の一等地のお店なんですけども……。

 100人の強盗集団が来るなんて、すでに帝都の治安がおわっているレベルの大惨事なんですけれども。

 と私は思ったけど、口にはしなかった。

 私は空気の読める子なのだ。


「ねえ、フラウちゃん、それ、わたしも参加していい?」

「もちろんなのである」

「わたしも、どれくらいできるのか見てほしいの。あと訓練もしたい! お店を強盗集団から守れるように!」

「ふむ。で、あるか」


 エミリーちゃんに請われて、フラウが私に目を向けた。

 私の返答次第と言いたいのだろう。


 今のところ、エミリーちゃんに戦闘訓練はしていない。

 ダンジョンに連れて行ったこともなかった。

 なにしろ9歳の女の子だったしね。

 いくらなんでも早すぎるだろう、ということで。

 でも、エミリーちゃんは今年は10歳。

 10歳になれば、オダンさんとの無給お手伝いの約束もおわって、お給料を払うことができる。

 ちゃんと店員になるわけだ。


「エミリーちゃん、訓練ってけっこう辛いよ?」

「うん。知ってる。わたし、平気だよ」


 聞いてはみたけど、頑張れるかの心配はしていなかった。

 エミリーちゃんほどの努力家は学院にだって早々いない。


「――フラウ、ヒオリさん、容赦なく鍛えてあげて。今年から解禁しよう」

「わかったのである」

「エミリー殿は、ますます大物になりそうですね」

「わたし、頑張るっ! 立派なお店の店員さんになるねっ! ファー、一緒に最強の店員さんを目指そう!」

「はい、もちろんです、エミリー」


 ファーとエミリーちゃんは、本当に最強の店員になりそうだ。

 工房の未来は明るいねっ!

 まあ、うん。

 ファーはともかく、エミリーちゃんの未来は、さすがにうちの店員で収まるものではないだろうけど。


 ちなみにセラたちも明日、来ることになった。

 一緒に訓練したいそうだ。

 みんな、ホント、頑張りやさんだよねえ。






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― 新着の感想 ―
[一言] エミリーさんも鍛える…フム((¯ω¯*))フム これは遠くない未来、皇帝陛下が乾いた叫びで挫けそうになる胸を突き刺すかも?(イミフ)
[一言] 唯一の非戦闘員、マリエさんにはそのまま頑張ってもろて。
[一言] 厳しい訓練が始まる
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