1205 大喜利大会! 私が山に登った理由は……。
これは、いかん。
カラアゲに対して、まともな解答がない。
大喜利大会をセラに蹂躙されないためにも……。
ここはキチンと……。
私が正しい解答を示さねば……。
「はい」
私は手を上げた。
「マスター、どうぞ」
では。
いこうか。
「カラアゲかと思ったら石だったよ! 食うのこれ!? くえんよね!」
「まさに、クウちゃんだけにですね!」
セラがかぶせてきたぁぁぁぁ!
どっとウケたぁぁぁ!
アンジェたちも笑っているうううう!
上がったカードは、◯、◯、◯!
「マスター、3ポイントです」
ありがとう。
なんとなく複雑ではあるけど、まあ、いいか。
しかし、いかん。
クウちゃんだけになこの流れは、なんとしても断ち切らねば!
「はい」
おおお!
そこにマリエが手を上げたぁぁぁぁ!
「マリエ様。どうぞ」
お願い、マリエ!
断ち切ってえええええええええ!
マリエは言った。
「ヤマスバ」
と。
え。
私の時間が、一瞬、止まった。
カードが上がる。
◯、◯、◯。
「マリエさん、3ポイントです」
「うむ。カラアゲの山だけに、ヤマスバ。よいのであるな」
「そうですね。今回はアリかと」
「山って素晴らしい。カラアゲの山も素晴らしい。つまりこれは、感動して食べられなかったってことだよね」
フラウとヒオリさんとエミリーちゃんが論評する。
「よかったぁ。今回はちゃんと山だったし、いいかなあと思って」
マリエがほっとしたように言った。
私は時間を取り戻した。
言われてみれば、今回はアリなのか。
山つながりで。
新春大喜利大会……。
これはもう、このノリで進んでいくのかも知れないね……。
「では、次のお題を出します」
第3問が始まる……!
頼むよ、ファー!
今度は、クウとかヤマとか関係ないお題でお願いね!
「マスターが山に登りました。何故でしょう」
ファぁぁぁぁぁぁ!?
クウ!
ヤマ!
どうしてピンポイントに来るのぉぉぉぉぉぉぉ!
「はい!」
「では、セラ様。どうぞ」
「クウちゃんだけに、くう! ために!」
◯◯◯!
「はい」
「では、マリエ様。どうぞ」
「ヤマスバ」
◯◯◯!
駄目だこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
ウケてるしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
まあ、うん。
定番のギャグっていいよね!
わかるけどさ!
私にも、にくきゅうにゃ~んがありますし!
「はいなの! やっとコツがわかったなの!」
「では、イル様。どうぞ」
「カラアゲを食べるためなの!」
XXX。
「なんでなのー! カラアゲは最高なのになのー!」
「ふふ。イルはまだまだね。――はい」
「では、キオ様。どうぞ」
「クウさまが山を登る理由なんて決まっているわ! 私は知っているもの! バカと煙は高いところが好きなのよ!」
「は? おい、誰が煙だって?」
「え。あの……。クウさまはバカの方よね……?」
「は?」
「ふえ。うえーん! うえーん! クウさまが睨んだぁぁぁぁぁ! 私、ちゃんと言ったのにー!」
おっと、いかん。
「ごめんごめん。なーてねー。怒ってないからねー」
私はキオの頭をよしよししてあげた。
「ぐす。ぐす」
「それで、あの、店長……。評価はしてもよいのでしょうか?」
「あ、うん。ごめんね、お願いします」
◯、◯、◯。
なんか同情票のような気がしなくもないけど、おめでとう。
「ふふー。さすがは私ね! イル、どう?」
「ううう! 悔しいなの! キオに負けるなんて!」
「あっはっはー!」
まあ、うん。
キオの機嫌が戻ってくれたから、よしとしよう。
家の中で嵐を起こされたら大惨事だし。
「あとはマスターですが、いかがされますか?」
「はい。やります」
私が山に登った理由、か……。
それは……。
なんだろう……。
クウちゃんだけに、くうために……か……。
絶景のために、すなわち、ヤマスバ……。
いかんいかん!
それでは、セラとマリエに、完全にかぶってしまう!
私はそう――。
もっと正しい大喜利をせねば!
正しい笑いで、みんなのことを導かねば!
よし……!
「私が山に登った理由――。
それは――」
静かな緊迫感の中、私は口を開いた。
「ふわっとね! ふわっとするためにかな!」
私は行ったんだよね!
きっとね!
だって私、ふわふわのクウちゃんですし!
私は軽く浮かんで、そう元気に答えた!




