1204 ニクキュウニャーンの解答は!
な、なにィ!?
私は戦慄した。
何故ならば、早速、始まった新春大喜利大会!
その第1問が、まさかのにくきゅうにゃ~んだったからだ。
さすがはファー。
このクウちゃんさまを戦慄させるとは、さすがは私が生成したメイドロボだけのことだけはあるね……。
それなりに自画自賛ですが……。
ともかく、考えねば。
「……む、難しいなの。今のが何と言われても困るのなの」
「そうよねぇ……。猫のモノマネ、なのよね?」
イルとキオは悩んでいた。
無理もあるまい。
今、ファーが披露したのは、間違いなく「にくきゅうにゃ~ん」。
しかし!
それをそのまま答えては大喜利にならない!
面白可笑しく答えねば!
「はいっ!」
私が思考を始めた刹那、セラが元気よく手を上げた!
早い!
なんという卓越した思考能力!
「では、セラ様、どうぞ」
ファーが解答を促す。
セラは元気よく、明るい声でこう言った!
「クウちゃんだけに、くう!」
はい。
そかー。
ですよねー。
なんか、うん。
知ってた。
さあ、評価はどうだろうか。
今回の大喜利では、司会者のファーは問題を出すだけで評価は下さない。
評価を出すのはうちの店員3名だ。
それぞれ、◯とXのカードを持ってそれを提示する。
エミリーちゃん:◯
ヒオリさん:◯
フラウ:◯
なんと高評価!
3人は迷わず、◯のカードを上げた。
ウケたようだ!
「セラ様、3ポイント獲得です」
「やりましたー!」
「はいっ!」
続けて手を上げたのは私だ。
「では、マスター。どうぞ」
「背中がかゆいのー! かいてかいてー!」
私は肉球ポーズを作って、上下に動かした。
どうよ!
にくきゅうをかきかきへと変換した、この冴える技は!
カードが上がる!
エミリーちゃん:X
ヒオリさん:◯
フラウはしばし悩んだあと、私と目が合って――。
申し訳無さそうにXを出した。
「マスター、1ポイントです」
無念。
何故だ……。
「わたしね、かくだけならくるりと回る必要はないと思うの……」
エミリーちゃんが申し訳なさそうに言った。
フラウがうなずく。
「某は、まあ、そういうのもアリかと」
ヒオリさんは気にしなかったようだ。
「あとの3人はどうですか? なければ次に進みますが」
ファーが言う。
マリエとキオとイルは、まだ悩んでいた。
と。
マリエがおそるおそる手を上げた。
「マリエさん、どうぞ」
マリエはいったい、私のフェイバリット「にくきゅうにゃ~ん」に、どんな答えを披露してくれるのか!
ドキドキ。
私は緊張と期待の入り混じった気持ちでマリエを見つめた。
マリエが言う!
「ヤマスバ」
と。
えっと、あの。
お題にまったく関係ないよね、それ……。
私は言いかけたけど、それより先にカードが上がった。
◯!
◯!
◯!
「マリエさん、3ポイントです」
「ありがとうございます」
マリエは冷静な様子で、ペコリとお辞儀をした。
「あまりの不意打ちに、思わず笑ってしまったのである」
「うん。そうだねえ……」
「笑うが勝ちとは、まさにこのことですね」
これは……。
うん。
言わねばなるまい……。
「みんな、ちょっといい? 解答は、あくまでお題に関係したことでね? クウちゃんだけにとかヤマスバはニャーンには関係ないよね?」
「……う。そうだよね。ごめん。ついテンパっちゃって」
マリエは素直に納得してくれたけど……。
セラには首を傾げられた。
「あの、クウちゃん。クウちゃんだけには、関係ありますよね? だって、どちらもクウちゃんなんですから」
「あ、うん。まあ、あるといえばあるのか……」
「ですよねっ! よかったです!」
「じゃあ、うん。えっと、マリエだけやり直しでお願いします」
セラには押し切られてしまった。
まあ、うん。
とはいえ、関係はあるからしょうがないよね、これは……。
というわけで、マリエがもう一発。
「うしろにオバケがいると思って驚いちゃった。……とか」
X、X、X。
残念。
「マリエさん、0ポイントです」
「はい」
「マリエ、でも、そんな感じでいいからね! 次も頑張ろう!」
私は励ましたっ!
「イル様とキオ様はどうですか?」
「ううー。ないなのー! もう別の問題にするなのー! カラアゲ! カラアゲにしろなのー!」
「私も次にするわ」
というわけで、最初のお題はおわった。
第2問にゴーだ!
「では、カラアゲです。目の前に山盛りのカラアゲがありますが、貴女は食べることができません。何故でしょう」
「どうしてなのー!」
「解答する場合は、挙手をお願いします」
「はいなの!」
「イル様、どうぞ」
「食べるなの! 強行突破なの!」
残念ながら答えになっていない。
当然、XXXだった。
次はキオが答えた。
「お腹がいっぱいだったのね。わかるわ」
自身満々だったけど、残念ながら面白みがない。
当然、XXXだった。
「はい」
セラが堂々と手を上げた。
「では、セラ様、どうぞ」
「クウちゃんだけに、くう!」
またかー!
しかし評価はまさかの、◯◯◯!
「セラ様、3ポイントです」
「やりましたーっ!」
「評価は迷ったのであるが、カラアゲをくう、クウちゃんだけに。おかしなことではないのであるな」
「そうですね。店長もカラアゲはくう。自然なことです」
「だねー」
フラウたちは妙に納得していた!
まあ、うん。
言われてみれば、くうだから関係はあるよね……。
駄目だとは言えない……。
「理不尽なの! どうしてイルはダメで、クウちゃんさまは食べられるのー!」
「イル、それは当然でしょ。クウさま相手に何を言っているのよ」
「ううう。暴虐なのー!」
「ご安心ください、イル様。これはただの言葉遊びであり、実際にイル様がカラアゲを食べられないわけではありません」
「なの?」
「そうですよね、マスター?」
「え。あ。うん」
「ならいいの! イルはカラアゲを食べられれば満足なの!」
「まさに、クウちゃんだけにくうですねっ! 素晴らしいことですねっ!」
なぜかセラが明るい声で、イルたちの会話をまとめた。
うんうん。
その通り。
と、なぜか大いに納得してヒオリさんとフラウとエミリーちゃんがうなずく。
私はこの時、そこはかとなく、嫌な予感を覚え始めていた……。
クウちゃんだけに……ね……。
まさに……。




