表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1172/1359

1172 出発前のいろいろ



 ウサギ族のヒトたちは、まさにウサギに近い獣系のヒトたちだったので、打ち解けられるか少し心配だったけど、杞憂だったようだ。

 私たちは拍手で歓迎してもらえた。

 よかった!


「ねえ、マヤヤ。早速なんだけど、お神輿を見せてもらってもいいウサ?」

「は、はいぃぃ! もちろんです、クウちゃん!」

「ありがとウサー」


 許可をもらって、私はお神輿に近づかさせていただいた。


「小さくてお恥ずかしいのですが……」

「そんなことはないウサよー。これは、よいものウサ」


 ウサギ族のお神輿は、サイズで言えば小さい。

 それこそ、祠程度だ。

 なので、他の種族のヒトたちが準備した馬車より大きなお神輿と比べれば、迫力では随分と劣る。

 だけど近くで見れば、少なくとも手抜きでないことはわかる。

 ウサギ族のお神輿は、びっくりするほど細やかに彫刻が施されていた。

 見事な芸術作品だった。

 特に屋根の上に置かれた木彫りの竜が見事だった。


「ねえ、フラウ。これはすごいよねウサ?」

「うむウサ。我ら竜族の威厳が、それなりに表現されているのであるウサ。褒めてやってもよいのであるウサ」

「ウサー。よかったウサね、マヤヤ。褒めてくれるってウサ」

「は、はい……。ありがとうございます……。ナオ様が竜族の下で修行を積んだという伝説に重ねてみんなで掘りました」

「伝説ってほど昔の話ではないと思うけどねー。あ、ウサー」


 つい去年のことだし。


 あと、台座に彫られた何匹ものカメも美しい仕上がりだった。

 まるでカメが神輿を乗せているように見える。

 カメというのがいいよね。

 ナオのことを、よくわかっている。

 ちなみに聞いてみたけど……。

 カメは、あくまでカメで、ウニ様のカメ様ではなかった。

 よかったのですウサ。


 そんな感じに私たちが――。

 楽しく神輿を見せてもらっていると――。


「わははは! ウサギ族に助っ人が来たと聞いて、どんなデカいのが来たかと思えば結局チビじゃねーか!」


 めんどくさいことに、また他の種族がわざわざ絡みにやってきた。

 3人の、オークっぽい大男たちだ。


「これはイノシシ族の皆さん、こんにちは」


 マヤヤが丁寧にお辞儀する。

 なるほど。

 イノシシなのか。


「こいつだけは少しマシだけどな。てか、メイドか?」

「ニクキュウニャーンウサ」


 声をかけられて、ファーはいつもの挨拶を返した。

 イノシシたちは一瞬ポカンとして。


「わははは! なんだよそりゃ! なんで猫なんだよウサギのクセに!」


 と、大笑いした。

 いえ。

 はい。

 それは確かに、そうですね……。


 まあ、それはともかく。


「で、なにウサ? 喧嘩なら買うウサよ?」


 私は前に出た。


「バカ言え。俺たちは優しいからな。心配をしに来てやっただけだよ」

「どういうことウサ?」

「そんな小さい神輿で参加したってよ、すぐに壊されておわりだろ」

「えっと、あのウサ……。神輿って壊されるのウサ?」

「当たり前だろ。ぶつかってぶつかって、最強を決める。お祭りの最後は昔からそういう神事だろうがよ」

「なるほどウサ」


 そうなのか。


「あのお、私たちは、行列にだけ参加して、最後のぶつかり合いは最初から棄権するつもりなので平気ですよ……?」


 マヤヤがおずおずと言う。


「だと思ったが、助っ人なんて頼んで、まさかと思ったのさ。おまえらウサギ族なんて雑魚の中の雑魚なんだからよ、ちゃんと身の程をわきまえて、小さく小さくしていればいいんだよ」


 わはははは!


 イノシシ男たちが笑う。

 心配してくれているのかなぁとも思ったけど……。

 完全にバカにしているよね、これは……。

 と私は思ったのだけど、ひとしきり笑った後、イノシシ男の1人が声を潜めてささやきかけてきた。


「……熊どもがおまえらを潰す気でいるんだ。……戦士をコケにしたって、虎連中も同調してやがる。……いいか、絶対に棄権しろよ。祭りの後、ナオ様の前で詫びれば収まる話なんだからよ」


 あーうん。

 やっぱり、心配はしてくれているのね。

 獣王国にもいろいろあるようだ。


 わはははは!


 と笑いながら、イノシシたちは去っていった。


 ウサギ族のみなさんは……。

 今の話を聞いて……。

 完全にお通夜ムードになってしまった……。


「ああああ……。もうダメだおしまいですぅ……。戦士団のヒトたちに目をつけられてはこの都で生きていけませんんん……」


 頭を抱えて、マヤヤがその場に倒れた。


「クウちゃん……。どうしようウサ……」


 エミリーちゃんが心配そうな顔をして、私に近づいてきた。


「いや、うんウサ。大丈夫だと思うウサさよ」


 私は言った。

 だって、さ。

 かなり抑えられているとはいえ、光と闇の魔力反応が実は近くまで来ている。


「話は聞かせてもらった。世界は滅亡する」

「な、なんでウサー」


 私は一応、棒ながらもお約束の返事をさせていただいた。

 唐突に現れたのは――。

 カメのリュックを背負って、カメのもこもこ帽子を深くかぶって、長いローブで尻尾も隠した、謎の銀髪の女の子。

 風魔衆からの報告を受けて、現場に急行してきたようだ。

 その正体は、光と闇をまといし、獣王国最強の戦士――。

 世界に選ばれし、たった1人の勇者――。

 今はカメの子。

 ナオ・ダ・リムさんだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
な、なんだってー!?
[良い点] 語尾がウザいせいでイノシシさん達の出番がコミカルにw [一言] 兎族の人を何人か雇ってクウさんの弟子にすると面白いと思ったのは私だけですかね? 竜ですら認める程の細工レベルですし
[気になる点] 今回はクウちゃんではなくナオが皆のキ・タ・イに応えるのだろうか [一言] >「うむウサ。我ら竜族の威厳が、それなりに表現されているのであるウサ。褒めてやってもよいのであるウサ」 フラウ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ