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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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1157 閑話・アンジェリカの冬の夜2




「じゃあ、そういうことで」

「ちょっと待った!」


 逃げるように身を返したクウの手を、私はガッチリと掴んだ。


「えっと。どうしたの、アンジェ」

「どうしたのじゃないでしょ! どういうことよ!」


 私、アンジェリカは、それなりにクウとは深い付き合いをしている。

 クウがどんな子かは知っている。

 とはいえ、いきなり小さな女の子を寝かせて、あとはよろしく、というのはさすがにないだろう。


 とにかく私はクウを座らせて、詳しい話を聞いた。


 女の子は、キオジールというそうだ。

 105歳の風の大精霊。

 私たちより遥かに年上だ。


 ただ、クウが言うには、下一桁だけで見た方がいいらしい。

 すなわち、5歳。

 まあ、うん。

 その方が、見た目的にも納得できるけど。

 なにしろ完全に幼女だし。


「それならさ、この子にも食べたいものを食べさせてあげればいいんじゃないの? それで解決よね」


 話を聞いて、私は素直な意見を口にした。

 事件の発端がカラアゲなら、それでいいわよね。


「うん。僕もそう思うよ」


 スオナが同意してくれる。


「……私ね。もう疲れちゃったの。お願い、アンジェ。助けて」


 クウは、がっくりと肩の力を落とした。

 私は正直、困った。

 だって、風の魔力つながりってだけで連れてこられても、どうしていいのかまるでわからない。

 いや、うん。

 答えは自分でさっき出したか。

 要するに、美味しいものを食べさせてあげればいいのよね。


「わかった。いいわよ。引き受けてあげる」


 クウは親友だし、夏の旅とかではお世話になっているし。

 助けてというなら助けてあげようか。


「うわーん。ありがとー、アンジェー」

「はいはい。よしよし」


 抱きついてきたクウをあやす。

 さらさらな青色の髪が、腕に巻き付いてこそばゆい。


「もちろん僕も手伝わせてもらうよ。それで、クウ。キオジール様はどんな食べものがお好みなのかい?」

「さあ」

「そうかい。では、起きたら本人に聞いてみるのがいいかな」


 さすがはスオナ。

 そかーとは言わないのね。


「2人とも、ありがとね。あとはよろしくお願いします」


 私から離れて、クウがペコリと頭を下げる。


 なんにしても今夜はもう遅い。

 明日の話よね。


「じゃあ、クウ。また朝にでも――」


 この子を連れて来てよ――。

 と、私が言いおえるより先に――。


 クウの姿は、その気配と共に消えてしまった。

 転移か帰還の魔法を使ったのだろう。


「クウはせわしないね。いや、この場合は、疲れも限界だったのかな」


 スオナが言う。


「そうね」


 私は肩をすくめた。


「……このお方が、風の大精霊様なのですね。お好みを聞くためにも、早速、起こしてみますか?」


 アクアは興味津々にキオジール様を見ていた。

 キオジール様はまだ寝ている。


「それはやめときましょ。明日の朝でいいと思うわ」

「そうだね。今夜はこれでおわろうか」


 クウの魔法で寝ているなら、キオジール様が中途半端に起きることはないだろう。

 私たちもそろそろ就寝の時間だ。


「よいしょっと。私はこれで、部屋に戻らせてもらうわね」


 私は膝に手をついて、身を起こした。

 最近は謹慎のせいで運動不足だ。

 朝から晩まで学院の敷地にいるものだから、体が重くなっている。

 もちろん運動はしているけど、敷地内では人目もあるし、常識の範囲内でしか動けないのよね。


「アンジェ。自然な態度を装って、キオジール様を僕の部屋に置いていこうとするのは勘弁してくれたまえよ。担当は君だからね」

「あはは。バレたか」


 朝までお任せしようと思ったけど。

 仕方がない。

 私は、スオナのベッドで眠るキオジール様を抱きかかえた。

 キオジール様の体は本当に小さくて、まさに5歳児だ。

 軽々と持ち運べた。

 キオジール様に起きる気配はない。

 クウが魔法で寝かせつけたのだ。

 起こそうとするまでは、ぐっすりなのだろう。


 私は自分の部屋に戻って、キオジール様をそっとベッドに寝かせた。


「私はどうしようかしら……」


 まあ、いいか。

 部屋にベッドは1つしかないし、さすがに床で寝るのは寒い。

 夏ならともかく、今は冬だしね。

 私は、一緒に寝かせてもらうことにした。


 おやすみなさい。


 朝は、問題なく訪れた。


 ただ、うん。


 目覚めて、瞼を開けると――。

 すぐ目の前に、キオジール様の風の魔力に輝く瞳があって――。

 どうしてか、私の顔を覗き込んでいたようね――。

 さすがに驚いたけれど。


 とはいえ……。


「うわあっ! ニンゲンが起きたーっ!」


 私が驚くより先に何故かキオジール様の方が驚いて飛び退いたので、私は逆に冷静さを取り戻した。


「おはようございます、キオジール様」

「ねえ、貴女は誰……? クウさまの知り合いなの……? クウさまの匂いを明らかに感じるわ……」

「はい。クウは私の友人です」

「そうなんだぁ。どうして私はここにいるの……?」

「実はクウに、キオジール様のことを頼まれまして」

「頼まれたって何を? それよりここって物質界よね? あと貴女、綺麗で強い風の魔力を持っているわね! 火と一緒なのは残念だけど、気に入ったわ! なかなかのものよ、貴女!」


 キオジール様は、朝から調子がよいようだ。


「ありがとうございます」


 私は丁寧に頭を下げた。

 その後で自己紹介した。


「私はアンジェリカ・フォーンと言います。どうぞ気楽に、アンジェとお呼びください」

「それならキオのことはキオでいいわ」

「わかりました、キオ様」

「んー。アンジェはクウさまのお友だちなのよね……? クウって呼んでいるくらいだし、普通にしゃべっているのよね?」

「はい。そうです」

「なら、私もクウさまと同じにして。そうでないと困るわ」

「でもそれだと、失礼な感じに……」


 仮にも大精霊様に、タメ口なんてダメよね。

 と私は思ったけど……。

 大精霊よりもクウの方が地位が上なのよね、そういえば……。


「わかったわ。よろしくね、キオ」


 私は気持ちを切り替えて、あらためて挨拶した。





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― 新着の感想 ―
[一言] 〉大精霊よりもクウの方が地位が上なのよね、そういえば……。 皆で忘れてるけど時期女王で現・精霊姫なんですよねーw あと更に忘れてるけど、大きな爆弾が二柱増えますし事情通な皇帝陛下麾下の方々…
[気になる点] クウちゃんから見たキオがしたいことと、キオ本人がしてほしいことの認識が少しずれてるような気が…(キオは友達、除け者、遊ぶとかのワードが多いから、食べ物よりもみんなと一緒に遊んだりとかの…
[一言] ぶん投げたけど以外と最適解か気がする
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