1151 カラアゲパーティー、第2章なの!
こんにちは、クウちゃんさまです。
えー、というわけで……。
私は大宮殿に来ました。
イルのために、カラアゲパーティーを開いていただくからです。
豪華な食堂には、すでに皇帝一家の姿があった。
陛下に皇妃様に、お兄さまにお姉さま。
セラにナルタスくん。
なんと、全員が揃っている。
ちなみに妖精のミルはいない。
雪の銀世界に興奮して、1人で外に遊びに出かけてしまったそうだ。
私はまず、皆様に感謝を述べさせていただいた。
「それでクウちゃん、何故イルサーフェ様は、クウちゃんの肩の上でぐったりとしているのですか?」
お姉さまがたずねてくる。
「いやー、実は、こんなカラアゲが食えるかー、って暴れたもので……。今起こしますね。暴れたら黙らせますので」
私はイルを椅子に座らせると、ポカリと強めに頭を叩いた。
「痛いなのー! なんなのー!」
頭を押さえて飛び跳ねて、イルが目覚める。
「ご無沙汰しております、イルサーフェ様」
そこにお姉さまが優しく微笑む。
イルの席は、お姉さまのとなり。
私はまだイルのうしろにいるけど、席はイルから少し離れたいつものセラのとなりに用意されている。
「あれ。アリーシャなの! 久しぶりなの! 元気そうなの!」
「はい。元気にしております」
お姉さまの顔を見て、イルはすぐに機嫌を取り戻した。
暴れる様子はない。
私は安心して、セラのとなりに座った。
セラと目が合う。
セラが微笑んできて、私は肩をすくめた。
「イルサーフェ様、ここはわたくしの家です。これからイルサーフェ様に、カラアゲをご馳走させていただきますね」
お姉さまがイルに言う。
「ホントなの!? アリーシャのカラアゲ!?」
「はい」
「それは朗報なの! イルは今、クウちゃんさまにカチカチパサパサのカラアゲを食わされて辟易していたところなの!」
「こほん」
私は軽く咳をした。
するとイルが、私のことに気づいた。
「げ。クウちゃんさまなの」
「イル、お行儀よくするんだよ。暴れたりしたらダメだからね」
私は一応、注意しておいた。
「はぁ。イルをクウちゃんさまと一緒にするな、なの。イルはクウちゃんさまみたいに無闇に暴力は振るわないなの」
「ならいいけど……。それより、ちゃんと皆さんにご挨拶したら? 初めての人たちもいるよね?」
「それもそうなの。よく見ればカイストもいるの! 久しぶりなの!」
「はい。ご無沙汰しております」
お兄さまが営業用のイケメンスマイルで応える。
「じゃあ、ここにいるのは、アリーシャとカイストの家族なのね?」
「はい。その通りです」
お兄さまがうなずく。
「わかったなの! イルは、イルサーフェ! この世界の水を司る偉大なる大精霊の1人なの! よろしくなの!」
「2人の父親のハイセルだ。今日はよく来てくれた。歓迎する」
「母のアイネーシアです。どうぞ、お見知りおきください」
「妹のセラフィーヌです。クウちゃんからお話は聞いていました。今日はお会いできて嬉しいです」
「弟のナルタスです。初めまして」
挨拶は、とても平和におわった。
うん。
よいことだ。
「で、クウちゃんさま。これはいったい何なの?」
「もちろんカラアゲパーティーだよ」
「なの?」
「うん」
「……イルの記憶が確かならば、カラアゲパーティーは最悪の結果を迎えて終了したはずなの」
「安心して。さっきのは、ただの夢だから」
「なの?」
「あれは夢でした。イル、寝てたでしょ?」
「なの。イルは寝ていて、今、頭痛と共に目が覚めたところなの」
「楽しいパーティー、始めようっ!」
「なの。わかったなの! 食べて食べて食べまくるなのー!」
「おー!」
「……でも今度不味かったら、もはや雪だけでは済ましてやらないの。今度は大洪水を引き起こして、この大陸ごと――」
「こほん。ねえ、イル」
「なんなの?」
「次、そんなことしたらね、」
「なの?」
「即座に、1000年間の拷問スペシャルだからね?」
私はニッコリ笑ってそう伝えた。
「ひぃぃぃぃぃ! 拷問、拷問されるのおおおお! 助けて、アリーシャ! イルをクウちゃんさまから守ってなのおおおお!」
「いえ、あの、イルサーフェ様……。さすがに洪水は困るので、クウちゃんの言う事は聞いてくださいね」
「ううううううう! わああああああ!」
イルが壊れた。
もう、仕方がないなぁ。
私は白魔法『リムーブ・フィアー』で強制的に落ち着かせた。
「わかったなの……。不味くても我慢するなの……」
「ふふ。ご安心ください。今日の料理人は、以前にカラアゲを食べたサンネイラの者ですよ」
「なの?」
「ご満足いただけること、保証しますわ」
「なの! よく考えれば、アリーシャがいれば問題ないなの! アリーシャはクウちゃんさまとは違うの! クウちゃんさまみたいにバカで間抜けで、すぐに暴力を振るうどうしようもない――」
「こほん。ねえ、イル。もしかして、喧嘩売ってるの?」
「ち、ちがうなの! 今のは、今のは――」
「なぁに?」
「今のはイルのことなのお! バカで間抜けなイルを、どうかお許しくださいなの拷問スペシャルは許してほしいのお!」
「変なことしないならしないから。そんな怯えなくていいの」
「なの?」
「うん。安心して」
「わかったなの! クウちゃんさまは最強で無敵で素敵なの! イルはこのことを広く伝えるの!」
「いや、うん。それはしなくてもいいからね?」
「なの?」
「うん。普通に仲よくしようねー」
「わかったなのー! クウちゃんさまの心は空よりも広いなの!」
まったく、疲れる。
私が頭を抱えると、陛下と皇妃様が笑った。
「ははは! 本当にクウは、振り回したり振り回されたりと大変だな!」
「そうですね。微笑ましいですね」
「いろいろと申し訳ありません」
私はとにかく謝った。
同じ精霊としてね、もうホントにね。
「聞いてはいましたけど、精霊の方はみなさん個性的ですね」
私のとなりでセラが笑う。
「はあー。セラー。私、疲れたー」
「大丈夫ですよ、クウちゃん。わたくしがいつでも、クウちゃんのことは支えてあげますから」
「ありがとー、セラー」




