表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1137/1359

1137 セラの言葉は……。





 私はクウ。

 すべてを受け止める、心優しい精霊さんだ。

 私は今、セラの言葉を待っていた。

 それは果たして、「クウちゃんだけに、くう」なのか。

 あるいは、「にくきゅうにゃ~ん」なのか。

 セラは、いったい、そのふたつのどちらかを使って、どんな理屈でラシーダを説得するつもりなのか。

 私にはわからない。

 だけど、セラの表情に迷いはなかった。

 つまり、確信があるのだ。

 故に私は見ていた。

 そして、見事に説得した暁には今度こそ拍手しようと思うのだ。


 セラが言う。


「このことは他言無用に願いますが、スカイはセンセイです。わたくしも剣と魔術の指導を受けてきました。そのセンセイが否とおっしゃるのですから、この件をお受けすることはできせまん」

「……セラフィーヌ殿下の魔術の師匠は、聖女ユイリア様では?」

「待ちなさい、ラシーダ」


 疑問を口にしたラシーダを、父親たる辺境伯が制した。


「殿下、まさかセンセイとは――。あの、センセイなのですか?」

「ええ。そうです」


 セラが微笑をたたえたままうなずく。

 場に沈黙が流れた。


「お父様……。いったい、どういうことなのですか?」

「ラシーダ、残念だが、マリエ嬢のことは諦めなさい」

「なぜですかっ!」

「それがセンセイのご意思だからだ」

「センセイって……。貴女は、誰なんですか?」


 ラシーダが私に目を向けた。


 私はクウちゃん。

 かわいいだけが取り柄の12歳の女の子です。

 センセイではありません。

 と言いたいけど……。

 セラの先生であることは、事実か。


「こほん」


 私は息をついてから、あらためて言った。


「私は蒼穹のスカイ。セラフィーヌ殿下の護衛の1人ですよ。ただし、センセイなのでたまに意見を言うこともあります。それに、こちらのマリエは、帝都でお父さんのお店を継ぐのが夢で、小さな頃から頑張っているのです。あと、優しい子なので、優しいラシーダに冷たい対応をすることができなくて困り果ててもいたのです。わかってあげてください」

「そんなぁ……。マリエお姉さま、そうなのですか……?」

「あ、えっと……。はい……。ごめんなさい……。私、帝都でお店を継ぐのが夢なので他の都市にはちょっと行けません……」


 ついにマリエが自分の言葉で断った。


「ううう……。それなら、最初から言ってくださればぁ!」

「うむ。それはね。今回は、笑って誤魔化すばかりだったマリエにも、けっこう責任があるよねー」


 私は言った。

 考えてみると私たちも、最初からそれを促すべきだったよね。


「そんなこと言われてもクウちゃーん!」

「スカイね」

「スカイー! 私、ただの庶民なんだから、言えるわけないよねー!」

「あははー。マリエが庶民なわけないでしょー」

「ミストね」

「ほら。幻影のミスト。セラの片腕だよね? それにミストは、どれだけ謙遜しても歴然とした中央貴族だよね」

「……うう。でも、確かにそうだよね。ごめんなさい、ラシーダ様。私、ちょっと遠慮しすぎてしまっていて」

「お姉さま……」

「でも、また会えたら嬉しいですね。お友だちとして」

「はい……」


 うつむいてしまったラシーダに、マリエがそっと握手を求めた。

 ラシーダはそれに応じた。


 私は拍手した。

 セラも拍手した。

 辺境伯たちは、さすがに普通に見ていたけど。


「うんうん。一件落着ね」


 セラの肩に座っていたミルも満足顔だ。


「そういえば、ミルは大人しかったね」


 私が笑って声をかけると、ミルはしたり顔でこう言った。


「恋なんて、お姉さんが邪魔するモンじゃないでしょ。静かに見ていてあげるのがお姉さんというものよね」

「なるほど」


 それは、そうかも知れないね。


 かくして。


 辺境伯家での挨拶もおわった。

 庭には関係者しかいないので、飛んで立ち去らせてもらうことにした。


「お姉さまー! お姉さまー! わたくし、社交界デビューしたら必ず大宮殿のパーティーに行きますのでー! そこでお会いしましょうねー!」

「はい! 楽しみにしています!」

「約束ですよー! 約束ですからねー! それまで他の子に、すりすりうにうにされたらダメですよー!」

「いえ、あの……。うにうにはご遠慮ください……」


 というマリエの最後のお願いは――。

 多分、ラシーダには届かなかった。

 何故なら話す内、青空の中に浮かび上がってしまったからね。


 上空で、ようやく私たちは4人だけになった。


「いやー、なんか、今回の旅は、まさに怒涛だったねー」


 私は笑った。


「そうですねえ。今回は、夜の一時しか落ち着く暇もありませんでしたね」

「私も大変だったんだよー。私の愚痴、あとで聞いてねー」

「あはは。いくらでも聞くよー。でも、ラシーダを救えてよかったね」

「うん。それはね。そう思うよ」


 マリエがしみじみとうなずく。


「戦争を防げて、たくさんの人を救うこともできて……。わたくし、今回の旅は、本当に将来を考える機会になった気がします。答えはまだ出ませんけれど」

「答えは、ゆっくりでいいと思うよー。前にも言ったけど、どうするにしても学院を卒業してからでいいんだし」


 セラには、ユイのような前世の記憶があるわけではない。

 経験と知識の積み重ねは、まだまだ必要だと思う。

 いや、うん……。

 本音を言うと、私がまだまだ、セラとはこうして一緒に気楽に遊んでいたいだけなのかも知れないけど。

 私は自分本位の子なのだ……。

 もちろん、セラのことは応援しているけどね……。


「はい」


 セラは笑顔でうなずいてくれた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] セラが落ち着いていたのは、皇女としての矜持なのか、マリエとラシーダのやり取りを見てて、自身がクウちゃんに対して行っている行動を客観視できたからなのか、はたまたそれ以外の理由なのか… […
[一言] マキ餌さんも歴とした中央貴族…。 知ってはいましたが、言われて初めて思い出しました…。 中央貴族派閥の何故かど真ん中にいる、ご令嬢。 しかも各国のパワーエリート層とも昵懇の仲。 これじゃ今…
[一言] 姫様が最後までちゃんとしてる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ