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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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1136 旅の最終日!





 旅の最終日は、朝から大変だった。

 セラの話を聞いた人々が、光の力での奇跡のような癒やしを求めてシャグル邸に押し寄せてきたのだ。

 ただ、これについては、実のところ想定していた。

 なので人々には集まってもらって――。

 セラが精霊様に祈り――。

 精霊様の私が願いを聞き入れて、みんなが最後に「ハイカット」したところで……。

 空の上からバレないように白魔法のエリアヒールをかけた。

 これでよし、なのです。

 さすがに今日は遊びたいので、時間はかけていられないのです。


 しかし、アレだね……。

 ハイカットって、もはや完全に定着しているのね……。

 帝国北方の人々も普通にしているし……。

 もはや否定しようとも思いませんが……。


 それはともかく!


 私たちは早く港湾都市ヴェザに戻って、マリエとミルと合流しなければならない。


 マリエはきっと……。

 うん……。

 お偉い様たちとのオハナシで疲れ切っているだろう……。

 癒やしてあげねば、ね……。


 ただ、私とセラは馬車で出立することになった。

 本当はさくっと飛んで帰りたかったのですが、注目を集めすぎたのです。


 騎乗したシャグル氏を先頭に長い隊列を組んで、私たちはシャグル氏の邸宅を後にした。


 皇女様、ありがとうございましたー!

 皇女殿下ばんざーい!

 物語が本当だったこと、感動しましたー!

 お陰様で健康になれましたー! このご恩は必ずお返ししますー!

 悪党を成敗してくれて、ありがとうございます!

 皇女殿下ばんざーい!

 世直し旅、お気をつけてー!


 大勢の人々がセラに声をかけてきた。

 大人気だ。

 結局、町を出て、街道を進んで――。

 ようやく人気のなくなったところでシャグル氏たち御一行とお別れして――。

 空に浮かび上がるまでに、結構な時間がかかってしまった。

 港湾都市ヴェザへと戻ったのは、お昼近くだった。

 辺境伯家の近くに降りて、門にいた衛兵さんに声をかけると、話は通っていてそのまま中に入れてもらえた。

 お屋敷では、エントランスでマリエとミルが待っていた。

 辺境伯一家も一緒だ。


「おかえりなさいませ、スカイ、セラフィーヌ様。お待ちしておりました」


 マリエが幻影モードで声をかけてきた。

 一瞬スカイって誰のことかわからなかったけど、私のことだね。

 名付けてみたものの、あんまり使わなかった偽名だ。


「ただいま戻りました」


 セラがマリエだけでなく、皆さんにご挨拶する。


 マリエは、とても元気そうだ。

 肌艶もいい。

 そんなに大変ではなかったみたいだね。

 よかった!


 挨拶と短い会話の後、辺境伯からはランチに誘われた。


 本当はすぐにお別れして、町を散策して、いいお店を見つけて……。

 旅の最後に気楽にランチを楽しみたかったのだけど……。


 とはいえ、断るのは失礼だ。

 セラの判断で、快く、ここはご一緒させていただくことになった。

 私にも異存はない。


 ランチは、海の幸をふんだんに使ったコースものだった。

 テーブルにはナイフやフォークが事前にセッティングされていて、1品ずつ料理は運ばれてきた。

 盛り付けは、どれも繊細で上品。

 味も良かった。


 ちなみに昨日の夜、私はシャグル氏のお屋敷でセラと一緒にディナーをごちそうになったけど……。

 そちらで出てきたのは、でんと大皿に乗った大きな塩焼きの魚や、こちらも大皿に乗ったきのこの串焼きなどの豪快でシンプルな料理だった。

 大皿で持ってきて、好きに取って食べる。

 それがシャグル氏たちの最高のおもてなしメニューだった。


 帝都から来た現在の支配者層と、土着の人たち。

 食事を見ても文化の差は感じる。

 上手くバランスを取って、仲良くやっていってほしいものだ。

 まあ、私が心配しなくても、辺境伯は上手くやっていたか。

 お互いの誤解は解けたし、悪党は連行したし、病気も完治したし、しばらくは北地も安泰だよね。


 食事の後は、本当のお別れとなる。

 玄関から庭に出たところで、最後の言葉を交わすことになった。

 まあ、はい。

 私やセラやミルは、さっぱりとしたものだった。

 完全に見ている側です。


「お姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁ! お別れなんて悲しすぎますぅぅぅ! どうかこの地に残って下さいぃぃぃぃ!」


 マリエに抱きついたラシーダが、わんわん泣いている。

 本気の涙だ。


「いえ、あの……。お気持ちは嬉しいのですが、私にはセラフィーヌ様の警護という重要な仕事があるので……」

「ああああああ! お姉さまぁぁぁぁぁぁ! そう言われては、引き止められないではないですかぁぁぁぁぁ!」

「……ラシーダ様。……また、お会いできますから」


 優しく声をかけつつ、マリエが視線で私に助けを求めてくる。

 私は笑顔を返した。


 あ。


 ラシーダが急に泣き止んだ。

 すかさず近づいたメイドさんがその顔を綺麗にする!

 さすがはプロ!

 無駄のない迅速な動きだった!


「セラフィーヌ様。どうかマリエお姉さまを我が辺境伯家に下さい」


 ラシーダがセラに恭しく頭を下げてくる。


「えっと、それは――」


 セラが返答に困って私に目を向けた。

 マリエは必死に、目で断ってと言っている。

 私は笑顔を返した!


「幸いにも、お兄様の結婚相手はまだ決まっておりません。マリエお姉さまであれば相手に相応しいかと」


 ラシーダがそんなことを言う。


「そうなのですか?」


 セラが、兄のライアルと父の辺境伯にたずねた。


「最後までご迷惑をおかけして申し訳ありません。セラフィーヌ殿下」


 兄は謝った。

 謝ってから、こう言った。


「私としては、そのお申し出、受けても構わないと思っておりますが」


 と。

 続けて辺境伯が言う。


「セラフィーヌ殿下の信頼厚き幻影のミスト殿――いえ、マリエ殿ならば、素性や性格にも問題はありますまい。当家としては、前向きに話を進めさせていただいても良いと思っております」

「わたくしとしては、当人同士の問題だと思いますし、昨夜でそういう話になっているのであれば……」


 セラは、そんな風に答えた。

 常識的な返答だろう。


「やりましたよ! ちゃんと許可が下りましたよ! お姉さまっ!」


 ラシーダが明るい声を上げる。


 マリエの助けを求める目線が、いっそう悲壮になった!

 断ってと叫んでいる!


 私は、つい言いそうになった。


 おめでとう。


 と。


 ここで拍手して祝福すれば……。

 さぞかし面白い光景が見られるに違いはなかった。

 間違いなく、この旅で一番の出来事となるだろう。


 ただ、うん。


 さすがに理性が働いて、私はやめておいた。


 完全なるお遊びで、祝福していい話ではないよね、どう考えても。


「ダメです。マリエには大切な仕事があるので、今日で帝都に帰ります。残念ですがそのお話はお受けできません」


 私は、ハッキリと言わせていただいた。


「……セラフィーヌ殿下が良いと言っているのに、どうして部下の貴女がそれを否定してくるのですか?」


 ラシーダが憮然とする。


「ダメなものはダメです。あきらめなさい」

「だからどうして貴女が!」


 ふむ。

 どうしてと言われると、困るね。

 確かに理由がない。

 これが悪党相手なら問答無用でスリープクラウドな場面なんだけど……。

 さすがに今それは、場違いな対応だよね……。

 どうしたものか。

 ラシーダに睨まれて、私が対応に苦慮していると……。


「それは決まっていますよ、ラシーダさん」


 セラが前に出た。


「セラフィーヌ殿下……? それは、いったい……」


 ラシーダの視線がセラに向いた。


「ここにいる蒼穹のスカイが、わたくしよりも偉い者だからです」

「偉い者、ですか……?」

「ええ。そうです」

「失礼ですが、意味がよくわかりません」

「偉い、すなわち、上位ということです」

「それは……。殿下は、わたくしをからかっているのですね……?」

「いいえ、からかってなどおりません」

「本当に意味がわかりません。殿下より偉い者など、それこそ皇帝陛下や皇太子殿下しかいないではありませんか」

「ふふ。そう思いますか?」


 セラは余裕の態度を崩さない。


「はい。当然です」

「では、教えて差し上げましょう」


 セラはいったい、どうするつもりなのか。

 何を教える気なのか。

 目が合うと、任せておいて下さい、と言わんばかりに微笑んできたけど。


 まさか……。


 ついにここで、炸裂させちゃうのだろうか……。

 ずっと温存してきた最終兵器……。


 クウちゃんだけに、くう。


 を……。


 あるいは、にくきゅうにゃ~ん、だろうか……。


 私は緊張しつつ……。

 他に手もないので、静かに成り行きを見守ることにした。







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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読んでます! 今回の旅はマリエさんの最大危険な旅なのだろうか? 襲われたり、懐かれたり、結婚話まで! 自宅の両親が聞いたら(笑)
[一言] マリエに何もなかったようで安心した というか、何やかんや色々起こってるのはクウちゃん様のせいだし……
[一言] セラは新技、次回に続く、を覚えた! …どんな敵よりも、クウちゃん様史上最大の精神ダメージになってません?
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