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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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1129 旅の夜




 夜。


 私たちは、港湾都市ヴェザにある高級ホテルの一室にいた。

 なんと最上階のスイートルームだ。

 辺境伯が手配してくれた。


 辺境伯には、屋敷での宿泊も勧められたけど――。

 それについては断った。

 病み上がりの辺境伯に接待させるわけにはいかないし、私たちも純粋にのんびりとしたかったので。

 ラシーダも熟睡して起きてこなかったしね。


 部屋からは、港湾を一望することができた。

 実に絶景だった。

 ヴェザは、大陸東岸海洋都市群との帝国における貿易拠点であるだけではなくて、観光地としても北方では人気の場所だという。

 ホテルがあるのは、観光地としての港の近くだった。

 港とその周辺は美しく機能的に整備されていて、波止場にはたくさんのヨットやクルーザーが停泊している。

 いわゆる、マリーナだね。

 周囲には、夜でも魔石の明かりが灯っている。

 通りにはカフェも開いている。

 見下ろしているだけでも、オシャレな気分に浸れるような場所だ。


 私は窓際の椅子に座って、そんな景色を見ていた。

 セラとマリエも一緒だ。


「……わたくし、まったく信じられませんが、帝都から出て、まだ1日すら過ぎていないんですよね」

「だねえ。濃密すぎて、記憶が混乱するよねえ」


 セラのつぶやきに、マリエがあくび混じりの声で同意する。

 ちなみに夕食は食べおわっている。

 ホテルのレストランで、豪華にいただいた。


「いろいろあって楽しかったわね!」


 ミルは定番のセラの肩に座って、上機嫌に足をぶらつかせている。


「おわってみればねー。その時には必死だったけど」


 マリエが笑って、再びあくびをする。


「かまー?」


 私はからかってたずねた。


「かまかま」


 マリエが言葉をつないだ。


「……それって、どういう意味なんですか?」


 セラが首を傾げる。


「まあ、言ってみれば、マリエにとってのクウちゃんだけに?」

「なるほど。そうなんですね」


 私が教えてあげると、セラは納得した。


「違うからねー?」


 マリエが否定してくる。


「あ、違うんだ?」


 てっきりそうかと思っていたけど。


「かまは言うなれば――。そうだねえ――。なんだろうねえ……。確かに今日、私はかまのお陰で助かったけど……。練習もしちゃったけど……。どうせやるなら健康道場の、普通の格闘技がいいかなぁ……。だって私は正真正銘の普通の子だしねぇ……。あははー……」


 薄く笑いつつ、マリエはまぶたを閉じて――。

 こてり、と、肩の力をなくした。


「寝ちゃいましたね」

「だね」


 しばらく待っても起きる様子がなかったので、私はマリエを抱きかかえてベッドに寝かせてあげた。

 ベッドはふわふわだ。

 心地よく眠ることができるだろう。


 私は窓際の椅子に戻った。


「……マリエさんはすごいですよね。何があっても元気で」

「あはは。だねー」


 マリエは本当に、自分で言った通りに普通の子だ。

 皇女様でもハイエルフでも竜でも精霊でもないし、魔術や武術の才能に長けているわけでもない。

 私とはパーティーで偶然に出会って、映像屋さんってことでユイの撮影なんかをお願いして――。

 そのまま仲良くなった。

 自然に友達として付き合ってくれていた。

 うん。

 今や私にとっては、本当に大切な普通のお友達だ。

 今回も、大変な目に遭ったみたいだけど……。

 殺されかけたんだよね……。

 でもマリエは、クウちゃんがいれば平気平気♪って、気にすることもなく遊んでくれているんだよね……。

 …………。

 ……。

 よし。

 私は密かに決意した。

 これからも良いお友達でいるために!

 精一杯、私も頑張ろうと。


「ねえ、セラ。頑張ろうねっ!」

「はいっ! クウちゃん! 頑張りましょう!」

「私はー?」

「ミルもね」

「ミルちゃんも頑張りましょう!」

「もちろんよ! 任せておいて!」


 おー!


「で、これからどうしようか。マリエは寝ちゃったけど、セラとミルも明日に備えて今日は寝ておく?」


 時刻は、午後8時を回ったところだ。

 夕食はレストランで取ったし、シャワーも浴びた。


「クウちゃんはどうするんですか?」

「んー。私は今夜は、まだ眠くないんだよねえ」

「わたくしもです。というか、小休止したら遊びに行くかと思っていました。海の近くを散歩とかどうですか?」


 私は精霊の服。

 セラは、出発の時に着ていたジャケットとズボン姿に戻っている。


「いいね。行こうか」

「はいっ! ミルちゃんも行きましょう」

「はーい! 夜にも何か、すごい事件とかあるといいねっ! また誰か襲われたりしていないかなー」

「それはなくてもいいからね」


 私はキチンと否定した。


「えー。なんでー」

「今日はもう十分に頑張りました。マリエだって疲れて寝ちゃったでしょー。マリエがいないと事件の時に大変だよー」

「それもそっか。マリエがいないと大変だよね」

「うんうん」


 なにしろ、アレだ。

 真っ先に巻き込まれてくれるから、こちらとしては楽でいい……。

 マリエは最高の、餌役なのだ……。

 と……。

 思わず思ってしまった……。

 わたくしことマリエの友達、クウちゃんさま12歳でした。


 いかんいかん!


 マリエには迷惑をかけないようにしないとね!








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― 新着の感想 ―
[良い点] 『あなた、そこの悪い精霊にエサ扱いされてますよ』と 耳元で悪魔が囁いても不思議無いくらいに、このところの マリエさんの不憫さが…良い感じです! [一言] マリエさんは早々にグレるか、まずは…
[気になる点] ノカ―スの顛末は皇帝か宰相の今回の回想編で少し書いて欲しいですね。 [一言] 「マリエは最高の、餌役」・・・ クウちゃん様の暗黒面しかと見ましたぞw  
[良い点] いつも楽しく読んでます! あ!クウちゃんもそんなこと思うのね(笑) ま〜否定できない実績はあるしね!
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