1127 やりすぎたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
やりすぎたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
みんなに祈られて、私は冷静になった!
いや正解には冷静じゃないけど、かなり焦っているのですけれども!
私、クウちゃんさま、12歳。
必殺の芸が大いにウケて……。
どんどん気持ちよくなってしまったのです……。
それでつい、祝福をしてしまったのですが……。
その時にイメージしたのが、この世界にやって来た時の、溢れたアシス様の光みたいな感じだったのです……。
ここにいる兵士のみんなに祝福をーってノリで……。
はい。
見事に、そうなってしまったのです。
さすがは私なのです。
と、自分に感心している場合じゃなぁぁぁぁぁい!
考えねば。
即座に決断して、この状況からどう逃げるのかを決めねば!
……スリープクラウドしちゃう?
いつもみたいに寝てもらって、ふわふわーっと逃げちゃう?
それがいい気がする……。
今のは夢。
今のはただの錯覚。
白昼夢。
そういうことにしてしまうのがいい気がする。
でも、そうしちゃうと……。
セラに責任が回る。
さすがの私も、セラにこの騒動の丸投げはできない。
何故ならば……。
ものすごく悪化する気がする!
クウちゃんだけに、くう、とか、大合唱されるのだけは避けたい!
普通に考えれば、そんなことあるはずがない、とは思う。
だけど実際、南の島ではそうなった。
セラには光の力があるのだ。
セラの光の力はまだ未熟で、ユイやナオほどではないけど、それでも光のオーラは人に影響を与える。
セラの望んだ方向に話を進みやすくするのだ。
故に、セラに任せることはできない。
ここで私がなんとかせねばならない。
逃げることは許されないのだ。
ふむ。
私、ふと思う。
考えてみると、私にも光のオーラってあるよね。
使ってみる?
オーラでお願いしてみる?
やってみた。
光の魔力を外に解き放って――。
「みんなー! お祭りだよー!」
って、叫んでみた。
どうだろ……。
私はおそるおそるまわりの様子を見た。
すると……。
祭りだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
太鼓を鳴らせぇぇぇぇぇぇ!
笛を吹けぇぇぇぇぇぇぇぇ!
大勢が叫んだ!
祭りが始まった!
私はアイテム欄から大きなテーブルを出した!
でーん!
私特製の、巨大な円卓テーブルだ!
その上にアイテム欄から、山程の帝都の食べ物を取り出して置いた!
ででーん!
それは以前に、オダウェル商会で大量購入した品々だ!
飲み物もあるよ!
お酒はないけど!
とにかく大放出の大盤振る舞いだぁぁぁ!
みんな、好きなだけ食べていいからねっ!
…………。
……。
その後、狂乱騒ぎの兵士たちを残して、私は空の上に浮かんだ。
「よし……」
私は額を手の甲で拭った。
汗は出ていないけど、私は頑張ったのだ。
そして、決めた。
光のオーラを使うのは、もうやめよう。
と。
ミルも飛んで、私のところに来た。
「ねえ、クウさま。何やってんの?」
「あ、えっと。お祭り?」
「これ、お祭りなんだ? なんかみんな、発狂してない?」
「あ、うん」
そうですね……。
この惨劇は、アレだ……。
ボルケイノ24スペシャルを飲んで、白騎士のみなさんを鍛えまくった時に似ているね……。
あの時には私が率先して発狂していましたけど……。
ただ、うん。
前向きに考えれば!
あの時みたいに無意識に24時間オーラを当てたわけではないのだ!
今回は、ほんの一瞬だけなのだ!
ちゃんと加減したのだ!
なので、やがて、ふんわりと元に戻ることだろう!
うむ!
「とにかく楽しそうでいい感じね!」
「そだねー」
ミルの前向きな発言に、私は大いにうなずいた。
私は良いことをした!
みんな楽しそうだし、平和そうだし、それが何よりなのだ!
私はいったん、港湾都市にある辺境伯のお屋敷に戻った。
ラシーダの兄ライアルと豪族のまとめ役シャグル氏との話し合いがどうなったかを確かめるためだ。
セラが上手くまとめてくれているといいけど……。
最悪、クウちゃんだけに、でもいいから。
まあ、うん。
辺境伯も目覚めているわけだし、さすがにクウちゃんだけに、はないか。
ないよね。
みんなでやっていたら私は泣こう。
うん。
泣いてもいいよね、私!
なんか正直、ものすごくやっている予感がしてきた!
お屋敷に着いた。
セラは、お屋敷の中にいるようだ。
光の魔力でわかる。
ただ、私が最初に空の上から発見したのはマリエだった。
マリエは1人、なぜか庭にいた。
どうしたんだろう……。
マリエのまわりには、誰もいない。
ラシーダすらいなかった。
高度を下げて様子を見ると、マリエは何故か拳法の練習をしていた。
しかも、うん……。
その動きに私は思い切り見覚えがあった。
「かま! かま、かま、かま!」
マリエの声が届く。
そう。
マリエがやっているのは、ぎこちない動きながらも蟷螂鎌首流武術だった。
マリエはラシーダを助ける際、咄嗟にカマキリ拳法を思い出して真似して、一度は難を逃れた。
それで、目覚めたのだろうか。
「マリエ、熱心だねー」
「あわわわわ! くく、クウちゃん!? それにミルちゃんも!」
「うん。ただいまー」
「お、おかえり。そっちはどうだった、大丈夫だった?」
どもりつつ、照れた様子でマリエは言った。




