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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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1121 閑話・マリエは様子を見ている




 馬車が無事に町を離れて、私はほっとしました。

 私はマリエ。

 今は旅の最中。

 ラシーダ様を殺そうとしていた悪の貴族は、あっさりクウちゃんの手で連れて行かれました。

 追ってくる者はいません。

 今の私は、なぜかハロでもマリエでもなくミストと呼ばれて、皇女セラフィーヌ様の片腕とか言われちゃっています。

 下手をすると、敵が現れたら私の出番になってしまいます。

 本当の私は、ただの一般人なんです。

 庶民のマリエなんです。

 敵と戦うなんて無理です。

 死ねます。

 なので本当に、残された兵士の人たちが逆上してこなくてよかったです。

 助かりました。


「あーあ。つまんないのー。だーれも来なかったねー。せっかく、私とマリエの最強コンビ再びだったのにさー」


 妖精のミルちゃんが、セラちゃんの肩の上でぼやきます。


「あの、マリエというのはハロお姉さまのお名前ですよね? わたくしもマリエお姉さまとお呼びしても?」

「ミストでお願いします」


 隣に座るラシーダ様の申し出に、私はニッコリと答えた。


「でも、ミルさんは普通にマリエって」

「ミストでお願いします」

「公の場でなければ……」

「ミストでお願いします」

「今だけ、とか?」

「ミストでお願いします」


 私は繰り返しました。

 すると、あ。


「うう……。わたくしだけ、ダメなのですね……。わたくし、お姉さまから信頼されていないのですね……」


 ラシーダ様が涙目になってしまいましたぁぁぁ!


「わかりましたぁ! いいですから、泣かないでください! でも名前は秘密なので公の場では呼ばないでくださいね」

「はいっ! マリエお姉さまーっ! はぁぁぁぁ! すりすりー」


 ああ、またくっつかれてしまいました。

 もういいんですけどね。

 私は空気になります。

 ただのクッションです。


「ラシーダさん、まだ油断はできませんよ。襲撃の可能性が消えたわけではありません。お父君を救うまで気を引き締めて行きましょう」

「――はい。そう、ですよね」


 セラちゃんの言葉でラシーダ様が私から離れて、姿勢を正してくれました。

 ありがとう、セラちゃん!

 ただ、はい。

 私が心の中で感謝していると……。


「何かあった時には、頼りにしていますからね、幻影のマ――ミスト」

「私もいるしねっ!」

「はい。ミルちゃんも頼りにしています。2人とも、お願いしますね」


 なんて皇女様スマイルで微笑まれましたが。

 冗談ですよね……?

 セラちゃんは当然、私がただの庶民だと知っていますよね?


 ちなみにクウちゃんは、まだ戻ってきません。

 私としては、クウちゃんが戻ってくるのを、どこかに隠れて待っていた方がいいんじゃないのかなー。

 と思うのですが……。

 それでは港湾都市への到着が遅くなります。

 さすがのクウちゃんも、ダンジョンから出てヒトを運んで帝都まで行くには時間が必要です。

 事情の説明も必要でしょうし。


 なので、ここは私もしっかりと気を引き締めて……。

 まあ、はい。

 引き締めたところで私には何もできないんですけれどねっ!

 いやでも、せっかくだし、新しい必殺技とか考えておこうかな……。

 どうせならカッコいい方がいいよね……。

 必殺、マリエスペシャル! とか、いいかも知れない。


 いろいろ考えていると――。


 あ。


 馬車が止まりました。


 御者を努めているラシーダ様のメイドさんが声をかけてきます。


「お嬢様、皆様――。騎馬隊が来ます」

「……港湾都市の方から、ですよね?」


 セラちゃんが緊張した面持ちでメイドさんに確認します。


「はい。左様でございます」

「では、敵ということはないでしょう。馬車から降りて迎えましょう」


 馬車を街道の脇に止めます。

 私たちは馬車から降りました。


「もしかすると、お兄様かも知れません」


 ラシーダ様の予感は的中しました。

 やってきたのは、騎士を引き連れたラシーダ様のお兄様でした。

 年齢は20歳前後でしょうか。

 身だしなみの整った、眉目秀麗な青年貴族です。


「ラシーダ! 無事だったか!」


 馬から降りて青年が叫びます。


「ただいま戻りました、お兄様」

「何を平然としているのだ、おまえは! この非常時に家を抜け出して、どれだけ心配したと――」


 ここで彼の目がセラちゃんに向きます。


「失礼した。私はビナム辺境伯家が長子、現在は領主代行を務めている。名はライアルと申す」

「バスティール帝国第二皇女、セラフィーヌです。この度はラシーダ嬢からの救援依頼を受け、急ぎ、駆けつけさせていただきました」

「それは――。本当の――。いえ、失礼」


 ライアル様がラシーダ様にちらりと目を向ける。


「はい。セラフィーヌ様が、光の力を以て治療して下さるのです」


 ラシーダ様が言います。


「しかし、この北方に、どうやって……」

「ちょうど旅をしていましたから。ラシーダ嬢とは偶然に出会いました」

「旅――。偶然、ですか――」

「ええ。精霊様のお導きによって、かも知れませんが」


 セラちゃんが言います。


 私は最大限に空気になりつつ、ライアル様の反応を窺います。

 セラちゃんが光の力を持っていることはすでに広く知られていますが、信じられているかと言えば――。

 それは物語の話だろう、と思っている人も多いようです。

 なにしろ光の力は特別です。

 世間では、聖女ユイリア様だけのものとして、ずっと思われてきました。








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― 新着の感想 ―
ウザい子供だわ
[一言] 推しきられたかあw
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