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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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111 かしこい精霊さんのナイスなアイデア




「……あのー、一応、言っておきますけど、私はかしこい精霊さんだからね?」

「いいからおまえは黙っていろ」

「なんでー!?」

「ハァ……。余計なことを言うからだ」

「どんなよー!?」

「今先程の自分の言葉をよく思い出してみろ」

「んー?」


 お兄さまに言われて、唇を尖らせながらも思い出してみる。

 と言っても。

 そんなに言葉は発していない。


「私はかしこい精霊さんって言っただけだよ? 変なことなんて言ってないし」

「今の自分の言葉をよく噛み締めてみろ」

「だーかーらー」


 わたしは。

 かしこい。

 せいれいさん。


 あ。


「なるほど」


 精霊ってことは秘密だったね。


「でも、いいんだよっ! 今はそんなことはっ!」


 私は浮き上がって、正面からお兄さまの顔を睨みつけた。


「だから、浮くな」

「精霊なんだから浮きますよーだ」

「おまえというやつは。おまえの正体は秘密だと父上からも言われているだろう」

「いいんです。私がいいと言ったらいいんです」

「いいから床に降りろ」

「やーだー!」


 頭を押さえつけられて、私はもがいた。


「……カイスト、話が進まないからもう気にしなくていいぞ。俺たちはそもそも何も見ていない。なあ、みんな」


 ウェイスさんに問われて、生徒会室にいた人たちが一斉にうなずいた。

 なかなかの連帯だ。


「お兄さまの仲間、優秀なんだねー」

「……当然だ」


 ふう。

 ようやく手をどけてくれた。

 強引に振り払おうと思えばできるんだけどさ。

 なにしろ相手は皇子様。

 これでも気は使っているんだよね、私。


「それでアイデアとは何だ?」

「聞きたい?」


 たずねたら、思いっきり睨まれた。


「……お兄さま、イライラしてばかりだと疲れますよ?」

「誰のせいだと思っている?」

「さあ」


 そんなこと聞かれてもわからないよね。


「すぐそばにいるが?」

「そうなの?」

「心当たりはないか?」

「さて」

「今、俺の目の前で首を傾げているヤツだが?」


 それってもしかして。


「私?」


 とか?


「わかっているなら聞くな」


 え?

 何?


 どういう意味?

 ジョーク?


 そんな感じじゃないよね、本気で呆れた顔してるし。

 本気で言ってるよね、これ。

 私がこんなにも気を使っているのに。


 こんなに可愛くて無害で清楚で可憐で愛嬌抜群の私を捕まえて、何を言っているのだろうねホントに!


 どうしてくれようね、もうホントに!


「おーい。話を進めてくれー。それで、クウちゃんのアイデアって何だ?」


 ウェイスさんにも呆れた顔をされてしまった。


「あ、うん。そうだね……」


 いかんいかん。

 今は喧嘩している場合ではなかった。


「ではではっ! 名付けて、タイトルはこれです!」


 パンパンと手を叩いてみんなの注目を集めてから、私は言った。


「全部相手にやらせた上ですべて受け止めて、

 これが精霊の加護だとわからせてやろう作戦!」


「……タイトルも何も、内容そのままのような気がするが?」


 お兄さまがまた呆れた顔をする。


「ふふ。これが今の流行りなんですよ。タイトルで理解可能なのです」

「どこでどう流行っているのかは知らんが、つまり、おまえがすべてやるから任せておけということか?」

「すべてではないですけど。まあ、だいたいは」


 詳しく説明する。

 と言っても、難しいことではない。


 まずは、お姉さまの防御強化。

 すでに麻薬はすり替えが済んでいるけど、気づかれるかも知れないし他にも毒があるのかも知れない。

 なので、耐性ポーションを飲んでおいてもらう。

 品質は上級。

 最上級品は素材がなくて無理だけど、上級でも錬金熟練度80のアイテムだ。

 低レベルの敵からの状態異常ならオールレジストすることができる。

 この世界でどれくらいの効果があるかはわからないけど、今までの経験から考えるに十分な効果があるはずだ。


 さらに私とパーティーを組む。

 パーティーを組めば、お姉さまの状態はモニタリングできる。

 あと位置もマップに表示されるので、何かあっても即座に対応が可能だ。


 ブレンダさんたちには強化魔法をかける。

 目には目を歯には歯を。

 報復律だ。

 自分でいうのも何だけど、私の本気の強化魔法がドーピングポーションなんかに効果で負けるはずがない。

 2人には正面から堂々と相手を打ち負かしてもらおう。


「――と。

 こんな感じなんだけど、どう?」


「……おまえのことはセラフィーヌから聞いてきたが。

 常識の枠外の話を、本当に、いともたやすいことのように言うものだな」


「へー。セラと普段のお話とかするんですね」

「当たり前だ。俺は兄だぞ」

「へー」


 実は優しいところもあるんだねー。

 セラとおしゃべりするところを想像したら、ニマニマしてしまうね。


「……何が言いたい?」

「べっつにー」


「おい、おまえら、また話を脱線させるつもりか? 俺たちは、大切な妹殿下のために真面目な話をしているはずだが?」


「そうだな。すまん」


 素直にお兄さまが頭を下げる。


「お兄さまって、絶対者気取りじゃないのは立派ですね」

「おまえは俺を何だと思っている?」

「だって皇子だよね」

「フン。わかっているのなら敬え」

「……ものすっごく気を使っていますけど、私」

「どこがだ?」

「ここです、ここっ!」


「だからおまえらは、いちいち話を逸らすな! 特にクウちゃんは少し考えろ!」


 ついにウェイスさんが怒った。


「すまん」

「ご、ごめんなさいっ!」


「……ともかく、だ。クウちゃんの提案が実行可能なら名案だと思う。勝つだけではなく相手の気勢を大いに削ぐこともできるのが素晴らしい。とはいえ――」


 ここでウェイスさんは言葉を切った。


「――本当にできるのか? さすがに言葉だけで信用するのは無理だ」

「ですよねー」


 それはわかる。

 当然だろう。


「というわけで強化魔法をかけてあげます! あわてて動いちゃダメですからね、怪我をしちゃいますので」


 緑魔法の『身体強化』を、お兄さまとウェイスさんにかけた。

 溢れる力に2人が顔色を変える。


「クウ――。これは――」

「身体強化の魔法だよ。ゆっくりと動いて、確かめてね」

「あ、ああ……」


 少し怖気づいた様子のお兄さまの脇で、早くも順応したウェイスさんがシャドーボクシングを始める。


「カイスト! すげぇぞこれ! 見ろよ!」


 目にも留まらぬとはまさにこのこと。

 残像すら生まれるような速さでウェイスさんは動いている。


「どう? 平気だよね?」

「ああ! これならオーガでも殴り倒せそうだ!」


 そんなわけで作戦決定。

 実行は私。

 お兄さまたちにはサポートと事後処理をお願いすることになった。

 ありがたい。

 私、実行は得意だけど、事後処理は苦手だし。


 倒してざまぁ。

 だけでおわる問題ではないしね。


 むしろ、ざまぁした後にどうするかの方が本番だと思う。


 相手をひたすらに落とすのか。

 適度なところでバランスを取るのか。


 支配を目指すのか。

 融和を目指すのか。


 私にはとても無理だ。


 すべてお兄さまたちにおまかせしよう。


 あ、その前に。


「ねえ、そういえばお姉さまはどこにいるの?」


 本人にも伝えないとね。







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[良い点]  わたしは。 [気になる点]  かしこい。 [一言]  せいれいさん。
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