1093 ゴレくん2号!
「クウちゃーん! お帰りなさいっ!」
「ごめんセラ! またあとでー!」
「あああああああ! クウちゃぁぁぁぁぁん!」
大宮殿で執事とメイドの皆さんにお兄さまたちを引き渡して、走ってきたセラに手だけ振って、私は再び転移した。
行く先はもちろん、竜の里。
予定より1日遅れてしまったけど、フラウとエミリーちゃんを迎えに行かねばならないのだ。
竜の里のホールに入ると……。
「うおおお……」
思わず私は声をもらした。
なんと、身の丈5メートルはあるストーン・ゴーレムがいて、私の姿を見つけると両腕を掲げて足踏みしたのだ。
「クウちゃん! 妾のゴレくん2号なのである! どうであるか!」
「うん。すごいねー」
「ふふー。クウちゃんが来たら吠えるように命令したのである。声は出せないが吠えているのである」
「すごいすごい!」
私は拍手した。
フラウのとなりにはエミリーちゃんもいる。
「クウちゃん! わたしはこれっ! ハトちゃん、石になったよ! 大きくはできなかったけど……」
エミリーちゃんの手のひらには、ハトのストーンゴーレムが乗っていて、翼をパタパタとさせていた。
「すごいすごい! 素材を固くするだけでも大変だったでしょー」
「うん。大変だった」
「エミリーはよく頑張ったのである。さすがはクウちゃんの一番弟子なのである」
今や完全にフラウの一番弟子だと思うけど、エミリーちゃんも誇らしげにしているので気にしないで褒めてあげた。
ワイバーンの件で迷惑をかけたメルスニールさんとも挨拶する。
今後、モルドとのやりとりで中心となってくれるヒトだ。
私からもあらためて、お願いしておいた。
「それにしてもごめんね、1日遅れちゃって」
「事情はすでにゼノから聞いたのである。クウちゃんが気にすることではないのである」
「ありがとー」
あとでゼノにも感謝しておこう。
「ねえ、クウちゃん」
エミリーちゃんが、どこかおずおずと話しかけてきた。
「ん? どうしたの、エミリーちゃん?」
「わたしね、ゼノちゃんから聞いたの」
「うん。なにを?」
「クウちゃんって、御主人様がほしいの? マゾの子ってどういう意味なの?」
「え」
ゼノめ、余計なことを!
あとで魔力ビリビリしてやる!
すべて誤解であることは、ちゃんと説明しました。
エミリーちゃんはわかってくれました。
さすがは我が一番弟子なのです。
ちなみにゴーレム作りは、私がプレゼントした3つの『心核』を使って、他の竜の人たちも挑戦していたけど……。
残念ながら、5日では成功に至らなかったそうだ。
「クウちゃん、できれば皆にもクウちゃんの『生成』を体験させてやってほしいのである。妾が確信するに、クウちゃんの導きがなければゴーレム生成は不可能なのである」
「うん。いいよー」
私は快く応じてあげて……。
それから、ずらりと並んだ竜の人たちに、それぞれ3度ずつ、生成を体験させてあげた……。
うん、はい。
まさか、全員が来るとは思いませんでした……。
結局、フラウとエミリーちゃんを我が家に送り届けて、大宮殿に戻ったのは昼近い時間になってしまった。
いつものように『帰還』の魔法で願いの泉のほとりに出ると、
「クウちゃんっ! 今度こそおかえりでいいんですか?」
セラが再度、明るい声で出迎えてくれた。
「うん。ただいまー。フラウとエミリーちゃんも連れてきたし、やっと一段落ついたよー」
「2人のゴーレム生成は上手くいったのですか?」
「フラウは大きなの作ってたよ」
「すごいですねっ!」
「だねー」
「クウさまー! おそーい!」
セラの頭のうしろから、羽をパタつかせて小さな妖精のミルが現れた。
「ミルもおかえりだね。アンジェとスオナも無事に帰った?」
「当然よ! 何と言っても、このミルお姉さんが面倒を見てあげたんだから! トラブルなんてたいしたこともなかったわ! もちろんアクアも無事よ! 今はスオナのところだけど」
「そかー。ありがとねー」
「アクアちゃんと言えば、水の精霊様のご加護を得られて、なんとついに、しゃべれるようになったんですよ!」
「へー。応えてくれたんだねー」
「クウさまの名前は出してないからねっ!? 主さまの紹介で来ましたって言っただけだからー!」
急に必死になってミルが弁明する。
私は別に名前くらい使ってくれてもよかったけど、どうやら禁則事項になっているみたいだ。
ちなみに主さまとは、ゼノのことだね。
妖精郷は、かつての闇の大精霊イスンニーナさんが作った。
今は娘のゼノが管理している。
「ふふ。実はわたくしも、すごいことをしたんですよ」
「へー。なぁに?」
「ふふー。ふふー」
なんだろか。
セラが珍しく、妙にもったいぶってくる。
 




