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1092 旅の帰路





 翌朝、私たちは朝食をいただいて、それからモルドを出立する。

 帝都に帰るのだ。

 ウェイスさんとブレンダさんも一緒だ。

 2人はモルドが故郷だけど、十分に堪能できたし、滞在はせずにこのまま私たちと帝都に戻るそうだ。


 お見送りには辺境伯夫妻とラーラさん、それにタイナが来てくれた。

 場所は、お屋敷のホール。

 魔法で帰るので、最低限にさせてもらった。


「タイナはクウちゃんとは特に仲が良さそうだったからな。本人も見送りたいというし連れてきてやったぞ」


 ラーラさんは言うけど、タイナと普通に手を繋いでいるのはラーラさんだね。

 いつの間にか、完全に仲良しだ。

 私は無粋なことなんて言いませんけど。


「マゾの子には、本当にお世話になった。私はマゾの子のおかげで、随分と強くなれたと思う。ありがとう」

「ううん。私も楽しかったよ」


 次に会うのは、いつか。

 下手をすれば数年後だ。

 その時には、すっかり成長して、立派な青年に見違えているのだろうか……。

 それとも、さらに素敵なオトコノコになっているのだろうか……。

 タイナとの再会は、とても楽しみだ。


「この数日間は、まさにマゾの子祭りだった。また来いよ! モルドはいつでもマゾの子を歓迎してやるからな!」

「はい。その時には、またよろしくお願いします」


 辺境伯に豪快に笑われて、私はうなずいた。

 マゾの子というのは、もう気にしない。

 だって、冷静に考えてみると……。

 クウとして名前が広まるよりは、よっぽどいいのです。

 マゾの子は、たまたま同じ髪の色をした、旅のエルフ。

 うん。

 断じて帝都在住のクウちゃんさま12歳ではないのだ!

 別人にせねばならないのだ!


 夫人とは穏やかに握手を交わした。


「ワイバーンの幼子については本当に助かりました。クウちゃんのおかげで竜族とも縁が持つことができました。ありがとうございました」

「いえー。仲良くしていってもらえると私も嬉しいです。問題があれば遠慮なくうちの工房にご相談ください。遠いですけど」

「ええ。そうさせていただきます」


 お兄さまたちも、それぞれ、別れの言葉を交わす。


 モルドは聞いていた通りの土地だった。

 暴れん坊が多くて、なんでも喧嘩で解決したがる、物騒な土地柄。

 合わない人にはとことん合わないだろうけど……。

 私には、けっこう水が合った。

 楽しかった。

 芸をする人も多かったしね!

 辺境伯の一発芸「カメ」もなかなかのものだった。


「では!」


 転移!


 私は、いつものマーレ古墳に飛んだ。

 次に黒魔法の『離脱』。

 ダンジョンから出る。

 外にいた兵士の人に挨拶して、すたすたと立ち去る。

 兵士の人から止められることは、すでにない。

 完全に顔パスだ。


「ここからはどうします? 帝都まで走ります?」


 それもまたお約束なので私はたずねた。

 するとお兄さまが言った。


「今回は馬車を借りよう。すまん、正直、立っているだけで限界だ」

「そうですわね……。まだ昨日の疲れが残っていて……。もっと寝ていたかったのですけれど……」


 お姉さまの口からはあくびがこぼれる。

 ウェイスさんたちもフラフラだった。


 私は早速、馬車を借りるために走った。

 今回、帰路の馬車はお願いしていない。

 だって、うん。

 絶対に走って帰るものだと思っていたから。

 なので普通に借りる必要があった。

 あればいいけど……。

 幸いにも、馬車のターミナルでチャーターすることができた。

 普通の運送屋さんだった。

 幌がついているだけの、シンプルな馬車だ。

 相手が学院生、しかも貴族とあって御者さんには怖気づかれたけど、不敬とかはないからと約束して乗せてもらろった。


 かたこと。


 かたこと。


 馬車はゆっくりと街道を進んだ。


 お兄さまたちは、みんな、荷台でぐっすりだ。

 まったく無防備な。

 とは思うけど、私のことを信頼してくれているのだろう。


 ちなみにゼノは先に帰った。

 たぶん、もうアリスちゃんのところだろう。


「あー。しまったー」


 ここで私はフラウとエミリーちゃんのことを思い出した。

 2人も迎えに行かねば。

 予定より一日遅れてしまったので、心配させているかも知れない。

 まあ、とはいえ……。

 まずは、お兄さまたちを送ろう。


 私はみんなの寝顔を見た。


 私は、久しぶりに22歳、今は23歳か――。

 の自分に戻った気がする。

 普段は年上として接しているお兄さまたちの寝顔は、すごく年下に見えて、なんだか可愛らしい。

 つい、口元がほころんでしまう。


 普段はもう完全に、我ながら12歳なのにね、私。

 バカなことをやって、大騒ぎばかりしている。

 楽しいからいいけど。

 今回も、またハッチャケてしまった。

 マゾの子の話、早く消えますように!


 こうして――。


 お兄さまたちとの冬休みの旅行はおわった。






お読みいただきありがとうございました! お兄さまたちとの冬休み編はこれにて終了です。

この後は閑話を挟んで、セラとマリエとの北方旅行編となります。

リアルはすでに4月になろうとしていますが、クウの冬休みはまだ続きそうです。

年末には、エミリーとファーが頑張る獣王国編も予定していたりします。

よかったらおつきあいください!


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― 新着の感想 ―
クウちゃん!冒険者ギルドのノルマを忘れずにね!
[一言] モルドにマゾの子像立つんかな…… 今後も色々あるようです楽しみに待ってます
[良い点] いつも楽しく読んでます! なんだろう、セラ様とマリエちゃんの旅行は問題が起きそうでドキドキしてる(笑) まだ、エミリーちゃんとファーさんのほうが安心感あるのはなぜだろう?
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