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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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107 やっぱり彼だった!



 帝都中央学院。

 高い塀と大きな門に囲まれた、帝国トップの名門校だ。

 前世的には、中高一貫みたいな感じだろうか。

 12歳で入学して5年間をここで学ぶらしい。

 生徒には貴族の子弟が多い。

 平民でここに通うには、よほどの成績か魔力か縁故が必要になる。

 貴族の多い学校では肩身が狭くて息苦しい気もするけど、学院生はまさにエリートなので大人気らしい。

 平民の一般受験の倍率は20倍を超えるとか。


 学科は3つ。

 騎士科、魔術科、普通科。


 アリーシャ様たちは騎士科に在籍しているそうだ。

 現在2年生。

 アリーシャ様もメイヴィスさんもブレンダさんもお姉さまな印象が強いけど、学院ではまだ下級生なんだよね。


 お兄さまも学院生で、騎士科の4年生。

 生徒会長らしい。

 やっぱり、特別なマントとか腕章とかをしているんだろうか。

 会えたらからかってやろう。

 あっ。

 いいこと思いついた。


 お・に・い・さ・ま~♪


 って美少女オーラ全開で走り寄ってやろう。

 楽しくなること請け合いだねっ!


 さて。

 それはともかく。


 午前10時。


 私は学院に到着した。


 鮮やかに飾り付けられた大きな門が、学院祭の開催を告げている。

 入っていく人は多い。

 招待状は、けっこう多く発行されているようだ。

 一般市民の親子連れもいた。


 敷地内も賑わっていそうだ。

 たくさんの明るい声が漏れ聞こえてくる。


 と、その時だ。


「この私を誰だと思っている!」


 あれ。

 なんか聞いたことのある声が門の内側、受付のところから聞こえたぞ。

 近寄って様子を見てみる。

 やっぱり彼だった。

 ウェルダン・ナマニエル。


「いえ……。すみません……。ただの商人なのですが……」


 受付の男子生徒に睨まれて萎縮している。

 どうやら生徒は貴族のようだ。


「アロド公爵家のご長女ディレーナ様に呼ばれていまして……。招待状はないのですが通していただければと……」

「だから、今日は招待状がなければ無理です。お帰りください」


 というやりとりを繰り返している。


 ウェルダン、降格でもしたのか、私の店に来た時とちがって、なんとも地味な服装をしている。


 そこにいかにもご令嬢な女子生徒が取り巻きを引き連れてやってくる。


「申し訳有りません、シェーダーさん。彼はわたくしの呼んだ商人でして。うっかり招待状を渡し忘れていましたの」


 お。

 どうやら彼女がアロド公爵家のディレーナのようだ。


「これでよろしいかしら」


 ディレーナが、歯がキラリと輝くようなご令嬢スマイルで、受付のシェーダーさんに招待状を見せる。


「……わかりました。お通りください」

「ケッ」


 ディレーナが来て強気になったのか、ウェルダンはツバを吐き捨てるような悪い態度で受付を通り抜けた。

 それを笑顔で迎えるディレーナも、なんだろ……。

 見た目的には爽やかなんだけど……。

 わかった。

 目が笑っていないんだ。

 だから、なんかアンバランスで怖い。


 ふむ。


 一応、確かめておくか。


 私はローブを羽織った。

 フードもかぶる。

 平和な学園の中では逆に目立ちそうだけど、隠しておいた方がいいだろう。


 『透化』して、2人の後についていく。


 2人は取り巻きを連れて、そのまま敷地内を進む。


 たくさんの屋台が出ている。

 すごいなー。

 本格的なのに、みんな、生徒がやっている。

 お。

 カキ氷があるっ!

 魔術で水を凍らせる実演中だ!

 青いシロップもある!

 ブルーハワイ!

 こっちの世界ではなんていう名称なんだろうね。

 聞いてみたい。


 って。

 ダメダメ、私っ!


 まずはウェルダンの悪事を暴かねば。

 まあ、悪事とは限らないけど、確かめるだけは確かめねば。


 って。

 待ったぁぁぁぁぁぁぁ!


 広場の特設ステージ、コントやってる!?


 なんか派手なスーツを着たお笑いコンビっぽいのが立ってる!


 観客笑ってるし!


 気になるじゃないかぁぁぁ!


 今の帝都では、どんなコントが流行っているんだろう。


 飛び入りは可能なのかな……?


 私の芸は、はたして帝都でウケるんだろうか。

 気になる。


 って!

 ダメダメダメよ私っ!


 あれ。


 ウェルダンどこいった。


 いた!


 あぶない見失うところだったよ。


 彼らはそんな楽しげな学院祭の様子に目もくれず、どんどん奥へ進んでいった。

 私は後ろ髪を引かれながらもついていく。


 さらば……ブルーハワイにお笑いコンビ。


 ウェルダンのやつめ。

 これでなんでもなかったら覚えてろよ。

 って、違うか。

 なんでもないなら、それはそれでいいことなんだよね。


 そう。

 ウェルダンの潔白を証明するために、私は尾行をしているのだ。


 2人が取り巻きと共に入ったのは、庭園の隅にある古めかしくもお洒落なカフェっぽい建物だった。

 「中央社交クラブ」と看板が出ている。


「まずはこちらの瓶ですが、笑い茸の粉末を固めた錠剤が入っております。ご注文通りに1錠だけ用意させていただきました」


 ウェルダンがテーブルに置いた怪しげな小瓶の説明をしていく。


「1錠で十分です。よく手に入れてくれましたね」

「ありがとうございます」

「痕跡は残りませんのよね? 心身に後遺症は?」

「ございません。しばらくの間、我を忘れて笑い続けるだけの軽い薬です」

「遅効性なのですよね?」

「はい。効果が出るのは吸収された後、2時間後くらいのようです」

「結構です。これを園遊会の時に上手く飲ませてやれば……。武闘会の席上で醜態を晒すアリーシャの姿が目に浮かんで今から笑えますわ」


 ウェルダン、潔白じゃなかったです。

 ダメでした。

 残念。



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― 新着の感想 ―
もう、原形残さず灰になるまで焼き入れちゃってよさそう
[良い点] なんと迅速なフラグ回収!!─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ尸 生焼け肉には、今度こそちゃんと火を通しませんとなヽ(`Д´)ノプンプン [気になる点] クウちゃんと悪役令嬢(?)は、…
2021/07/15 12:46 退会済み
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