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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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1068 モルド観光



「ラーラさん、おっはよー」

「おはようございます。今日はよろしくお願いしますね」

「う、うむ……。おはよう、クウ、レイリ」


 お屋敷のロビーに、私服姿のラーラさんがやってきた。


「すみません、いきなり予定変更で」


 私は謝った。


「理由は、すでに聞いたので大丈夫だ……。まさか本当に、アーレから走ってきたとは思わなかったよ……」

「あはは」


 私が言うのも何だけど、すごいですよねー。

 それはともかく……。

 来て早々なのに、なんだかラーラさんの様子がおかしい。

 視線をあちこちに巡らせたり、不要に服を整えたり……。

 妙に挙動不審だ。

 アーレから走ってきたことに、そんなにも驚いているのかな?


「それで、ウェイスと殿下はまだ寝ているのだな……?」

「はい。そうですね」

「そうか……。なら、いいが……」


 あー。

 私、察しました。

 これはアレか。

 昨日、全裸で男風呂に突撃した自分に、今更ながら気づいたのかな。

 ラーラさんの挙動不審な態度は、驚いているというより恥ずかしがっている感じだし。


 まあ、うん。


 私は優しい子なので、わかってしまっても指摘はしないのです。

 あえてのスルーなのです。

 レイリさんも余計なことは言わなかった。


 というわけで。


 何事もなかったということで!


 私とレイリさんは、ラーラさんの案内でモルド観光へと出かけた。

 屋敷から出て、川沿いの温泉街を抜けて、練習場に向かう。

 温泉街には、中央にプールみたいな天然の大浴場があって、脇では間欠泉が吹いていたりと大迫力だった。

 練習場では、すでに訓練が始まっていた。

 兵士だけではなくて年齢一桁の子供まで鍛えられていて驚いたけど……。

 モルドでは義務教育の一環というか中心らしい。


「どうだ? せっかくだし、参加――」

「いいえ。結構です」


 当然のように訓練に誘われたけど……。

 今日は観光なので、ハッキリとお断りさせていただきました。


 闘技場もあった。

 闘技大会は、町で一番の人気イベントなのだそうだ。

 幸いにも次の大会は年末。

 旅がおわってからなので、飛び入り参加イベントとかはなさそうだ。


 その後は、大門を見に行った。


 大門は、要塞となっている丘と丘の間にある。

 ザニデア山脈へと街道の続く、要塞都市ルーデアの山脈側の出入り口だ。


 大門の周囲には商隊の馬車や大きな荷物を背負った人たちが多く並んで、都市に出入りするための検査を待っていた。


「大門は、つい去年までは、ガランとしたものだったのだがな。ジルドリア王国やリゼス聖国との関係が改善されて、今ではこの賑わいだ」

「景気、良さそうですねー」

「ああ。去年までの臨戦態勢が嘘のようだ」

「あはは」


 そういえば、戦争の話もあった。

 主にエリカがね……。

 政策の空回りを帝国の工作だと勘違いしてね……。

 まあ、すでにおわった話だけど。

 今では仲良しだ。


「冬場だと、魔物の被害も少ないんですよね?」

「残念ながら、あまり降りて来ないな。いっそヤバンの企てが成功していれば面白かったが――。と、今のは失言だ。済まない、取り消す」


 ラーラさんもまた、本当に戦うことが好きなようだ。

 まあ、うん。

 物心ついた頃から、剣、闘技、魔物、では無理もないだろうけど。

 ただ、町は平和だった。

 大門を見学した後、私たちは大通りを歩いた。

 商人や観光客で賑わっている。

 最前線の町なのに、温泉地としても人気のようだった。

 もっとも本当の最前線は、大門を出て進んだザニデア山脈の麓に築かれた砦だけど。


 歩いている内、お昼になった。

 ランチは大通りのお店で取る。

 ラーラさんの行きつけのお店だそうで、魔物肉の専門店だった。

 私はシンプルに串焼きを注文した。

 鉄の串に肉と野菜が刺さっていた。

 1本でお腹いっぱいになるボリュームだった。

 満足。

 お味は、野性味があって、名物料理としてはなかなかによかったです。


 そんなこんなで……。

 珍しく、なんのトラブルもなく……。

 ざっくりとだけど、モルドの町の観光はおわった。


 川沿いのお屋敷に戻る。

 お兄さまたちもお姉さまたちも、すでに起きて庭にいた。

 辺境伯に奥様、バスクさんもいる。

 みんな、地面に伏して、必死に立ち上がろうとしていた。

 何が起きているのかはわかる。

 吸血鬼さんへの指導をおえて帰ってきた私の友人、闇の大精霊ゼノリナータさんが、宙に浮かんでみんなを見下ろしていた。


「ほらほらー。がんばれー。これくらいの呪力は振り払えないと、高位の死霊には太刀打ちできないよー」


 ゼノは笑顔で、みんなに活を入れている。


「これはいったい……。何事ですか……。まさか、敵襲……?」

「訓練だねー。敵はいないよー」


 驚愕するラーラさんに、私は笑って教えた。

 闇の力への抵抗訓練だね。


「ところであの子は……。気のせいか、浮かんでいるようだが……」

「どうしたの? 普通だよね?」


 精霊なんだし。


「そういうものなのか……?」

「うん」

「そうか……。さすがは帝都の者だな……。私は驚くことばかりだ……」


 ラーラさんは、私とゼノの素性は知らされていないようだ。

 まあ、うん。

 納得してくれたみたいなので、良しとしよう。


「ただいまー」


 私はゼノに手を振った。


「おかえり、クウ。ずるいよね、またボクを置いて観光とか」

「来ればよかったのに」


 ゼノなら、私の所在なんてわかるよね。


「イヤだよ。誘われてもいないのに行くなんて、それって惨めだよね」

「で、訓練?」

「うん」

「そかー」

「いいんだよね?」

「お兄さまがいいっていうならいいと思うよー」


 この後、当然のようにラーラさんも訓練に参加して。

 レイリさんも巻き込まれて。

 お兄さまたちも、やる気になってくれているゼノに「もう訓練は不要です」とは言えず、このまま継続となったので……。


 私は1人で、夕方までを過ごすことになった。

 ちょうどいい。

 ワイバーンくんたちのところに行ってみよう。








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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読んでます! なんだろう、この場面がドラゴ◯ボールの自由力訓練シーンを思い出してしまった(笑) 潰されてるのかな〜みたいな感じに見えたから。
[一言] ヤバイの企みってw
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