表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1047/1359

1047 事後処理





 事後処理には、結局、夕方までかかった。

 まずは、町を覆っていた闇の力をゼノに解除してもらう。

 町には日差しが戻った。

 次に、ゼノとウィルが通りに転がした悪党連中を領主の館の庭に運んだ。


 深い闇に当てられた町の人たちの状態は様々だった。

 寝てしまっていた人。

 自失していた人。

 そのあたりが大半だったけど……。

 中には、発狂してしまっていたり……。

 湧いていた悪霊に運悪く接触して、酷い状態になっている人もいた。

 けっこうな惨事だった。

 そうした被害者たちのフォローには、私と光の大精霊ことシャイナリトーさんが付いた。

 リトには思いっきり愚痴られたけど……。

 うん。

 ごめんなさい。

 でも私には、状態異常を感知するような能力はないの。

 感知できるリトさんがいないと、労力が倍々増することは確実なの。

 許して。


 ゼノとウィルは、領主の館で事情聴取のお手伝い。

 2人がいれば、みんな本当にいい子になって、自分のことをおしゃべりする。

 捕まえた中には町の実力者もいた。

 連絡会と呼ばれる町の支配組織の一員だ。

 カチグ・ミニナールと、もう1人。

 その2人もまた、素直に知っていることを全部しゃべってくれて、町の暗部は照らされることになった。

 ファーネスティラの町はトリスティンと繋がっていた。

 大量の魔石はトリスティンに横流しされていた。

 去年まではトリスティンから使者も来て、その使者が連絡会にいろいろと提案をしていたそうだ。

 呪具も使者から提供されたものだった。

 ただ、使者はすでに来なくなっている。

 最後に来たのは、去年の夏の始めくらいだったそうだ。

 約一年半も前だ。

 使者は悪魔だったのかも知れない。

 私たちがトリスティンで悪魔を一掃した時期に、ちょうど重なるし。

 とはいえ、使者が来なくなっても商人は来ていて、横流し自体は昨日まで変わらずに続いていた。

 それも今日でおわりだけど。


「しかし、わずか1日で一気に解決とは。さすがはク――」

「エンナージスさんたちの事前調査の成果だよー」


 ふ。


 エンナージスさんのさすクウはブロックさせていただきましたよ!

 私はやれば出来る子なのだ。


「まったく。本当は、こんな解決の仕方はダメなのです。クウちゃんさまは自重するべきなのです」

「わかってるよー。もー」


 リトにはグチグチ言われるけど……。

 私だって、好き好んでやったわけではないのだ。

 そもそもやったのはゼノなのだ。

 私は悪くないのだ。


「ともかく、後はお任せください。ここから先はジルドリア王国として厳粛に対処させていただきます」

「はい。お願いします」


 エンナージスさんなら確実だろう。

 私は安心して頭を下げた。


「……で、クウちゃんさま」

「どしたの、リト?」


 さらに呆れた顔をして。


「本当に、そこの吸血鬼を連れて行くのですか?」

「え。あ。うん」


 私たちがいる部屋には今、まるでメイドのような態度でゴスロリ姿のウィルが壁際に立っていた。

 珍しいことに、さっきから余計なことを一切しゃべらない。

 本当にメイドのように、じっとしている。


「ゼノの眷属なので、さすがにリトも消し去るとは言いませんが、元の住処に帰した方が無難なのです。吸血鬼はニンゲンの血を好むのです」

「ご安心ください、光の大精霊様。ウィルちゃんはメイドです。無闇にニンゲンを襲うようなことはしません。どこかのバカじゃなくて、どこかのクウと一緒にしないでくださいませ」


 ウィルが、それはもう偉そうに、澄まし顔で言った。


 ふむ。


「消しとく?」


 私は手に光の魔力をためた。

 するとウィルが、盛大にため息をついた。


「はぁ。クウお嬢様、そんな簡単に消すとかどうとか言ってはいけません。命とはそんなに安いものではありませんよ」

「ウィルは死んでるよね? とっくの昔に」


 アンデッドだし。


「ウィルちゃんです。私のことは、ウィルちゃんとお呼びください。ちゃんも名前の一部ですよ、クウお嬢様」

「どう? ちゃんとメイドしてるでしょ? 大丈夫だってー」


 ゼノはお気楽なものだった。


「お任せください。ウィルちゃんも、せっかくニンゲンの世界に行けるのだから本気なのです。廃墟の底で食っちゃ寝する1000年には飽きました。ウィルちゃんは今の世界を見てみたいのです」

「と、いうことみたいだけど?」


 私はリトに確認を取った。


「リトは忠告したのです。後は知らないのです」

「もー。またそんなこと言ってー。私たち、一蓮托生だよね? 何かあっても連帯責任だよね?」


 精霊同士だし。


「どの口が言っているのですかっ!」

「この口だけど……」

「リトを巻き込もうとするな、なのです! 少なくとも聖国には絶対にアンデッドなんて連れてくるな、なのです!」

「それはもちろんわかってるよー。帝国だけ、ね」

「まったく……。クウちゃんさまはどうしようもないのです……」

「何かあったら相談していいよね?」

「好きにするといいのです!」


 よかった。

 ほとんど自棄ながらも、認めてもらえた。


 そもそもなぜ、私がウィルのために頭を下げねばならないのか。

 とは思うのだけど……。

 まあ、うん。

 本当に来たいみたいだし、メイドのモノマネもちゃんと出来ているし、今さらダメというのも可哀想だしね。


「ちなみに我々は、見ていなかったことにさせていただきます。お問い合わせ等はご遠慮ください」


 エンナージスさんは完全スルーの構えだ。

 余裕の態度で一礼した。


 そんなこんなで、やるべきことをやって――。

 ようやくファーネスティラの町を後にできたのは――。

 空が赤くなってからのことだった。

 ただ、まだ帰れない。

 今日は来る調印式の日に備えて、即座にみんなを連れてこれるように転移の準備をするために来たのだ。

 私は疲れた体を引きずって、湖の南にあるダンジョンへと向かった。

 現地には、崩れた要塞とダンジョン町があった。

 ダンジョンへの入り口は、廃要塞に入ってすぐのホールにあった。

 見張りの兵士がいたけど……。

 ほんの少しだけ、ウィルの魔眼でぼんやりとしてもらって、私たちは無許可でダンジョンに入った。

 ダンジョンは本当に、それぞれに特色があって驚かされる。

 今回のダンジョンは、まさに朽ちた要塞だった。

 幸いにも転移陣は近場にあった。

 敵もいなかった。

 歩いて普通に出入りできそうだ。

 登録して、完了。


 アンドレイク要塞:1階待機室。


 それでも外に出ると、すでに日は暮れていて夜だったけど。

 冬は、夕暮れがおわるのも早い。


「ふう。おわったねー。みんな、お疲れ様ー」


 星空の中で私は言った。


「なのです。長い1日だったのです」

「うん。そだねー」

「じゃあ、リトはこれで帰るのです。ユイが夕飯の支度をして、きっと待ってくれているのです」

「今日はありがとね、リト」

「たまにはいいのです。たまになら」

「あはは」


 リトが転移の魔法で消える。


「さ、私たちも帝都に帰ろう」


 まずはマーレ古墳だけど。


「たのしみー! ウィルちゃん、初めてのニンゲン社会!」

「くれぐれも言っとくけど、ちゃんとゼノの言う事を聞いて、ちゃんとメイドとして頑張りなよ?」

「わかってるってー。主様に逆らう真似はしませーん」








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これはリト以上に駄目なやつが来たなあ 子供の教育に良くないけど大丈夫か?
[一言] なんだろう。ウィルは最近おとなしめになったリトに代わる“わからせられ”枠として参戦なのかしら。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ