1033 サクナとボンバー、そしてセラ
ボンバーズの事務所を見学して、ついでに商品の注文を受けた私たちは、次に私のおうちに向かった。
タタくんとボンバー、何人かの他のメンバーも、バックパックを背負って一緒についてきている。
ポーションや注文の品を受け取るためだ。
サクナの武具と合わせて、ささっと作って渡してしまうのだ。
作るだけならボンバーズの事務所でも出来るんだけど……。
その方がお互いに楽なんだけど……。
お仕事での生成は、お店以外ではやらないようにしている。
どこにどんな目があるかわからないしね。
私は慎重な子なのだ。
マンティス先輩は来ていない。
午後も訓練とのことだった。
シャルさんのお店は、客の途切れた瞬間に素早く閉めた。
本日の営業はおしまい。
シャルさんが抜け殻になってしまっていたしね。
アヤはタタくんと並んで歩いている。
冒険の話を聞いていた。
うしろから見ていると尻尾がフリフリなので、上機嫌なのはよくわかる。
サクナは、ボンバーと並んで歩いていた。
なにやら盛り上がっている。
「そうだ! 貴様はよくわかっているな! クウちゃんさまこそが、まさにこの青空から届いた光! 我々の希望! 我々の人生!」
「ふふ。そうですね。その通りです。私も今、ようやく、クウちゃんさんに蹴られることで感じるこの気持ちの正体に気づくことができました。これは、そう、まさに光であり希望であり、人生だったのですね」
「その通り! その通りだ!」
2人が顔を合わせて笑う。
それはもう、楽しそうに。
私の前で。
私は、この2人に声をかける勇気をどうしても持てなかった。
なので頑張ってスルーした。
「クウちゃんさまこそ、世界で一番!」
サクナが叫ぶ。
するとボンバーが呼応して、
「クウちゃんさんこそ、希望の光!」
なんか、うん。
セラみたいなことを言っているね……。
ああ、そうかー。
そうだねー。
そういえば、こっちの世界で最初にできた……。
私の大切なお友だち……。
セラフィーヌさんも、気のせいか似たようなものだよねえ。
あははー。
「店長さん、俺等も言った方がいいですか?」
「やめてね!?」
メンバーの人に変な気の使われ方をして、私は思わず叫んでしまった。
疲れた。
早くも今日は疲れ切った。
いっそシャルさんのように抜け殻になってやろうかとも思ったけど、私は仕事は真面目にやる子なのだ。
受注した以上は、頑張らねばならないのだ。
お店についた。
ドアを開けると、明るい声が出迎えてくれる。
「いらっしゃいませなのだーですー!」
微妙に変な言葉遣いの、庶民っぽいフリをしているのはわかるけど、どこからどう見てもお嬢様な金髪の美少女だった。
その正体は……。
「セラちゃん! 今日はアルバイトなんだね!」
すかさずメンバーが駆け寄る。
「はい! そうなのだです!」
セラがお店にいました。
よりにもよって、ボンバーとサクナが一緒の、この時に……。
「クウちゃん、こんにちは! 約束はしていなかったけど、今日はいきなり遊びに来ちゃいました!」
「うん。いらっしゃーい。歓迎するよー」
さすがに帰れとは言えない。
私は笑顔でセラの出迎えを受け入れた。
「クウちゃんは、お仕事でしたか?」
「遊びと仕事の両方かな。これからいろいろと受注品を作るんだー。なので工房に入るけどセラはお店をお願いね」
「わかりました。お任せください」
よかった!
セラは笑顔で、お店に残ることを了承してくれた!
幸いにもお店には、お客さんが何人かいた!
頑張って接客してもらおう!
「フラウとエミリーちゃんも、よろしくね」
「任せるのである」
「はい。こちらは大丈夫です」
「ファーもね」
「ニクキュウニャーン」
私は、アヤとサクナを連れて工房に入った。
ボンバーたちには応接室で待ってもらう。
他のお客さんの邪魔だしね。
何人かのメンバーはぬいぐるみが欲しいからとお店に残ったけど、幸いにもボンバーはタタくんと共に大人しく応接室の椅子に座ってくれた!
よし。
なんとか分断できたよ!
「……ねえ、クウちゃん」
「どうしたの、アヤ」
「さっきのセラちゃんって……。もしかして……」
「アヤ、それ以上はいけないよ?」
「あ、うん。わかった」
「アヤ、クウちゃんさまはすべてを受け入れるのだ。何も気にしてはいけない」
なぜかサクナが悟った顔で言う。
まあ、いいや。
とにかくサクナのために、武器と防具を作ろう。
「で、どんな武具がいいの?」
「はい。剣は細身で軽量なものがほしいです」
「盾はいらない?」
「はい。私には風の魔力があるので、素早さをあげて、防御より回避、先手必勝の方が戦いやすく」
「なるほど。了解。それなら防具も軽めのヤツがいいよね」
「はい。あと、できれば、サイズに融通の利くものがいいです。私はまだ身長が伸びているので」
「了解。ベルト固定式にするね。ボンバーズの事務所にあった、肩当てとか胸当てとかみたいなのでいい?」
「そのあたりは、すべてクウちゃんさまにお任せします。家宝にします」
「ちゃんと使ってね?」
「はい!」
サクナの戦闘スタイルは、私やセラと同じだ。
なので理解はしやすい。
せっかくなので耐久力強化の付与もつけて、メンテなしでも長く使えるようにしてあげよう。
頻繁に来られても……。
邪魔だし……。
「じゃあ、作るから、2人はお店か応接室で待ってて」
サクナを目から離すのは不安もあるけど……。
さすがに生成するところは見せられない。
お店にはお客さんがいたし、ボンバーはタタくんと一緒だし、まあ、少しくらいの時間なら問題が起きることもないだろう。
私は楽観することにした!
「これから作るのですか?」
「うん。魔法でね」
「おお! さすがはクウちゃんさま! そんな魔法があるのですね」
「見せることはできないけどね。秘密の魔法だから。まーほーですかー、なんて感心しなくてもいいからね?」
「はい! わかりました! 感心しません!」
「え。あ。うん」
「サクナ、今のは笑うところだったと思うよ」
優しいアヤがそっとサクナに教えた。
「なんと! そうでしたか! これは失礼しました! あははははは! あはははははははは!」
「……いいから、お店で待ってて? ね?」
 




