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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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101 夏草や兵どもが夢のあと(アンジェリカ視点)



「ショートコント、パン」


 セラが真顔に戻って言った。


 まだやるようだ。


 クウがパンと手を叩く。

 その後で、


「バゲット」


 と、体をまっすぐに伸ばす。


 セラがパンと手を叩く。

 その後で、


「プレッチェル」


 と、手でかわいらしくハートの形を作る。


 今度は2人でパンと手を叩いた。

 その後で、


「アンパン」


 と、2人でそれぞれに手で丸を作った。

 作ったところで、2人とも、なぜか驚いた顔をする。


「あの、クウちゃん、それってこしあんでは?」

「セラのそれって、まさかつぶあん?」

「もちろんそうですけど……。アンパンと言えばつぶあんですよね……?」

「まさか……。アンパンといえばこしあんに決まってるよ……?」


 沈黙。


 そして、戦闘態勢を取って飛び退く2人。


 と思ったら、


「「見た目じゃわからない!」」


 2人そろって、フラミンゴのポーズを決めた。


 ごめん、ちょっとウケた。

 笑っちゃった。

 もうホント、意味不明。

 勢いしかないネタなんだけど、面白いものは面白いわね。



「ラスト。ショートコント、夢の跡」


 いよいよおわりみたいだ。


 セラのタイトルコールの後、クウが静かに口を開いた。


「……かつて、200年前。

 この丘では戦いがありました。

 大陸の運命を決める、西と東の一大決戦です。

 今、歴史は流れ。

 幾多の血で染められたその場所には、ただ夏草が茂っています」


 セラが引き継いで、さらに語る。


「人は、生きていきます。

 人は、死んでいきます。

 あとに残るのは、ただ、夢の跡……。

 貴女の夢は、なんですか?」


「私の夢は、フラミンゴ」


「わたくしの夢も、フラミンゴ」


 2人そろって、ゆっくりとフラミンゴのポーズを決める。


 くるりと一回転。


「「ホントの夢は、猫でした♪ にゃ~ん♪」」


 最後はクウの必殺技「にくきゅうにゃ~ん」がダブルで決まった。

 可愛くて絵になるわね。

 わーっと盛り上がって、みんなで拍手して称えた。


「わたくしたちのコントを最後までご覧いただき、ありがとうございました」

「……夏草や兵どもが夢のあと」


 2人でぺこりと一礼。


 これにて完。

 全員の芸がおわった。



 最後にクウが結果発表を行う。


 シルエラさんを笑わせたのはセラの芸だった。

 よってセラの優勝!

 でも、みんなの芸も盛り上がった!

 なので、みんなも勝利!


 とのことだった。


 勝利者賞として、私たちは歯ブラシとコップをもらった。

 そうよね。

 たくさん食べたし、寝る前に磨かないとよね。


 セラには優勝記念として、


「賞品は、これ! クウちゃんオルゴールー!」

「わぁっ! 可愛いですっ!」


 クウがテーブルに置くのは、クウの人形がついたオルゴールだった。


「これ、ショーウィンドウに飾ってあったやつよね。いいなぁ」


 正直、私もほしかった。


「そうですよね……。わたくしだけもらってしまって申し訳ないです……」


 ああ、しまったぁ。

 余計なことを言って、セラの顔を曇らせちゃった。

 私がフォローしようとすると――。


「ふふ。じゃーん」


 クウが同じオルゴールを2つ、追加でテーブルに置いた。


「これは帝都のお土産だよー。アンジェとエミリーちゃんにあげるー」

「え。いいの?」

「クウちゃん、わたしにもくれるの……?」

「うん。どうぞー」


 私とエミリーは、喜んだ後、やっぱり遠慮したけど……。

 だって優勝賞品だしね……。

 私たちは、優勝していないし……。

 でも結局、セラにもオススメされて、感謝しつつもらうことにした。

 正直、嬉しい。

 可愛いし、綺麗な曲が鳴るし。

 曲を聞く度、今日のことをいつでも思い出せそうだし。


 フラミンゴ。


 ……あ、つい思い出したけど。

 それは思い出さなくていいからね、私の記憶回路。


「ボクは?」

「……某は?」


「2人はうちに居候してるからいらないよね。見たければお店に行きなよ」


「それはそうか」

「……そ、そうですね。はは」


 気楽に笑うゼノと、かなり残念そうなヒオリさん。

 ヒオリさんは仕事をしているんだし、ほしければ買えるわよね。

 そもそもクウと暮らしているんだし。

 気にしないでおこう。


「ではっ! 最後の最後に! シルエラさんから一言、お願いしますっ!」


 クウがシルエラさんに振った。


「私ですか?」

「はいっ!」

「私はただのメイドです。言葉を発する必要はないと思いますが」

「そこを一言っ! 面白かった? 楽しかった?」

「有意義な時間を過ごさせていただきました。皆様には感謝いたします」


「やったー!」

「やったね、クウちゃん!」


 クウとエミリーが手を叩いて喜ぶ。


「よかったです。シルエラ、いつもありがとうございます」


 セラもほっとした様子で笑った。


 かくして。

 第2回シルエラさんを笑わせようの会。

 は、閉幕となった。


「シルエラ、今日も1日ありがとうございました。あとはもういいので、クウちゃんの用意してくれた部屋でゆっくりしてください」

「お風呂も入れるようにしてあるので。パジャマもありますから、よかったら着てください」

「ありがとうございます。では姫様、本日は失礼させていただきます。クウ様もご手配を感謝いたします」


 かくしてシルエラさんの今日の仕事はおわった。

 そばにいるだけでも疲れるだろうし。

 あとは、ゆっくりとお風呂に入ってもらって、2階の客室でスイーツでも食べつつくつろいでもらおう。

 必要なアレコレはクウが準備してくれていたみたいだし。


 私たちは、そろそろお休みの準備よね。



 部屋を片付けて。

 歯磨きして。


 ヒオリさんとゼノは、2階の自分たちの部屋に帰っていった。


 残った私たちはベッドに寝転ぶ。


「わーいっ!」


 興奮余ってエミリーなんて飛び込んだ。

 気持ちはわかる。

 私も、ちょっとやりたかった。


 クウのベッドは大きくて、子供な私たちが4人で転がっても平気だった。

 私とクウとセラとエミリー。

 その4人だ。


 クウが天井の明かりを消す。


 代わりに、ベッドのわきのランプを灯す。

 オレンジ色の光が部屋に伸びる。


 一気に雰囲気が変わる。


 夜の遅い時間。


 あとは寝るだけ。


 満足しきっているような。

 まだ足りないような。


 疲れたような。

 元気なような。


 いろいろ混じり合って、変な感じだ。


「……みんな、ありがとね。

 ……特にクウ、今日は本当にありがとう。最高に楽しかった」


 天井の闇に目を向けて、私は自然につぶやいていた。


 それは私の、心からの感謝だった。





アンジェリカ視点のお話はこれでラストです。

次回からクウ視点に戻します。


そして、100回記念のコント大会もついにおわりました\(^o^)/

楽しんでいただけましたでしょうか\(^o^)/

笑ってもらえたなら幸いです\(^o^)/

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― 新着の感想 ―
不覚www
>「あの、クウちゃん、それってこしあんでは?」 >「セラのそれって、まさかつぶあん?」 >「「見た目じゃわからない!」」 一応黒ゴマがつぶあんで白ゴマやケシの実だとこしあんっていう暗黙のルールはある…
[良い点] は~久しぶりに声出して笑ったw
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