1008 しゃるーん☆
「どう、クウちゃん。これ、うちの制服なんだー。可愛いでしょー」
「ねえ、シャルさん」
「しゃるーん☆」
「シャルさんって今年で何歳でしたっけ?」
「こらクウちゃん! 女の子に年齢なんて聞いちゃダメでしょ! みんなそれぞれ永遠の自分年齢があるんだから!」
め、と、地雷系ファッションのシャルさんに怒られました。
うん。
はい。
それはそうかも知れません。
ごめんなさい。
こんにちは、クウちゃんさまです。
というわけで私は今……。
シャルさんのお店に、クラスメイトたちと来ています。
「ねえ、シャルさん。私、チケットをもらったから来たんだけど……。バーガー屋はやめちゃったの?」
ピンク色の店内を見る限り、メニューの張り出しはない。
「安心して。ちゃんとやってるよー」
「そかー」
「早速、使ってくれるのよね。シャルルン☆バーガー6個、入りましたー!」
シャルさんがカウンター奥の厨房に声をかけた。
お。
コックさんを雇ったのかな。
と思ったのだけど、
「はーい」
シャルさんは自分で返事をして、
「好きな席に座って待っててー。そこの粗大ごみは捨てていいからねー」
と、テーブルに伏せていたボンバーを指さして。
それから、奥の厨房に入っていった。
ちゃんと腕をまくって、胸にエプロンはつけるようだ。
よかった。
「シャルロッテさんは、相変わらずの陽気なお方ですね」
エカテリーナさんがクスリと笑った。
「すみません……。いろいろと……」
ラハ君が恐縮する中、私たちはテーブルの席についた。
シャルさんのインパクトが大きすぎて気にならなくなっていたけど、店内にはボンバーズのメンバーがいた。
ボンバーと、あと何人か。
「店長さん、こんにちは」
「今日は学院の帰りなんですね」
顔見知りのメンバーたちが私に声をかけてくる。
「うん。まあねー」
私は愛想よく答えた。
「おいボンバー、店長さんが来てくれたぞ! いい加減に起きろ!」
いや、うん。
別に起こしてくれなくていいよ?
だけど残念ながら、仲間に叩かれて、ボンバーは身を起こした。
ちなみにボンバーは、ボンバーハッピーな黄色いスーツ姿ではない。
ちゃんとした冬の紳士の身なりだ。
うん。
ボンバーは、服装だけは、いつもちゃんとしているね。
ボンバーと目が合った。
私はちょっとだけ、ボンバーハッピーするのかな? とキタイした。
うん。
するならね。
私、少しだけならノッてあげてもいいけど。
仕方なくね。
イヤイヤだよ?
これもまた、付き合いだし。
ボンバーが立ち上がった。
「クウちゃんさん……」
「うん。なぁに?」
残念だけど、ハッピーはしないようだ。
私は嫌な予感を覚えた。
いつの間にか移動していたメンバーの1人が、静かに店のドアを開けた。
なるほど。
私も立ち上がった。
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! ぐはっ!」
ボンバーが迫ってきたので、店の外まで蹴っ飛ばした。
まったく。
ボンバーハッピーなら、付き合ってあげたのに。
「「「お疲れ様でした」」」
メンバーたちが私に頭を下げる。
「一応言っとくけど、普通の女の子にあんな迫り方したら、普通に通報されて下手すれば捕まるからね?」
「それは大丈夫です。店長さん専用の挨拶芸なので」
「ならいいけど……」
私がため息混じりにうなずくと――。
アヤに、心底驚いた顔で、
「大丈夫なんだ!?」
と、言われてしまったけど。
うん。
普通、そうだよね。
「さすがはクウちゃんさんです。今日の蹴りも最高でした。とても気持ちようございました。おかげで私、気持ちが晴れました」
どうやらボンバーの体力は戻っているようだ。
すぐに店内に戻ってきた。
「何かあったの?」
思わず私は聞いてしまった。
「ええ。実は……」
ボンバーがもったいぶる。
もったいぶられたので、私は冷静になった。
「ねえ、シャルルン・バーガーって、どんなのだろうね」
私はクラスメイトたちに話題を振った。
「クウちゃんさん!?」
「いや、だって、話したくないなら無理に話さなくてもいいし」
「話したいです! 話させてください!」
「もー。ならどうぞ」
「実は、私……。昨日、勝負に負けてしまいました……。ああ……。まさかこの私が負けてしまうなんて……」
「勝負といっても、ただのジャンケン5本勝負でしたけどね」
メンバーの1人が教えてくれた。
「なるほど」
「私は、マイ・ネオ・エンジェルを奪われてしまったのです……」
「そかー」
「ああー! マイ・ネオ・エンジェル! フォーエバー!」
ボンバーが叫んだ。
「ちなみに誰と勝負したの? 話的には、オルデを賭けたって感じだよね?」
私はメンバーの人たちにたずねた。
マイ・ネオ・エンジェルとはオルデのことだ。
私は、もしかしてナリユ卿かな?
ナリユキでそうなっちゃったのかな、とも思ったのだけど……。
相手は、前向きで明るいハンサムな青年だったそうだ。
残念だけど、その時点で別人だね。
ナリユ卿は、ナヨナヨしていて気弱で優柔不断で、ハンサムではあるけど明朗とは真逆の青年だし。
さらに貧乏人だったそうだ。
着ている服はヨレヨレ。
オルデからも、思いっきり雑に扱われていたそうだ。
勝負に勝って告白しても……。
なので、オルデは「アホか!」と、勢いよく、ぶった切ったらしい。
「名前は、なんていう人だったの?」
「さあ。貧乏人とかアンタとかアホとしか呼ばれていなかったので」
ただ、それでも青年はめげずに……。
オルデの後を追いかけていったそうだ……。
ストーカー……?
と私は少し心配したけど、そこまでアンバランスな関係でも、一緒に仕事をしている間柄だったという。
ボンバーに喧嘩を売られた青年を正面からかばってジャンケン勝負にしたのもオルデという話だ。
邪険に扱っても、いらない、というわけではないのだろう。
「いろいろあるんだねえ、人間関係って」
「ですねー」
私はメンバーの人たちと、しみじみ、うなずいた。
「そうだ。ねえ、ところでさ、オルデの家って花屋をやってるんだよね? どこにお店はあるの? 場所、教えて」
考えてみれば、ナリユ卿が目指す場所だよね。
まだ確認してなかったよ。
「見に行くんですか? 店長さんは本当に好奇心旺盛ですね」
「まあねー」
あっはっはー!
場所は教えてもらえた。
帰りにでも、ちょっと寄ってみよう。
新年あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!
しゃるーん☆ なのです\(^o^)/
 




