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秋葉原ヲタク白書87 消えた御主人様

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第87話です。


今回は、メイド長仲間のトップヲタクが失踪しますが、調べる内に彼が特殊部隊のリクルーターであるコトがわかります。


ところが、今回彼がリクルートしたのは大物スパイで、神田川に国籍不明の潜水艇が浮上し、秋葉原に戒厳令が敷かれ…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 悩めるメイド長


「ま、待ってくれ!借りた以上は必ズ返す!そりゃ資本主義の常識だ!ただ、今はちょっち…」

「そうか…では、その手を合わせて拝め」

「え?こ、こうか?」


銃声。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「おかえりなさいませ、お嬢さ…あ、あら?マシロちゃん?お久しぶり」

「あぁミユリ姉様!御無沙汰してます!実は困ったコトになっちゃって!」

「まぁソレはタイヘン!」


未だ何も逝ってナイw


ココは、僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷(メイドバー)

ミユリさんを慕う悩めるメイドの"駆け込み寺バー"として知られる。


飛び込んで来たマシロさんは、ユニクロのチラシから抜け出たような普通の服装(ぱんぴーふく)

逝われなければ、とてもアキバのメイドには見えないけど…えっ?メイド長なの?


「姉様の"連れ"が名探偵と伺ったもので。お邪魔でしたか?御都合は?」

「たまたまテリィ様もおられるし、まぁ、タイミング的には完璧カモ」

「ええっ?!コチラがあの有名な"テリィたん"さん?!ええっ?!この人?ま、まさか…」


ミユリさんがカウンターの中から指差した僕を見て絶句するマシロさん。

おつかい中に芸能人を見つけたオバさんの目線で遠慮無くガン見してる。


パンダじゃナイょw


「…と、とにかく、最近、ウチのTO(トップヲタク)の様子が変なの。妙な時間に御帰宅して来ては下手な言い訳を。やっと司法試験に合格したばかりなのに」

「え?コレって浮気調査の依頼なの?」

「浮気!そうか、絶対そうょ!いつにも増して勤務時間が長いし、徹夜どころか2日間、姿を見てナイのです!」


さっきのガン見の倍返しだw

遠慮ナイ言葉を浴びせる僕。


「48時間連絡がなけりゃ、普通は捜索願は飛び越して失踪届で死亡確認でしょ」

「失踪なんてドラマとは無縁の仕事人間ょ!女ょ!女だわ!きっと私から"推し変"したの!だから、調査をお願い。どの御屋敷の誰を推してるかを突き止め、裁判で使える証拠写真をお願い!」


え?最近じゃ"推し変"も裁判になるのか?

ヲタクも楽じゃナイなwもしや慰謝料とか?


「悪いけど、そーゆーのは僕達の専門外ナンだ。ヲタクの痴話喧嘩に興味はゼロ。その手の仕事は受けない。探偵じゃないし」

「そう?でもね…ウチのTO(トップヲタク)は、アキバでトップの法律事務所"アキバハンマー"の弁護士なのよっ!」

「えええええっ?!」


最後は、僕とミユリさんが異口同音だ。

そして、顔を見合わせ思わズ吹き出す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


マシロさんと一緒にハンマー事務所を訪問w


"アキバハンマー"は、ヤメ検の優秀な弁護士だが、ある日、突如ヲタクに目覚める。

以来、事務所をアキバに移して、ハンマーの被り物で法廷に立ち、すっかり有名人にw


で、僕は彼には有り余るホドの貸しがアル。

で、今回はミユリさんも彼には貸しがアル。


あ、彼ではなく"彼女"に、かな?


「ミユリ!久しぶり!貴女が来るって聞いたから、私もメイド服でお迎えしようと思って!うふっ!」


奥さんのエリカさんが謎のメイド姿だw

豪華な応接室に通されてソレゾレ着席。


実は"アキバハンマー"こと、橘ミツル、通称タチマンは小学校時代の同窓生で…新婚w

で、彼の奥さんエリカさんは、風営法にヤタラ強い司法書士でミユリさんとは古馴染み←


僕達は、この2人を結びつけたキューピッドw


「何だょテリィ。お前って逝うか、ミユリさんが来るとエリカが張り切ってなwうん。メイドのコスプレも良いな。エヘ、エヘヘ」←

「あのなぁ。自分のリアル嫁に鼻の下伸ばしてどーすンだ!で、聞きたいコトがある。コチラのマシロさんは…」

「ハンマー先生!いつもシノハがお世話になっております!家内です、なんちゃって。メイドの分際で私のバカバカ!」←


マシロさんがピョコンとお辞儀スル。

コッチも新婚感が満載だょ違うけどw


ところが…


「はい?シノハさんって知らない名前だな。"アキバハンマー"って、良く戦隊シリーズと間違えられルンだけど、本名は橘ミツルと申します。どなたかとお間違えでは?」

「ええっ?シノハは、司法試験に合格したばかりの弁護士だけど、センセの事務所に入るコトが出来たって…」

「うーんシノハくん?ってヤッパリ知らないな。そもそも司法試験に合格しても1年は司法修習生だから、合格即弁護士と逝うワケには逝かンのですょ」


すると、マシロさんは可哀想な程、ミルミル顔面蒼白になって逝く。

一方、奇妙なコトに、傍らでエリカさんの顔面はドンドン真っ青にw


白と青?エリカさんがヤニワに頭を下げるw


「ごめんなさい!私、断れない人に頼まれ、その名前の人の電話番をしてました!秘書のフリして毎週お金をもらってたの!許して!ダーリン!」

「ええっ?どーゆーコト?」

「実は風営法の申請をやってあげたお客さんに頼まれて、そのシノハって人がウチの事務所の弁護士であるかのような受け答えをしてたの!バカでした。もうやめます。ダーリン、このメイド服に免じて許して!これから、いつでもアナタが仰る時に、昼でも、夜でもメイド服を着てあげます!だから、おバカなエリカを許して!」

「ええっ?昼も夜もだと?マジ?本気?」

「ソレもアナタ御指定のお好きなメイド服を着てあげます!」

「わ、わ、わ、わかった!なら許す!ただし…」

「オプションで裸エプロンもつける?」

「今の話は全て公正証書に」


法曹家の夫婦ってスゲェなw


「うわーんTOに騙されタァ!人のコトをバカなメイドだと思って!」

「え?シノハってTOTOに勤めてンのか?しかし、彼は何でウチの事務所で働いてるフリなんかスルのかな?」

「うわーん!だって"アキバハンマー事務所"に勤めてると逝えば、おバカなメイドはイイチコ、じゃなかったイチコロだモノ!セレブマンションに住めたり、カントリークラブの会員になれたりスルと思うモノ!うわーん」

「そりゃ結構だけど、どう考えてもアッサリとバレるょなw子供の自慢と同じで詐欺にもならないぞ?あ、ヤリ逃げか…」


マシロさんの泣き声が一段と大きくナルw


「私、事務所に来たシノハ宛の郵便物も開封してたけど(ソンなコトまでやってたのかw)、彼?シノハの貯蓄は多くなかった。でも、どこか外からお金が入って来てた」

「何か違法なコトを?」

「実は、話し方の声からして怪しい感じで名乗りもしない電話があった。ソレに電話番の報酬も、小切手じゃなくて現金で届くの。記録を残さないためカモ」


ヤタラ協力的(何に?)になったエリカさんがペラペラ喋り出す(クドいけどメイド服でw)。


「最近の支払いは?」

「2日前に届いたわ。封筒も取ってアルけど。テリィたん、見る?」

「いいかな?どうも…差出人は無し。消印は…外神田じゃなくて秋葉原だw謎の男シノハのオフィスは、いわゆるアキバの千代田区外神田ではなくて台東区ナンだね。アキバの外れだ…ややっ?封筒に血が!」


一同ギョッとドン引く中、僕は…舐めるw

みんなは益々ギョッとなるがコレは調査←


「この旨味は血じゃナイな…ラム肉?微かにソースの匂いもスル」

「うーん。と逝うコトは、シノハのオフィスはジンギスカン料理店の近くに違いナイ!テリィ、お前、間違いなく小学生の頃より頭が良くなってるな!」

「お褒めにあずかりウレしいょ。今のも公正証書にしてくれ。で、エリカさん。また、退屈な電話番とセコイ欺瞞に戻って良いですょ。でも、何かあったら教えてね。ソレから、多分もう報酬は届かないだろう」


泣き止む素ぶりスラ見せないマシロさんを新婚夫婦に任せ、後ろ手にドアを閉めたトコロで、ミユリさんからハンカチを手渡される。


「はい、テリィ様。ヨダレが…」

「ああ!良いなぁタチマンうらやましぃ!エリカさんが"いつでもメイド服"スタンバイなんだぜぇ!不公平だぁ!」

「不公平?あの、私だって毎夜"いつでもメイド服"ですが、何か?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


タチマン邸で得られた手がかり総動員で"ラム肉、台東区、秋葉原"でエリア検索!

やや?ヒットしたのはジンギスカンではなく中華だょしかも馴染みの"新々秋楼"?


「おおお!コレが"ラム肉と長ネギの炒め¥980"か!初めて食べた!めっちゃくちゃ美味い!」

「おばちゃん、お久しぶり。お嬢さんのミメイさんは元気にしてますか?」

「ラムと中華の幸せなマリアージュだ!素晴らしい!素晴らしいけど…ちょっち失礼w」


地下アイドル通りの裏にある街中華"新々秋楼"は、僕達が週末に小遣い稼ぎをしてるバンドの行きつけで四半世紀に及ぶ付き合い。


正確には"新秋楼"時代からの付き合いだが"時間ナチス"の襲撃を受け焼失、再建した"新々秋楼"から数えると4〜5年って感じ?


本格的な中華料理が出るが、ネズミも出る笑


で、僕は"ラム肉と長ネギの炒め¥980"をワザと紙に落とし、舐めてみるw

間違いナイ。シノハが発送した封筒についてたシミは間違いなくコレだな。


何事なの?と目を丸くしている太ったおばちゃんにシノハのコトを尋ねる。


「えっと、名前はシノハだけど、もしかしたら別の名前を名乗ってるカモしれない。え?傭兵?イキナリそう来る?うーん確かに傭兵の線はあるカモな」


"新々秋楼"の太ったおばちゃんも、話せば長いが中華屋が半分、残り半分は傭兵で対空バズーカ振り回しUFOを撃墜したりしてるw


で、傭兵同士?の独特の嗅覚が働いたのか、おばちゃんが傭兵と看破したシノハのオフィスへとミユリさんと一緒に出向いてみたら…


「おかえりなさいませ、御主人様!御嬢様!初めての御帰宅ですか?」


げ?ソコは御屋敷(メイドカフェ)だw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


しかも老舗の"モア・カフェ"だ。


場所的にはアキバの外れになるが、ミレニアムの頃から連綿と続く"萌えの殿堂"だ。

当然、メイド長のレノアはミユリさんと古馴染みだし、まぁ僕も何度か御帰宅してる。


「わわっ!ミユリ姉様、不意打ちは困りますぅ!あ、ミポリンありがと。コチラは私が御給仕スルから!」


防犯カメラでも見てたのか、バックヤードからスゴい勢いでメイド長が飛び出して来る。

ミユリさんも、コロナどう?とか話しかけ、並んで歩き出すwこら!御主人様は僕だぞ!


「おおぉ?コチラが噂の"テリィたん"ですね?ほほぅ。へえぇ。ふうぅん…」


そのパンダを見るような目つきヤメてw


「でね、レノア。実は"新々秋楼"のおばちゃんに聞いてお邪魔してルンだけど、コチラに傭兵っぽい人とか御帰宅してナイ?仮の名をシノハさんって逝うんだけど」

「よーへー?来てますょ。お笑い芸人ですょね?ラジオパーソナリティの」

「え?うーんソレ違うカモ。兵隊さんの傭兵なのょ」

「兵隊さん?あっ!先週"戦略自衛隊アキバ基地祭"ってイベ(ント)を打ちましたけど。私達も"91式第2種夏服"ってのを着たンですよ!国がスポンサーとかで派手にお金のかかった関係者ばかりが押しかけた割には(客の)入りが散々なイベ(ント)でした」

「まぁ今は擬人化ばやりだから、リアル軍服って意外に人気ナイのょね。水兵さんのセーラーとか着てスポンサーの親父ウケを狙えば良かったのに」

「そっか!姉様、サスガですぅ」

「でも、私達が着ると痛いか」


ココでキャハハと大爆笑が起きる。

僕としては咳払いせざるを得ない。


「…あ、えっと、何だっけ?あーそうそう、レノアちゃん。そのイベントって主催側にシノハって人、いなかったかしら?」

「あ!あのシノハさん?いました、いました。あのハンマーの被り物してる人ですょね!確かにいました。姉様のお知り合い?」


え?ハンマーの被り物?

シノハ、君は一体何を?


僕も話の輪に入る。


「で、そのシノハさんなんだけどさ。レノアさんが、せっかく軍服コスプレしてるのに、何でハンマーの被り物なんかをしてるワケ?」

「うーん。わかりませんwただイベ(ント)自体は、実は"夏の新入隊員獲得キャンペーン"の一環で、盛んに御帰宅された御主人様方に"仮入隊"を勧誘してました」

「"仮入隊"?」

「住所、氏名、連絡先を登録スルと、軍服姿の私達と無料でチェキが撮れるのですっ!」

「…あ、そう。個人情報を売るにしちゃ少し安いンじゃ?」

「あ!そー逝えば、私とチェキを撮った御主人様に、ハンマーの被り物の人が盛んに話してましたっけ」

「おおっ!何て?」

「借りたモノを返すのは、資本主義の常識だろ…って」

「な、何か怖ぇ話…あのさ、そのイベントの写真とか撮った?見たいなー」

「え?私の"91式第2種夏服"姿ですか?いやだーテレるわ、ソレにテリィたんにはミユリ姉様が…どーしよーミユリ姉様ぁ」


いや。レノアはどーでも良いのだ←


「やっぱり」


出されたアルバムをめくる内、ある写真に主催(国?)側が派遣したと思しきメイドが写っていたンだけど、その中に見覚えのある顔w


あぁサリィさんだ。


第2章 消えたシノハ


「テリィたん!良かったわ、私の方でも相談に逝こうと思ってたトコロょ。ウチのシノハがアキバで消息を絶ったの。探すの手伝ってょ」


サリィさんは…国益優先の特殊部隊(デルタストライク)の所属。正規部隊で扱えない案件を専門に扱う傭兵。

彼女が麻薬組織への潜入捜査のためメイドになった時に色々アドバイスして以来の仲だ。


ミユリさんが←


そのせいか、サリィさんとミユリさんには、僕には理解不能な女同士のチャンネルがあって多分その関係でサリィさんは今メイド姿w


「ちょうど困ってる時にミユリンから連絡もらって、まぁタマには御屋敷(ミユリさんのバー)に顔出そうかなって。テリィたんの顔も、忘れかけてたし」

「おおっ!どうやら、僕達には忘れられない夜が必要…ぎゃどぺっ!あ、えっと、で、シノハってサリィさんのお仲間なの?何者?」

「シノハはね…ウチのリクルーターなの」


あ、途中の僕の悲鳴は、ミユリさんのデス光線を致死量浴びた結果なので気にしないで…


「自衛隊の新人募集に紛れて、ウチで使えそうな人材がいれば、横取りしようと思って。私も久しぶりにメイド服を着て頑張っちゃったw」

「ええっ?サリィさんって、平時はソンなコトやってるの?先週はアフガニスタンとか逝ってたょね?ってか、ソレにしてもリクルーターのシノハは何で偽物"アキバハンマー"なんか演じてるワケ?」

「しっ!スタンの任務は極秘よっ!あのね。余り大きな声じゃ逝えないけど、ギャンブルの借金でレンジャーや空挺を除隊になっちゃう人って意外に多いの。でも、その高いスキルが勿体ないでしょ?だから、借金を返済してあげる代わりにウチの隊員になってもらうンだけど、その説得の時に弁護士みたいなのが一緒だと、何かと話がもっともらしくなって都合が良いのょねー」


確かに法的にも正しいコトをしてる錯覚に…陥らないよ!まるで劇場型のオレオレ詐欺w

しかし、メイドと弁護士の二人掛かりで口説かれたらヲタクはヒトタマリもナイだろう。


ソレにしてもハンマーの被り物は不要だw


「で、シノハはイベント当日"仮入隊"した人の中から目星をつけて一本釣りを続けてたンだけど…その矢先に消息不明に」

「ええっ?じゃその"仮入隊"リストの中に次なる手掛かりが…」

「でもね。私、そーゆーの苦手なの。リスト渡すから、テリィたんの方で"当たり"をつけてくれない?しらみ潰しに電話して!ね?お願いょテリィたん。そのためにメイド服を着て来たンだから」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「アンタ、こんな悪質な勧誘して心が痛まねぇのかょ?死んでもやらねぇ。アンタらの仲間になる位なら、ネカフェで野垂れ死んだ方がマシだ!」

「あのですね。我々は特殊戦とは一切関係のナイ民間軍事会社(PMC)ナンですょ?」

「2度と電話して来ンな。バーロー!」


御屋敷の狭いバックヤードに籠城し、片っ端から電話して、シノハの手がかりを探す。

十中八九、怒声の飛んで来る嫌なリストだったケド、お陰で気になる事実も浮上スル。


シノハは、借金ビジネスに手を染めているw

みんな"借金ビジネス"って知ってるかぁ?


世の中には失業中に水上バイクを買い、シリコンで豊"尻"術をし、身の丈に合わない高級イタリア車に手を出す輩が後を絶たない。


つまり、払い切れない買い物をする人達だ。


そうした人達の消費は、最終的に消費者ローンという広大な借金の海に流れ込んで逝く。

その総額は、国内だけで5兆円に上り、そのほとんどがクレジットカードによるモノだ。


一方、カード会社は、一定期間未払いが続くと実はアッサリ借金回収を断念する。

手間をかけるだけ無駄と判断、債権を第三者に売り飛ばす。つまり借金の転売だ。


では、こうした不良債権を買うのは誰か?


ソレが借金ビジネスの連中だ。無論、ビジネスマンとはトテモ呼べない闇のハゲタカ達。

彼等は100万円の債権を10万円で買い、債務者に嫌がらせして半額の50万円を搾り取る。


コレでアッという間に彼等の儲けは40万円w


職業としては全くエゲツないが、何より実入りが良いので1度手を出すとやめられない。

元は、特殊部隊へのリクルート目的で始めた債務者探しも、いつの間にやら主客転倒?


しかし、元々こうした借金回収業者には元服役囚や仮釈放中の罪人を雇うことが多いが…

まさか、アキバハンマーの被り物をした特殊部隊のリクルーターまで加わっていたとはw


「おい!ココには2度と電話しない約束だろ?」

「いや。でも、借金を半分にしてやると逝う、ソッチにも美味しい話のハズでしょう?もう1度確認させて下さいょ」

「明日0330。和泉橋の上で待て。必ズ逝く」


やや?面倒な電話が散々続いた後でおかしなヤリトリをする奴の出現だw

キィム?シノハと会う約束をしてたのか?アクセントが妙だケド日本人?


サリィさんに話すと、御屋敷がハネたらみんなで様子を見に逝きましょうと逝うコトにw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


和泉橋は神田川に架かる橋で、上を昭和通りが走る上路式2ヒンジ製のアーチ橋だ。

"新々秋楼"のおばちゃんが、僕の"義理の妹"をロケット砲で吹き飛ばした橋w


あれから、もうすぐ1年か…


で、その時と同じ親水テラスの茂みに身を隠して0330を待つ。

僕の左にサリィさん。右側(していせき)にミユリさん。当たり前のように。


御屋敷が閉店した直後なので、2人共、メイド服のママだ。うひょひょ←

深夜とあって、人影が絶えた岩本町交差点の方向から、影法師が近づく。


シノハ…か?


果たして、影法師は和泉橋の中央で歩みを止め腕時計を見る。正に0330。

目を凝らし耳をすます…やや?波立つ音?神田川から?何かが浮上スル?


ズザァ!


堪らズに茂みから出てシノハに無言で挨拶、全員で神田川の漆黒の川面へと目を凝らす。

すると、アーチ橋直下の川面がニワカに泡立って、川面を2つに割り何かが急速に浮上!


真っ黒い…何だ?潜水艇?


第3章 アキバ戒厳令


「シノハ!突然連絡を絶って!みんな心配してたのよっ…ってソンなコトよりアレ何ょ?あの潜水艇は何なのっ?」

「あ、サリィ。よくココがわかったなwってか、こんな時にお前メイド服、う、萌える…あ!えっと、コッチは今、秘密作戦中だ。彼等は…おい、何をする!」

「ちょっち借りるょ!」


潜水艇は、手漕ぎボートサイズ、大きめのカヌーという感じ。上面に風防が付いている。

今、その風防が大きくスライドし、中からフロッグマン装備の男が現れ大きく手を振る。


味方(フレンドリー)?サリィさんが黒装束のシノハ?と話す隙にシノハの持っていたライトを借り、橋の上から潜水艇の男へ得意の手旗信号を送る。


男は、僕の手旗信号に気付き返答して来る。


「我ト話ス気ハアルカ?」

「先ヲ急グ。上陸スル」

「ヨウコソ秋葉原ヘ」


果たして彼?は、潜水艇から神田川へ飛び込み親水公園から上陸を図る。

一方、こんな真夜中でも目撃者がいて通報があったか遠くサイレンの音。


男は、素早く潜水装備を脱ぎ捨てると、神田明神通りの闇に紛れて消える。

直後にパトカーが続々到着。機動隊も来て、頭上にマスコミのヘリが飛ぶw


スパイがアキバ上陸!

今やアキバは戦場だw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


朝を待たズに既に大騒ぎだが、翌日、全てのマスコミは謎の潜水艇と消えたスパイ一色!

首相から各種大臣、軍事評論家、街のおっさんオバさん、リアルもヲタクも百家争鳴だ!


昭和通り10車線は完全通行止め、非常線が張られて警察、機動隊、自衛隊が3重に警備w

関係者以外は、潜水艇はおろか神田川の川面スラ見るコトは不可能で上空のヘリも一掃←


最初に潜入スパイと接触した僕達は、半日、正体不明の人達から尋問されるも、サリィさん筋から口聞きがあったか突然釈放となる。


翌日の御屋敷(ミユリさんのバー)


神田明神通りから先は立入禁止となり、昭和通り口から秋葉原公園にかけ、マスコミ、野次馬、スパイ?が入り乱れ立錐の余地ナシ。


御帰宅スルまで人混みをかき分け、その間何度も職質され警察犬や軍用犬に吠えられるw


「おかえりなさいませ…あ、テリィ様。もう満員で。今日は朝まで営業しちゃおかな?」

「おぉ。ミユリさんは、いつも前向きで良いなー」

「お泊り用の下着、用意して来なくちゃ!あ、テリィ様に御客様でした。コチラの方」


ミユリさんが目配せする先に、真夏日を熱帯夜が追うアキバに、修行?とも思えるサングラス+ハンチング帽+トレンチコートの男。


「やぁ。君がテリィたんか?私は、半島から来た総領事みたいな人だ」

「はじめまして、総領事みたいな人。暑くナイですか?」

「うー実は暑いwしかし、貴国ではこのスタイルが流行りだと聞いて」


ソレ、いつの話だょ?昭和?


「で、アキバのヲタクに何か御用ですか?」

「いや、コチラに転職しに来たキィムは、アキバに着くや、先ず貴殿と暗号対話を交わした、と聞いたモノでね。彼とは何を話したのかな?教えてもらいたい」

「え?僕と暗号対話?」


あ、手旗信号のコトかw


「ソレ、やっぱり気になる?ってか、闇夜に消えたキィムは、やっぱり転職目的でアキバに来たワケ?まさか2.5次元ミュージカルをヤリに来たとか?」

「トボけるな。彼は、資本主義的な金銭欲に取り憑かれ、祖国を裏切ったのだ」

「…資本主義的な性欲よりはマシでしょ?」


"総領事みたいな人"がビクッとスルw


「貴方には、メイドの愛人がいるそーですね。そのコト、ネットの右翼かゴシップサイトで呟いちゃおうかな。あ、やはりココは外交筋に駆け込んでからの信任状破棄、本国送還なんて手もアル」

「…くっ。アキバじゃヲタクはやりたい放題だな。怖いモノ無しか?」

「元々、廃人なんでね。失うモノがナイ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その翌日から、世界の諜報史上にも例を見ない大規模なスパイ網の摘発・検挙が始まる。

検挙者は政界、官界、財界の多岐に渡り、横顔も事務次官からシングルマザーまで様々。


「…長く霞ヶ関で二重生活を送っていた半島から来たスパイが次々と逮捕されました。潜伏中、職場の部下はもちろん、家族、御近所の方々まで、誰1人として気づく者はなかったとのコトです…」


連日、ニュースは多発スル逮捕劇と、国民生活に浸透したスパイ網の脅威を論じる。

そんな昼下がり、僕は炎暑の中、やっと通行再開となった和泉橋の上を歩いている。


陽光を乱反射する川面を見下ろすが、モチロンあの日見た潜水艇の姿は影も形もない。

フト、橋の南端の方から、ゆっくりと歩いて来る人影を認めて、僕は静かに回れ右を…


「テリィたん、やめとけ。北端にも部下がいる」

「誰かと人違いでは?こんな盛夏にトレンチコート+ハンチング帽の人に知り合いはいませんねぇ。見てるだけでも暑苦しいし」

「私は、その知り合い…みたいな人だ」


あちゃあ。なかなか口の立つ人だたょw

ポケットからハンカチを取り出し開く。


白っぽい"何か"を僕に見せる。


「コレが、何かわかるかな」

「モチロン、わかりません。ついでに、貴方が誰だかもワカラナイ」

「コレはね。脳味噌のカケラだ。君の愉快な被り物をした友達は、ある過ちを犯し、その結果、このカケラが私の手の中にある」

「何?シノハやサリィさんを…」

「違う。我々は同じ故国の男と、男同士の話をしただけだ」

「同じ故国の男?」

「そもそも女には人の頭を砕くのは無理だろう。あ、君のトコロのメイド服を着た彼女達は別だが」

「伝えておくょ」

「おいおい。コレでも私は、ヲタクをリスペクトしているのだ」

「僕も、常々老人に老いは無用だと思ってる」

「ほぉ。君とは気が合いそうだな。ソレに、口も固そうだ」

「いえ、柔らかいです。では、橋を渡ります」


僕達は、すれ違う。


第4章 ヲタクでいられれば


その夜の御屋敷(ミユリさんのバー)


「…ってなコトがあったンだょ」

「まぁ恐ろしい。ソレって"総領事みたいな人"にアキバのメイドと不倫してる件は、黙ってろって脅迫されたってコトですょね?」

「元"喜び組"のシウンから仕入れたネタだったンだけど、どうもホントだったみたいでカナーリ癇に障ったみたいだクスクス。でも、在日の世界じゃ常識だから余り情報価値はナイって話だったけど」


結局、今回の顛末は、新人獲得キャンペーンに大物スパイが本気で応募、見返りに在日スパイ網の情報を提供したと逝うコトらしい。


その後、そのスパイが、今も元気に特殊部隊で活躍中なのか、脳のカケラだけ残して成仏したのかは、太陽の届かぬ世界の出来事だ。


ただ、念のためミユリさんから連絡をとってもらったけど、サリィさんとシノハは健在。

引き続き、世界各地で日本の国益を守る仕事につくが、もし彼等をアキバで見かけたら…


ソレは、大事なリクルート中と逝うコトだから遠くから生温かい目で見守ってあげようw

あ、ソレからシノハの副業?の借金ビジネスだが、先日、彼の師匠を名乗る男が御帰宅←


ハゲ頭のアラフォー男だw


「数ヶ月前、元レンジャーって奴と借金ビジネスを始めた。奴は初めてで、俺がコツを教えてやったンだ」

「へぇ。儲かるの?」

「おぉ!俺に出資しろ!他にも著名な奴等からの出資を受けてる。大儲けしよーぜ」


絵に描いたような胡散臭い話だ。だが、騙し方さえ知ってれば、カモられるコトもナイ。


「巨額の債権を格安で買ったのか?」

「文字通りの"大金脈"さ。数千万円の債権を二束三文で買ったばかりだ」

「二足三文?そうは逝っても債務購入の資金が必要だろ?他には誰が投資してルンだょ?」

「犯罪一家の生き残りでドンのアニョ。姪の名前を冠したダミー会社から投資してる。外神田の場外馬券を牛耳る女帝スーイ。ランボー(者)はセックスクラブ経営者。永田町の金と若い男女を結びつけている。まぁイチイチ省くがキナ臭い奴ばかりだ」


知ってる名前が出たトコロで話題を変える。


「自分で逝うな。その出資金を取り逃げしたら、アンタの脳味噌のカケラを拾うコトになりそうだ。で、その元レンジャーと儲けは山分けか?」

「ソレが…奴は突然廃業したンだ」

「廃業?何で?」

「わからない。奴は、大借金を抱えている連中を見つけては直接車で回収に逝き、取り立ててた。で、先週も外回りに出たが、戻るなりもう辞めると」

「何があった?誰と会ってたンだ?」

「知らないが、借金ビジネスはもう辞めると。未だ"大金脈"の3分の1も電話してナイのにな」

「ソレじゃアンタも頭にきたろう」

「ようやく本題だな?俺が奴を殺したと思ってルンだろ?何せ前科者だ。ただし、俺にはアリバイがアル。翌日から帰省で俺は熊本に帰り、昨夜戻ったばかりだ」

「へぇ。この時期、東京から帰省してコロナでイジめられなかったか?」

「散々な目に遭った。楽しみにしてた甥の結婚式にも出られなかったンだ!」


そりゃ可哀想にw


しかし、彼が"大金脈"とか呼ぶリストを未だ所持してると盗品の不法所持になるなぁ…

なんてボンヤリ考える内に、その夜は終わったが、次の夜、また変わった御帰宅がアル。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ミユリ姉様!ただいまっ!」

「あら、マシロちゃん。おかえりなさいませ…だけど、何か御用かしら?」

「はい。姉様のTO(トップヲタク)を殴りに」


えっ?!と思った時には、もうど突かれルw


「ゲホゴホ!何だょいきなり?!」

「だから、テリィたんを殴りに来たの」

「だから!何で殴ったの?」

「いつも図星でムカつくから」


え?ソレって罪なのか?

早目に免罪符を切ろうw


「な、何ょコレ?」

「このリストは、マシロちゃんのモノだ。マシロちゃんは、シノハさんの"推し"だったから、彼が回収してた債権を相続する権利がアル」

「債権?何の話?私は、彼から何も聞いてナイけど…私達はどうしてそんな仲になってしまったのかしら。なぜなの?」

「わからない。でも、そのリストでマシロちゃんは富豪になれるょ。シノハの遺志とは違うケドね。マシロちゃんがソレをどう使うかは、貴女次第だ」


すると、先ずマシロさんは僕を見て、ソレからミユリさんを見る。

ミユリさんは、微笑みを浮かべて、自分用のカクテルを作り出す。


「マシロちゃん、新しいTOと今朝、素敵な時間を過ごしたでしょう?」

「は、はい?何でソレが…」

「カラダのリラックスが歩き方に出てるわ」


ミユリさんの一言で、マシロさんは真っ赤になって黙ってしまう。

ハゲ頭から巻き上げた"大金脈"リストは、どうも不要のようだ。


ミユリさんが続ける。


「ヲタクはね。最初は1人が楽しいけど、アキバ生活に慣れると、1人だと街が広く感じられるの。だから、そーゆー時は、いつでも御帰宅すれば良いと思うわ」


マシロさんが答える(僕は1歩離れるw)。


「私は、コレまで"アキバは天国だ"と話す口先だけのヲタクを大勢見て来ました。正直、テリィたんとミユリ姉様のやり方に疑問があったコトも事実です。でも、今回のようにアキバのヲタクが1つにまとまったのを見たのは、初めてでした。この街にいるコトを、私は誇りに思います。ありがと、ミユリ姉様」


お?メイド長自ら乾杯を?珍しいw


「御帰宅中の御嬢様、御主人様。私達は、最近大事な宝物を2つも失いかけました。第2の故郷アキバとソコに集うヲタクのみなさんです。私は、この街が大好きだけど、万一、この街とみなさんのどちらかを選べ、と逝われたら、迷わず大事な街を手放して、みなさんを選びます。でも、運の良いコトに神田明神様が私達を救ってくださいました。2度も。だから、今宵はみんなで乾杯しましょう。我らが愛すべきアキバと何より大切なヲタクのみなさんに。乾杯」


うーん突然なのに素晴らしいスピーチw


今以上の魔法の言葉は見つからないや。

やっぱりアキバはメイド長が回してるw



おしまい

今回は海外ドラマでよくモチーフになる"借金ビジネス"をネタに、特殊部隊のリクルーター、彼をトップヲタクに持つメイド長、リクルートされ潜水艇で亡命してくる大物スパイ、借金ビジネス世界の住人達などが登場しました。


海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、夏コミなきまま残暑に萌える秋葉原に、戒厳令を発令しながら展開しています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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