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君にアイリスの花を  作者: kit
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第二章 日常

二章できました!

今回は、この話の色々な設定を比較的多く盛り込んでいます。


 教室に入ると担任の先生が入ってきて、田郷が起立・礼・着席を済ませた後、すぐにホームルームが始まった。柴村の席は窓側の最後尾だった。いわゆるお約束の場所だそうだ。逆に神原は教室のど真ん中だった。


「えーっと、皆おはよう。休んでる人と連絡ないならもう終わるぞー」


 そう言うと先生は教室を出ようとしていた。担任の名前は山本先生で、本名は山本康弘やまもとやすひろ。柴村が言うには、先生なのに面倒くさがり。なのに、生徒の相談をよく聞いてるらしい。生徒に優しく、意外と生徒からは人気があるとか。ニックネームもついていて、下の名前から「やっすー」なんて呼ばれ方をしている。ただ、他の教師からは、その態度に対して冷たい目で見られている数学教師である。

 あの、先生。と田郷が立ち上がり、何か言いたそうだった田郷だが、いえ、やっぱり何でもないです。と言って座ってしまった。皆はなんだ?と思いながら田郷に視線を向けていた。


「田郷どうしたー?何かあるのかー?相談乗るぞー?ここで話しにくいなら個別でもいいぞー」


 と、先生はそう言って教室を出て行った。どうやらホームルームが終わったらしい。すると田郷が柴村の方に歩いてきた。


「柴村さん、ホームルーム前にあったこと、もしクラス内の大変なことだったら私もクラス委員として知りたいし。勝手に皆の前で相談しそうだった。けど、心配しなくて良いっていうのは、言えない事情があるのだろうし、プライバシーもある。だからやっぱり聞くのはやめたわ。勝手にごめんなさい。もし話したいなら、私はいつでも待ってるから。」


 どうやら、さっき神原のまわりに集まっていたことについて追及したかったらしい。田郷さんなりの気遣いだったらしい。だが、ここまで来ると大きなお世話な気がするのは黙っておこう。


「ううん、本当に大丈夫だから。田郷さんありがとう。」


 柴村はがそういうと、田郷は分かったわと言って自分の授業準備に入った。


「柴村、なんか田郷さんすごいな、、」

「まぁ、心配してくれてる分、良い人ではあるんやけどね。いつもやり方が大きすぎて、正直困ることもあるよ。」

「なるほど。ところで、さっきから気になってたんやけど。あの花瓶の置いてある席って・・・」

「うん、そうやで。竹田君の席だったところ。」


 改めて聞くと、やっぱりそうなんだと言わざるを得なかった。教室の席は横6列×縦5列で、窓際の列の真ん中の席だった。柴村と同じ列だ。机の上に白く細いシンプルな角々した花瓶。そこに白いユリの花が活けてある。初めてそれを見たものはびっくりするだろう。普通は誰かいじめで置いているのだと勘違いするだろう。

 しかし、実際に一週間前に、この席に座っていた者が亡くなったという事実を知っているクラスの面々は、その席を見ると悲しそうな顔をする。たとえ、その人と関わっていなくともクラスメイトや優しい人なら、存在していたはずの人間が亡くなっているのが顕になっている状況を見れば、やはり悲しくなる。柴村と同じなら俺も高校2年生だったんだろう。

 そうして話していると、柴村の隣の席のヤンキー、もとい大原柚子おおはらゆずが話しかけてきた。髪は金髪で、普段喧嘩したり、皆からは怖がられている。


「おい柴村。お前さっきから誰と話してんだ?誰もおらんのに。朝から頭大丈夫か?」

「うん、大丈夫大丈夫。独り言ってことにしといて笑」

「なんでもないなら別にええんやけど。私より頭悪くなったらシャレにならんで?笑」


 そう言って大原は笑いながら一時間目の準備を始める。確かに傍から見れば、誰かと話してるようだが、俺のことが見えてないから目の前には誰もいない。大原の見た目は怖いが、案外優しそうだ。柴村と俺は気を付けやんななと思った。

 それから国語の授業が始まり、次の時間次の時間と授業を受けて昼休みになった。昼休みになった途端、神原が柴村にご飯食べよう!と勢いよく誘ってきて、一瞬怖いくらいだった。


「ねぇ渚、いつも一緒に食べてるんやからそんなに怖い顔しやんといて笑。一緒に食べるから。ね?」

「朱花音、私は今めちゃくちゃ聞きたいことが山ほどあるの!本当は授業中からずっと聞きたくて、昼休みになるのを待ってたの。」


 朝はあんな状態だったのに、今度はとてもテンションが上がっている神原さん・・・。今日は本当に大丈夫なんか?保健室に行かないといけないのでは?と思った二人だが、そんなことは、今は元気だからいいだろう。とりあえず二人とも、弁当を出してきて柴村の机で食べ始める。


「朱花音、朱花音。ホームルーム終わった後、竹田君と話してたんやんな?あの大原さんも不思議そうに話しかけてたし。」

「うん、そうやで。竹田君の席の話してた。ほら、花瓶があるから。」

「そっかー。確かに気になるよね・・・。でね、朱花音。私も!竹田君とすっごく話したいんだけど!お話しできるんかな?今も近くには・・・いるんだよね?」


 じゃあ、竹田君。渚に話しかけてみて?と俺に振ってきた。例えばどんな話すれば良いんだ?と柴村に聞いた。


「そうやなぁ・・・あ、そっか記憶喪失だもんね。話題分かるわけないか」


 すると神原が記憶喪失・・・?本当に?っていうかなんて言ってたのかわからないけど。と尋ねてきた。柴村はうんと答えた後、俺のことを話し始めた。


「そうやったんか。起きたら朱花音の布団で起きて・・・。記憶喪失なんや。」

「あと、俺は柴村が家出てから分かったことだけど、物に触れないし、壁をすり抜けるし、一定の距離離れると柴村に引き寄せられて、離れられへん。」


 これには柴村も驚いていた。そっか、だから学校まで着いてきたんやと口にしていた。そりゃあ初めて言ったからな。と二人で話していると。声が聞こえなくて会話に入っていけない渚が、仲間はずれになっている状態だ。そこで神原は、柴村にこれからずっとの通訳をお願いしていた。通訳が終わると神原も同じ反応をしていた。すると柴村が離れられない距離ってどれくらいなん?と聞いてきたので正直にわからんと答えた。


「じゃあ、実際に計ってみよう。お風呂とか着替えのこともあるし!!」

「うん!そうやんな//」


 神原は赤面しながらも、なぜか嬉しそうだったが聞かないでおこう。なるほど、確かにお互い正確な距離を知っといた方が良いよな。じゃあ、放課後に計ろうと柴村が提案し、昼休みが終わった。

 


 午後の授業が始まって放課後までの授業中、柴村が生前俺がいつも一緒にいたであろうクラスメイトの友達を紹介してくれた。


 まずは、廊下側の真ん中に座っている上野大智うえのだいち。髪はスポーツ刈りだ。サッカー部で、ムードメーカー的存在。運動神経は良いのだが、頭は悪いらしい。俺とは高校からの親友だそうだ。サッカーのポジションは右サイドのMFミッドフィルダーらしい。


 次に、俺の前の席。つまり窓側の前から2番目の席に座っている大内陸おおうちりく。眼鏡をかけ、髪は男子としては長いほうだった。彼は女子から人気があるらしい。なんでも、眼鏡を外した時がイケメンなんだとか。陰では伊達メガネ王子と呼ばれているらしい。誰が付けた名前かは知らないが、ネーミングセンスは微妙だと思った。運動は苦手だが、成績は田郷に並ぶらしく、田郷にはテストで勝ったことがない。ちなみに田郷さんの席は廊下側の一番前だった。



 ようやく授業が終わり、放課後になった。これから皆部活が始まる。しかし、この西花せいか高校は強制入部制ではないため、帰宅部ももちろん存在する。この高校はバスケットボール部、吹奏楽部、太鼓部で有名だ。偏差値が55で、そこそこな公立高校である。


 「よし、部活行こう。そこにメジャーもあるし。」


 そう言うと柴村は神原とそのまま体育館へ向かった。そして二人は更衣室から出てきた先輩に挨拶した後、更衣室に入ろうとした。が、俺がついてきているので、柴村と神原が絶対に覗かないでねと念を押してきた。もちろん俺は外で待っていた。

 しかし、部活とはいえ今この体育館は女子しかいない。ここは体育館の半分だが、向こう側には女子バレーボール部が練習している。更衣室には入れなくとも、運動している女子を見るだけで心臓の高鳴りはすごかった。まぁ、心臓はないけど。そんなこんなで更衣室から練習着に着替えた二人が出てきた。柴村が片手で持っているのはメジャーだ。更衣室から持ってきたらしい。


「よし、じゃあ、さっそく。竹田君、思いっきり私から離れて。」


 そう言われて俺は、体育館の反対側を目指して全力で走った。女子バレーボール部の手前まで来たところで、また謎の引力で引き戻された。一番離れられる場所に止まって、神原が柴村と俺との距離を測ってくれるらしい。柴村の指示で、神原が柴村の方からメジャーを伸ばしながら歩いてきた。二人で合図を送って長さが計れたらしい。


「何mやったん?」

「だいたい10mくらいかな。」


 10mといえば、だいたいサッカーのPKをする時、ゴールからキッカーの距離と聞く。正確には11mらしいが。柴村は近くもないけど、そんなに遠くでもないなーと言っていた。そうしていると部活がはじまるのか、先輩が集合を呼び掛けていた。そして、すぐに練習が始まり、柴村と神原は一生懸命頑張っていた。



 あれから3時間くらい練習して、やっと家に帰る時間になった。柴村と神原は一緒に帰っていた。二人の話によると、柴村のポジションはPG(ポイントガード)で、パス出しと司令塔が基本の役割だ。神原のポジションはSG(シューティングガード)で、主に3Pシュートをメインに狙いに行き、相手の同じポジションの3Pシューターを止める役割があるらしい。神原とは途中で別れ、柴村と俺は柴村の家に入っていった。

 柴村の父親は浩光ひろみつといって、会社で働いて、寄り道もせず、基本は夜中に帰ってくるらしい。母親はあおいといって、柴村が小学校6年生の時に癌で亡くなった。柴村は母親の仏壇にたたいまと言って、晩ご飯の用意を始めた。小松菜の和え物に、カツオ節ご飯だった。食べ終わったら洗濯をし、洗濯物を部屋に干していった。その後、課題を終わらせ、布団を敷いて寝ようとしていた。


「これでよし、竹田君。私はもう寝るよ。あと、今朝みたいに隣で寝やんといてな。」


 そう言って柴村は眠りについた。俺もその後に、少し離れたところで寝た。


この話を読んでくださっている読者の皆様。

読んでくださり、誠にありがとうございます!

では、次回まで

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