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君にアイリスの花を  作者: kit
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第一章 目覚め

初めまして!

kitです。今回初めて小説書きました!

この話は完全オリジナルのフィクションであり、実在する人物とは何ら関係はありません。

なお、本作は関西弁で書いています。どうかお許しを。

趣味の一端として始めたので、続けられるかどうかはわかりませんが

どうぞよろしくお願いいたします。


 第一章 目覚め


「ふぁ~、もう朝か・・・ん?」


 朝の日差しが良く入っていて、気持ちのいい朝だ。俺は今日もいつも通り起きた。あれ?いつも通りってなんだ?目の前に柴村朱花音しむらあかねが寝ているのは、普通、なのか?っていうか、柴村朱花音・・・?だめだ、名前しかわからん。あとは、ここどこだ?柴村の顔がすごく近い。やばいなんか、めちゃくちゃドキドキする。長い黒髪がつやつやしていて、目を閉じている寝顔がすごくかわいい。いやいや、見とれている場合じゃない。そもそも、なぜ俺は同じ布団に寝ているんだ?

 俺は必死に思い出そうとした。この危機的状況から逃れるために。でも、ここに来るまでの記憶がない。というか、目の前の女の子の顔と名前は一致しているけど、それ以外の記憶がない。昔の記憶も・・・。これは記憶喪失なのだろうか。でも、記憶喪失だったら、少し安心した。不幸中の幸いで、知人が誰か判断できる程度はできるようだ。そう思考を回転させているうちに、柴村朱花音が起きる。


「ん・・・」


 初めは少し開け、閉じていた目が次の瞬間パッチリと勢いよく開いていった。


「え??? な、な、なんで竹田君がおるん!?」


 あまりにも驚いている彼女に対して、俺は何故かいたって冷静だった。俺は知らん。起きたらここにいた。動揺するのも無理はないだろう。朝起きたら隣に男が寝ていたのだから。しかし、朱花音が驚いていたのはそれだけが理由ではなかった。


「なんで・・・? 竹田君が生きてるん??」

「は?なんで死んでんだよ笑」


俺は冗談交じりに言った。唐突に死んだ者扱いで言われたら、ツッコミ入れてでも笑ってごまかすしかない。


「一週間くらい前だよ。お葬式もしたよ。」


 ノリで言ってるんだよな、?と言いたいところだが、柴村はお化けでも見るような顔をしていたし、ずっと口を開けたまま放心したように固まっていた。おーい、と呼び掛けても反応がない。仕方ないので、試しに顔を柴村に近づけてみた。すると、わっ!近い!あんまり近づかんといて!今、頭の中整理してんねん!と拒否された。

 正直、俺の方がわからないことは沢山あると思う。だって、いきなり死んでるとか言われたからな。地に足も着いているし、俺が幽霊って感じはしないんだよな。だけど、柴村に触れない時点で霊体ではあるのか。思考を巡らせるが、なんせ記憶喪失の俺には分かるはずもなかった。

それから、しばらく沈黙が流れた後、とりあえず柴村に聞いてみる。


「じゃあ、なんだ?俺は今、死んでる状態で、記憶喪失で、たぶんお前の布団で寝ていた。間違いないよな?」


 記憶、喪失・・・?と言って首をかしげながら、柴村はなにやらブツブツと考え込んでいる。知人というだけあって色々知っているんだろう。あえて詳しいことは聞かなかった。これ以上情報を増やせば、話せなくなるくらいに俺の頭がいっぱいだからだ。


「あぁ、そうだ。俺には今、知っていたであろう人の名前と顔以上の記憶はない。」


 そう、なんだ。と柴村はうなずいていた。と、そこでようやく朱花音は気が付いた。竹田君が添い寝してたということは、私の寝顔も見たということだと。


「きゃー!!!!」


 柴村はいきなり悲鳴の声を上げた。俺はいきなり響いた甲高い音にびっくりして、思わず耳をふさいだ。うわ!びっくりした―!いきなり叫ぶなよ。


「竹田君がびっくりしてどうすんねん!それより、私の寝顔見たんやろ!」


 確かに見た。いや、じっくり魅せられた。それはもう、もう少しで惚れるくらいにかわいかった。もし、あのままくっついてたらどんな反応してたんやろ・・・。と少し妄想にふけるが、今にも鬼が出そうな勢いだったので、やめた。


「あぁ・・・見たぞ。柴村の寝顔、めっちゃかわいかった。」

「なっ!?・・・」


 柴村はそれ以上話そうとしなかった。しばらく顔を隠しながら、顔を赤らめていた。柴村はもうお嫁にいけない!など言っていた。柴村もまんざらではない、ということを確認してホッとした。照れているんだと、今にもニヤニヤしそうな顔を必死に堪えながら思った。




 あれから柴村とはほとんど話さなかった。というか、明らかに避けられていた。まぁ、自分の状況を考えれば、ごく当たり前のことだった。柴村からしてみれば、俺は怖がられる存在だし、第一知っている人の霊である。友人だったり、好意を寄せられていたならともかく、あまり関わりがなければ話すこともないだろう。ということは、俺は柴村とはそんなに関わってなかったんだなと思った。

 柴村の家は、良くは言えない古いアパートだった。まずは着替えのため、俺は一旦部屋の外に出た。男としてはすごく、すごく見たいところではあるが、怒られて居場所を失いそうなのでやめた。柴村の朝食は、モヤシだけの炒めものだった。


「なぁ、柴村。ほんまに、ごはんそれで大丈夫なんか?」


 柴村はビクッと一瞬反応した後、いつものことだよとわかりやすい作り笑いをしていた。俺はそれを見て、さすがに柴村にひどいことを言ってしまったのかもしれないと思った。

 柴村は学校に行くために登校していた。俺もついていった。最初は家にいるつもりで留守番をしていたが、柴村が出て行ってから数分で急に何かに体を引っ張られて外に出た。その際、柴村の家の壁をすり抜けて出てきた。その引力に体が引っ張られる度、抵抗を試みたが無駄だった。なので、仕方なく柴村についていく。ちなみに、抵抗していて分かったことだが、俺が引っ張られた原因は、もしかしたら柴村かもしれない。柴村が歩く度に、歩いている方へ引き寄せられる。どうやら俺の行動範囲には、制限があるらしい。

 登校中、俺はこの体のことを少しずつ理解していった。透けるといえば透けるし、普通の人間みたいに歩いてもいる。ちなみに俺は裸ではない。今更だが、起きた時から、生前の部屋着をそのまま着ていたようだ。

 だがやはり、俺は周りの人には認識すらされないようだ。周りの人は、迷いなく俺にぶつかって体を通っていく。この感覚がなんだか不思議だった。当たり前のことと言えばそうだが、何か失っている気がして気持ち悪い。まぁ、記憶はないが。この感覚のように、死んだときもこんな風だったのだろうかと思った。

 柴村は相変わらず俺から離れて歩いていた。本人は今嫌がっているだろうが、柴村から離れられない以上はこの現象に付き合ってもらうしかない。俺はすでに柴村に対しては、不思議な安心感があった。




 ようやく学校であろう場所についた。とにかく何もわからない俺は柴村についていって、彼女の教室に入った。


「おはよう、朱花音」


最初に声をかけてきたのは、神原渚かんばらなぎさだった。黒髪でショートカット、所々毛が跳ねていて可愛らしい女子だった。おはよう、と柴村も挨拶をした。挨拶の後、神原は首をかしげながら柴村をじっと見ていた。すると神原は朱花音?今日、どうしたん?元気ないやんと話しかけてきた。


「いつもやったら、朝からあり得へんくらいのパワーで、おはよう!って言うやん?」


 これに柴村は、あー・・・うん、今日は元気ないかな~。朝からびっくりしすぎて、なんか張り切れへんかな。あははは、と作り笑いで返した。

 一泊おいてから、柴村は神原にちょっとこっち来てと言ってから、神原の手を引いた。急に何だろうと神原は不思議そうだった。手を振りほどかないので、信頼しているのだろう。柴村は人影のない場所へ連れて行かれた。そして、真剣な顔で柴村は口を開いた。


 「ねぇ渚。もし・・・死んだ人が幽霊で見えたら、どうする?」

 「え!?どういうこと?」


 そんなオカルト的なことを急に言われたら、驚くのは当たり前だ。それに神原は柴村の今までの生活で、そんな趣味がないことを知っている。だから余計に、そういうことを言う子ではないと思っていた。朝から元気がないのはそれが原因だと神原は察した。いつもと明らかに違うのはこれだと。


 「ねぇ朱花音。それ、ほんまやんな?」


 ここで柴村は思った。何でもないと言って話を終わらすか、本当のことを話すか。普通に考えたら自分の言っていることは、正直めっちゃ痛いし恥ずかしい。距離を置かれるかもしれないと思った。でも、私は渚を信じて話す。


 「朱花音?どうしたん?さっきの、ほんまのこと?」

 「うん、朝起きたら目の前におったよ。その・・・竹田君が」

 「ええ!?竹田君!?嘘、ほんまに!?」


 うん、と柴村が返すと、神原がおもいっきり泣き出した。声が大きすぎて、周りの人がそわそわしている。柴村は必死に神原をなだめている。神原は、もともと気が小さく、柴村と同じバスケ部で、何度か泣いているのを見たことがあったが、こんなに泣くのは見たことがない。すると柴村は


「渚。大丈夫。今そこに、竹田君いるよ」


と言った。言った瞬間、それまで俯いていた体を跳ね上げ、両手で柴村の肩を持ち、柴村に向かって急に問い詰めた。


「え!?ほんまに!?ほんまに!?近くにいるの!?どこ!?私にも見える?ねぇ!?」


 まわりは、あいつどうしたんだ?先生に言ってくるか?など、ザワザワしている。神原の豹変に、柴村も動揺している。俺は仕方ないと思い、神原さんの隣に行って柴村に話しかけた。


「なぁ、柴村。神原さんって普段こんな感じなのか?」


 違うよ、全然違う。普段はおとなしいよ。と柴村は俺に顔を向けて話した。すると、神原は、え?何が違うの?と必死な顔で柴村に問いただしている。


「渚!待って!ちょっと待って!一旦落ち着いて!今、竹田君と話してるから!」

「え!?あぁ、近くに竹田君いるんだもんね。どこにいるかわからないけど。竹田君、いや、海斗くんとお話し、できるんだ・・・」


 柴村の一言で神原はやっと落ち着いた。神原は、笑みを浮かべながらそっか・・・と呟いていた。落ち着いたことで、ようやくまわりが見えるようになった。いつもは人影がない場所でも、まわりには沢山の人が集まっている。神原は、おどおどしている。すると、クラス委員長の田郷椿がやってきた。


「あなたたち、何をしているの?早く教室に戻りなさい。ホームルームが始まるわよ」


 と、まわりの生徒に言って、囲いを分散させてくれた。黒髪の上からポニーテールで、性格はきっちりしている。学年でも、テストの成績はトップ3に入るらしい。柴村と神原に向かって、どうしたの?と尋ねてくる。


「ありがとう、田郷さん。あのままじゃ、逃げるにも逃げられへんかった。もう大丈夫やから心配せんでええよ。」


そう言うと、柴村は神原を連れて教室へ行った。


まずは、この話を読みに来ていただいた読者の方ありがとうございます!

できれば、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

では、次回まで

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