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第55話 勇者エリアスの処刑

勇者エリアスの最後の2時間、俺とエリスは彼と時間を共有した

すごいツッコミ来そうな気配が......

刑の執行の前に2時間程、人と話す機会が与えられる


 エリアスは希望しなかったし、誰もエリアスの話を聞こうとする者はいなかった


 しかし、俺とエリスがエリアスとの話す機会を希望した


 英雄の俺の意見は簡単に通った。エリアスも受けた


「俺の最後の会話はよりにもよってお前なのか?」


「......」


「笑いにきたのか?


 俺への復讐か?」


「違う、俺は賢者マリアさんの遺書を渡す為に来た」


「マリアが、今、何て言った?」


エリアスはこれまで見せた事が無い表情をした


「マリアさんは自害した。お前を地獄で待つそうだ」


「何故だ、何故、普通の幸せを掴まない?


 俺と関わって、幸せになどなれないだろう!」


信じられない事にエリアスは目に涙をためていた


「マリアさんはお前だけを愛していたんだ


 永遠に結ばれない事を知っていても」


「そんな馬鹿な女がいるのか?」


「マリアさんはそういう人だったんだよ


 マリアさんから、遺書を預かって来た」


俺はエリアスにマリアの遺書を渡した


 エリアスは真剣にマリアの遺書を読んだ


 そして、泣いた。あのエリアスが泣いた


「レオン、俺はお前が羨ましかった。気立てのいい許嫁、


 お前に懐く妹、俺にも妹がいた。いつも俺に懐いていたが死罪になった


 お前は俺が失っていたものを全て持っていた


 だから、お前から奪った。お前から全てを奪うと快楽が得られた


 ああ、俺は最低な男だ。だが、俺の家族や大切な人は皆死んだ


 誰も罪なんて犯していない、何故俺ばかりが、


 だから、他の幸せな奴らが憎かった。奪った時は最高に気分がよかったよ」


「マリアさんが言っていた、憎悪は憎悪しか呼ばないと」


「違いないな......


 俺はお前の幸せも奪ったが、自分の一番大切な人の幸せも奪った」


エリアスはマリアの事でかなりショックを受けた様だ


「エリアス、エリアスはまだ私の事を思い出せないのですか?」


「お前の事を思い出す?」


「エリアスの幼馴染にはもう一人いませんでしたか?


 エリアスとマリア、そして年下のもう一人の幼馴染の事は?」


「お前、まさか、あのエリスか?


 行方不明になってしまったエリス、俺とマリアは心の底から悲しんだよ」


「エリスはそのエリスです。エリスは奴隷として売られたんです


 お母さんに」


「そんな、あのおばさんが!


 エリスとあんなに仲が良かったじゃ無いか?」


「エリスの家族は貧しくて、誰かがいなくなる必要があったんです」


「何故言ってくれなかったんだ?


 お前が、あのエリスだったら、俺は、俺は......」


「エリアスは私を人として見て無かったではないですか......」


「エリス、お前は時々俺を睨んでいた。何故だ?」


「エリアスが道中、アリシアさんをレオン様から奪う次第


 全部見てました。エリアスがレオン様を見る顔、


 あんなエリアスの顔は見たくなかった」


「俺は幸せな奴らが憎かった」


「それで、今は幸せなんですか?」


「最悪だよ。何やっても許される筈だった


 魔王を封じられるのは俺だけ、


 まさか、魔王を滅ぼす奴がいるとはな、は、はは」


「私はいつかエリアスがエリスに気がついてくれたらいいなと思ってました


 でも、エリアスは私を性奴隷として売ってしまった」


「気がつかなかったんだ。お前だとわかっていたら!」


「誰であろうと、してはいけない事でしょう?」


「そ、それは......」


「もう、その事はいいです」


「ああ、俺はなんて事を!」


「エリアスは今、どんな気持ちですか?」


「死にたく無い、お前がいるなら、生きていたい、お前と話したい、


 さっきまでは、死んでもいいやって思ってた


 だけど、今は......」


「エリアス、死んで構わないという人はいません


 死にたく無くて当然です


 エリアスは今、普通の人に戻ったんです」


「俺は本当に馬鹿だな、こんな事になるなら、勇者のタレントなんて欲しくなかった」


「エリアス、人の運命は女神様が決めるものでも無いです


 自身で決めるものです。エリアスは自身で選んでしまったんです」


「ああ、俺は自分で、自分とたくさんの人を不幸にした。俺のせいだ」


「エリアス、もうこれ以上エリアスを責めません


 レオン様、いいですか?」


「ああ、二人で積もる話でもするといい」


俺はエリスの考えがわかった。エリアスへの罰、


『エリアスは死を賜っても、皮肉な笑いを浮かべていた』


エリアスは人としての心を無くしていた。彼への罰、


 それは人らしく、死にたく無いという気持ちで死ぬ事


 自身の行いを後悔し、逝く事、それがエリスの考えだろう


 エリスのエリアスへの最後の配慮......


「懐かしい、あの街の、あの頃の話をしましょう」


エリアスはエリスと話しを始めた。俺は口を挟まなかった


 二人の子供の頃の思い出に話が弾んだ


 エリアスの表情はこれまで見た事の無い表情だった


 マリアは言っていた、エリアスは本が好きな気弱な人物だった


 今のエリアスはおそらく、昔のエリアスなのだろう


 そして、時間が来た


「ありがとう、エリス、レオン、最後に残された時間を、有意義に過ごせた


 マリアの事を教えてくれてありがとう


 エリスと話しをさせてくれてありがとう


 レオン、最後に笑ってくれ、俺を」


エリアスは頭を下げた


 俺は何も言えなかった。赦す事は出来ない


 かといって、彼をこれ以上追求しても意味は無い


 彼はこの後、刑に処されるのだ


☆☆☆


エリアスは市中を引き回された。民から罵倒の声と石飛礫を投げつけられた


 裸足で枷をされ、掌に穴を穿たれ、縄を通され、引かれ、市中を......


 掌からは血が流れ、裸足の足からも、石飛礫で出来た傷からも血が......


 アリシアとベアトリスの時もこうだったんだろうか?


 エリアスが刑に処せられる時、彼は微笑んだ


 あの白々しい笑顔では無かった


 彼はマリアとの再会を楽しみにしていたのかもしれない


☆☆☆


俺はなんとも言えない感傷に浸った


 あれ程望んだ、勇者エリアスの処刑、しかし、そこに爽快感はなかった


 忘れるしか無いのだろう、アリシア、ベアトリスの事を


 二人はもう帰ってこない


 それに、たとえ『魅了』の魔法にかかっていたとしても、俺はされた仕打ちは忘れられない


 特にあの日の夜の事は忘れらない。二人を見ると思い出してしまう


 俺は二人を忘れてエリスと新しい人生を生きよう


 エリスなら、新しい人生を俺に与えてくれるだろう。そんな気がした

エリアスの処刑に関するコメント希望します。島風的にはエリアスは自身が死ぬ事にはあまり執着がなく、マリアが死んだ事やエリスの正体に気がつかなかなった事の方が辛かったという設定ですが、過去の読者様のご意見から考えると、もしかして、物理的にえぐい処刑の方がいいのかなーと思いました。ただ、R15である点をご理解の上、よろしくお願いします。それ程の事はできない点はご理解ください。R18行きは勘弁してください

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読んで頂いた読者様ありがとうございます☆ 本作について、 「ちょっと面白かった!」 「島風の新作を読んでみたい!」 「次は何を書くの?」 と思って頂いたら、島風の最新作を是非お願いします。リンクがありますよ~☆ 読んで頂けると本当にうれしいです。 何卒よろしくお願いいたします。ぺこり (__)
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― 新着の感想 ―
[一言] ご返信ありがとうございました また言葉足らずで申し訳ありませんでした 感想を求めてらしたのでこの作品を読んで直ぐに思った事だけを書いてしまいました 切なくなりましたが、感情が激しく揺さぶら…
[一言] エリアスはやるだけやって最後スッキリして死んだように見えました つまり罰を受けるべきエリアスが精神的に救済されたように思いました 受けるべき罰は精神的な苦痛、苦しみがなければ被害者は納得でき…
[一言] 個人的には良い最期だと思いますよ。 でないと無駄死にばかりになってしまいます。 読み手は第三者視点だからわかりますが、民衆はその時見たもの、聞いた事が全てなので、処刑された自害した人が悪…
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