表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/57

第49話 遺髪

二人の変わり果てた姿に俺は膝をおり、ただ、泣くしか無かった

俺は処刑場に来ていた。二人の刑が執行されたのは3日前だった


 二人は仲良く並んでいた。首だけが、晒されていた......


 俺は膝をついた。頬に涙が伝った。アリシアもベアトリスも俺を裏切ってなどいなかった


 涙が止まらなかった、嗚咽が止まらなかった


「お前、こいつらの仲間か?」


誰かが来た


 この街の市民だろう。身なりは貧しそうだった


「俺の妹が餓死して死んだのに、こいつらは豪華な飯を食って」


「私の子供も栄養が足らなくて」


「お前も仲間か?」


「そうです。仲間です」


『ビシ』


石つぶてが飛んで来た。頭に当たる


 たくさんの石つぶてが飛んで来た、顔や頭に当たる。俺はひたすら堪えた


 彼らの気持ちはわかる。だけど、二人だって無実だったんだ


 でも、彼らの二人への嫌悪の気持ちがなくなる事が無いのもわかっていた


 しばらくすると彼らはいなくなった


 おそらく、時間が来たのだ。晒されるのは3日間


 もう時期、時間だ


 そして、俺に声をかける者がいた


「あんた、この子達の知り合いか?」


男だった。奴隷だろう。処刑場の処刑人だろう


「俺の幼馴染と妹です」


「お前の......」


「この二人は本当に罪を犯したのか?


 俺は学がない、罪状は書いてあるが、読めねえ


 それに、あの日、天に聖紋が現れた


 本当にこんな子達が罪なんて犯すものなのか?」


「二人は無実です」


俺は強く訴えた


「無実だったんです」


「わかった」


男はそういうと二人に近づき、二人の髪を切った


『遺髪』だ


「これを持っていけ、この事は黙っていろ、俺が罪に問われる」


 俺は男に礼を言うと、いくらか金を渡した


 俺の目的は遺髪だった。マリアが教えてくれた


 二人の無実の話はまだ公表されていない


 王の誤断、簡単には公表されないらしい

 

 俺は、二人の遺髪を手に、マリアの屋敷へ帰った


 俺は二人を弔った。重罪人は埋葬も葬式も許されない


 体は魔導兵団の新しい剣や魔法の試し斬りに使われる


 その後はごみとして投棄される


 重罪人は全てを踏みにじられる


 密かな葬儀、俺の他、エリス、イェスタ、アルベルティーナ、マリアが参列してくれた


 二人にはお墓を作ってあげられなかった。埋葬も墓も許されない


 二人の遺髪を百夢花の木の下に埋めた。二人が故郷を懐かしめる様に


☆☆☆


 俺はいつかの様にエリスの胸の中で泣いていた


「レオン様、二人はきっと、安堵してますよ


 レオン様を本当に裏切ってなんてなかったんですから」


「だけど、俺は今でもあの日の夜の事が忘れらない。例え、『魅了』の魔法だとしても、


 俺はどう心を治めればいいんだ?


 いっそ、『魅了』の魔法なんてなければ、二人を忘れられた。憎い人間と割り切れた」


「泣いたら、楽になれますよ


 エリスの大切な人は人を傷つけても平気な悪人になりました


 悪行を止めて欲しいから、睨んだり、嫌味を言いました


 でも、あの人は私を性奴隷として売り飛ばしてしまいました


 あの時も、いっぱい泣きました


 レオン様も泣いてください


 いっぱい泣いたら、忘れられるんです」


「......エリス......」 


俺は泣き出した。いつかの様に、情け無いが俺はエリスの胸の中でひたすら泣いた


 まだあどけなさの残る少女の胸の中で泣いた


「私達、一緒ですね。大好きな人の罪から逃げられなくて......」


エリスは俺を癒してくれた。ただ、ただ、俺を癒してくれた

よろしければ評価・ブックマーク登録をお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

読んで頂いた読者様ありがとうございます☆ 本作について、 「ちょっと面白かった!」 「島風の新作を読んでみたい!」 「次は何を書くの?」 と思って頂いたら、島風の最新作を是非お願いします。リンクがありますよ~☆ 読んで頂けると本当にうれしいです。 何卒よろしくお願いいたします。ぺこり (__)
経験値10000倍~ハズレスキル放置プレイヤーが覚醒したらレベル上限なし! 最強で最速のレベルアップ、俺は隙間時間を利用して世界最強に成り上がる~ ▲上記の作品もよろしくお願い致します(宣伝)▲
― 新着の感想 ―
[良い点] ざまぁw と言える最高の瞬間でした^^
[気になる点] 天に聖紋とやらが出てエリアスの悪行がバレ二人が犠牲者と判った。 女神様の怒ってるのに二人の首3日晒してるの? つまり女神より王の権威が大事な国…。滅びるんでない? そもそも奴隷と会う…
[気になる点] 二人はきっと、安堵してます?大好きな人? エリスが信用できなくなった。 ていうかそんなことしたら国は勇者以上の虚数魔術師が敵に回る事を理解してないのかな? [一言] せめて首を強奪して…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ