決死隊は任せて
『……なあ、俺ら、本当にこれで良いのかな……』
普通顔が、そう、呟くように言った。ヤンチャ男と地味顔が、普通顔を見る。
『今更だろ、そんなの……』
『……でも、確かに、戻れないところに来ちゃった気はしますね』
地味顔も、そう言う。
『……何だ?何だよ!俺ら、いっつも3人でやってきたじゃんか!3人で頑張ってきたじゃんか!俺ら3人がいれば、大丈夫だって!』
ヤンチャ男はそう叫ぶが、後の2人はじっと息を殺している。
『……あ、あの。自首するっていうのは……どうでしょうか?確か、普通に捕まるより、自首の方が罪は軽くなったと思います』
シュント先輩が、そう提案する。3人は、顔を見合わせた。
『自首な……。うん……。それも良いかもな……』
『おい!何弱気になってんだよ!だから3人だと何でもできるって……!』
『なんとかできないから言ってるんだろ!』
普通顔が、そう叫び、ヤンチャ男が口をつぐむ。
『もうなんとかできねーよ!人に暴力はふるったし、人質連れて立てこもって、警察に包囲されてるし、「RED」なんて正直もうどうでもいいよ!楽になりてーよ!』
『てめえ!』
ヤンチャ男が、普通顔の胸元をつかむ。しかし、
『殴るのか?やれよ。「教育」しろよ。どうせお前も俺らも、「詰み」なんだよ。終わりなんだ』
そう、普通顔に言われ、ヤンチャ男は、どうにもできずにつかんでいた胸元を放した。
――
「あの、部長……」
私が部長を呼び、今までの展開を軽く映像で流した。部長は、「ふむふむ」と言って、その映像を見ていたが……。
「よしっ!チャンスは今ねえ!」
と、声を弾ませた。
「ロロ、あなた、トラストにお願いはできるう?」
「お願い、ですか?一体何を?」
「――」
部長が、その言葉を口にしたので、私たちは一瞬ぎょっとした。セロン先輩やアジャリ先輩も、驚いてこっちを見ている。
「でも……できるかどうかわかりませんよ?それ」
「やってみて頂戴。きっとできるわ。」
「ウィバー!テレビでも!」
セロン先輩がそう呼びかけたので、私たちは今度はテレビの所に集まった。
『機動隊に動きがあるようです。どうやら、今から人質救出のために特攻するようです』
「まずいわ!あいつらに後れを取っちゃったら、死人・怪我人が出ちゃう!警察の所に行くわよお!」
部長が再びピーコートとマントを羽織るので、私たちもそれに従った。
何かが動く、瞬間だった。
――
「こんばんみ~!警察の皆さあん!」
部長の、気の抜けた挨拶に、警察も動きを止める。私たちは、もこもことコートで着ぶくれていたが、実に良い身分だとでも言いたげな視線が集まる。
「何か?今、決死隊の特攻準備で忙しいのですが」
ガラ警部がそう言うが、部長は怯まない。
「とってもいいお話を持ってきたのよお。これならきっと、怪我人も出さずに犯人と人質を家から出せるわあ」
「何?」
ガラ警部が、話を聞くそぶりを見せた。
そして、部長が、その提案を口にする。
「ぐ……し、しかし、その案では、実行する側があまりにも危険なのでは……」
「ご心配なくう。実行するのは、うちの部員の召喚獣ですう。あっれえー?もしかして、警察の方たちはこれに気付かなかったあ?私たちが一番に気付いちゃいましたあー?ぷっぷくぷー!」
「ぐっ……」
ガラ警部は、部長の煽りに、唇を噛んだ。しかし、すぐに横から手が出てきて、調子に乗った部長の頭をばしっと叩く。
「きゅう……」
「何警察煽ってんだ。公務執行妨害で逮捕するぞ?良いからその作戦とやらを詳しく話せ!」
手の持ち主は、マシタ警部だった。この人も、この寒い中、ずっと立ちっぱなしで作戦を考えていたらしい。本当に、警察はお疲れ様だ。
――
『……ん?地震か?』
グラグラと、室内が少しだけ揺れる。革命軍の3人は、すぐにそれに気付いた。
そのうち、ドン、ドン、と大きな音と、振動が始まる。
『なんだ!?警察が何かしてるのか!?』
『こええ~、地震こええよ~!』
振動はさらに大きくなり、外ではなにか『ぎゃははははは~~~~!!ふい~~~~~!』というハイテンションな声がしている。
『やっぱ警察だろこれ!』
『でも、やべえよ!俺らのアンチマジック装備でも、家を潰されたらひとたまりもねーじゃん!どうする!?』
『……とりあえず、眼鏡君は絶対に死守だ!無事に帰さないとな!』
そう言って、男たちは、シュント先輩に覆い被さるように護り始めた。
『うわ、うわああああ!壁に穴が開いちまううううう!』
『いや、大丈夫だ。そう簡単に家を壊せる道具なんて、あいつら規則でガチガチだから持ってこれるはず……』
そこで、壁に、ぼこっと大きな穴が開いた。
そこから見えてきたのは、長いぼさぼさの銀髪と、ぼろぼろの服装をした、ワイルド系の美形。
「みいつけたあ~~~~~!」
「ぎゃああああああああ!!」
男たちは、悲鳴を上げた。
そう、私たちは、トラストの怪力を使って、別荘の壁に穴を開けたのだった。




