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少女ロロの事件記録手帳  作者: 烏丸牙鳥
はじまりの物語
4/42

ブラック・ドッグ

(出てこないでよ!今忙しいんだから!)


 私は頭の中で強くそう言った。だが、そいつは、信じられないようなことを言う。

『ミーに、助けて欲しくないざますか?』

 私は、告げる。

(はああ?あんたって統合失調症の幻覚なんでしょ?助けるも何も、こっちに干渉できないじゃない――)


 そう言っているうちに、ブラック・ドッグが私たちの居場所を突き止めたようだ。ぶはあっと息を吐き、攻撃態勢を取る。

「やば……見つかったじゃん!よし、ロロいくよ!」

 シャンテが叫ぶと、両手に取った剣を握りしめた。……だが、その手は震えている。

 無理もない。私たちは、初心者用のまんじゅうのような召喚獣を倒したことはあるものの、あれだけ大型の獣……しかも、下級とは言え魔獣を倒したことはないのだ。私たちは、初めて魔獣と相まみえる。


 私は、シャンテの震える手に、そっと手を重ねた。私の手も、同じように震えている。

「大丈夫、シャンテ。大丈夫」

 私がうなずいてみせると、シャンテは、

「そ、そうだよね。ロロは成績良いし、あたしは実技結構やるもん。大丈夫だよね?」

 と、やはりうなずいてみせた。私の成績は普通程度だが、シャンテの実技が優れているのは本当だ。


 二人して、下駄箱の影から飛び出し、魔獣に対峙する。

「シャンテ!二人で一緒に行くからね!」

「あいよ!」

 私たちは、自分に強化魔法を唱える。頭の中で、呪文の唱和と同時に魔術構成を編み上げる。

 しゅぴんと、鋭い音がして、私たちは下級魔法・シールドを張った。これで、一度は相手の攻撃を防げるはずである。

 ……ただし、このブラック・ドッグがあまりにも強い突破力を持っていた場合、意味はなくなってしまうのだが。


「私じゃやられちゃう。シャンテ、壁やって!ナイトなら大丈夫なはず!鞄に治癒ポーションあるから、必要なら取ってくる!」

 壁、というのは、ナイトの役割で、そのふんだんな体力をもって、敵の攻撃を受け止めることをいう。当然、攻撃はナイトに集まるが、その分後衛は無駄な治癒魔法をせずに済むのだ。

「あたし、まだナイトじゃないんだけど……でもまあ、わかった!てか、あんたも叩けよ」

 と、釘を刺される。確かに、私は本格的な僧侶ではないけど。


 私たちは、オオン……と雄叫びを上げたブラック・ドッグに集中する。


 先に動いたのはシャンテだ。剣一本でブラック・ドッグの頭めがけて突っ込んでいく。私も、腰に差した初心者用の短剣ダガーを持って、ブラックドッグの目を狙う。ブラック・ドッグは、最初に攻撃したシャンテに向かって、牙を突き立てようとした。


 シャンテの体に、ぴっと傷が走る。シールドが貫通されているのだ。これが初級魔獣だということが、私にはとてもじゃないが理解できない。

 さらに、ブラック・ドッグは、首を大きく振ると、私たちをはね飛ばすような仕草をした。しまった、頭を狙っていたのが下手を打ったか……!?


 私たちは、重なるようにして倒れる。

 そして。


「きゃあああああ!!」

 シャンテが悲鳴を上げた。見ると、ブラック・ドッグがシャンテの肩に噛みつき、肉を引きちぎろうとしている。

「止めろ!!止めなさい!!」

 私は急いでダガーを拾って、食事に夢中のブラック・ドッグの目に突き刺した。


 ブラック・ドッグは、オオン、と悲鳴をあげ、のけぞる。その隙に私はシャンテを取り戻すと、彼女を抱きながら後ろに下がった。


「シャンテ、大丈夫!?」

 彼女の顔を見ると、シャンテは途切れがちに「逃げ、て……!」と言った。

「何言ってるの!私が逃げたらシャンテが殺されちゃう!」

 

 と。

 ブラック・ドッグが怒りをあらわにしてこちらに向き直った。ダガーは、相手の左目に突き刺さっている。

――と。


『俺の力をお探しかな?』

 と、ヤツが頭の中で声をかけてくる。

 私は、「黙れ!黙れ!」と頭を抱えてわめいた。


「ロロ……」

 シャンテが、こんな時まで心配そうに私を見る。私の心配してる場合じゃないでしょ、と、思った。


『俺の力が欲しいっていうのならば~~?ちゃーんとお願いしなきゃな~~~?俺、精神病扱いされたしぃ。傷ついたんだぜ?俺もさあ』


 ブラック・ドッグ、シャンテ、謎の男。ブラック・ドッグ、シャンテ、謎の男。

 私は、それらを頭の中でフル回転させると、ついに、言った。


「た、助けて……」

『ん~~~?』

「助けて、ください!!!!!!」


 私が絞り出すように言うと、その男は、

『はい、女の子のピンチ入りました~~~~~あ!!』

 と、やはり楽しそうに言った。何も起きなかったら、このままシャンテと一緒に死のう。そう思っていたのだが……。


 私の体が、急に光を帯びた。七色の光だ。その七色の光が、全身を取り巻いていく。

 光が走ったところは、透明な、大きなうろこのようなもので覆われている。甲冑とは違い、重さはなく、セミの抜け殻のように繊細で脆そうに見える。色は透明だが、光を受けると、虹色にキラキラと光る。

 やがて、光が去ると、私は、全身をその甲冑……?で覆われていた。光が、その甲冑に合わせて、キラキラと輝く。


 そして、私の隣には、見知らぬ、長い銀髪をぼさぼさに汚した、やけに筋肉質な、服もぼろぼろの男がいた。美形……というか、どっちかというと「男前」な顔である。


「ようロロちゃん!!や~っと会えたな!ずっと頭ん中にいたのによお!」

 そいつは、喋った。私の前で、喋った。これも、統合失調症のせいなの!?と、私は戸惑う。

「ロロちゃん、挨拶は抜きだぜ。今は、アイツを倒してお友達を助けないとな!!お~とも~だち!うん、いい響きだあ!」


 私は、甲冑を着ながら、ブラック・ドッグに相対する。ブラック・ドッグは私と、急に現れた男とを交互に見ている。……だろうな。そういうリアクションにもなるわ、この状況。


「行くぜ!ロロちゃん!!お前ら2人とも守るぞ!!」

 そう言われ、私は、一歩、一歩と足を踏み出し、そして、駆けだした!

 

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