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少女ロロの事件記録手帳  作者: 烏丸牙鳥
合い言葉は「RED」
38/42

初めてのカップヌードル

 ふと気付くと、辺りは夕焼けに染まっていた。

 

「日暮れ時か……しかし、犯人に動きがあるかもしれない。引き続き、交代制で見張らせよう」

 ガラ警部が、そう指示を出す。

「ガラ警部!周囲の山荘のご厚意で、宿泊させていただけるようになりました!」

 そう、伝令が告げると、ガラ警部は「そうか。わかった」とそれを受ける。


「君たちはもう帰りなさい。……って、そうか。帰る場所が占拠されてるのか……警察と同じ場所で雑魚寝させるわけにもいかないし……」

「あ、大丈夫ですう!おじいちゃん、もう一つ別荘持ってるのでえ、そっちに行きますからあ!」

 ウィバー部長はそう言うが、多分、また隣人の別荘に不法侵入するつもりだろう。


「そうか。なら……」

 と、ガラ警部が言いかけたところで、何人かの隊員が、大きな箱を持って現れた。

「極東食品から差し入れです!なんでも、古代のかっぷらーめん?とかいうインスタント食品をリニューアルしたもののようです!」


 私たちは、物珍しさもあって、箱の置かれた台を囲む。

「カップラーメンってまだありますよね?」

 私が問うと、セロン先輩が、

「今、私たちが食べてるカップ麺とは、作り方が違うみたいね。確か、極東食品は、昔の中華料理を再現する会社でもあるのよ。でも……私も、食べるのは初めてだから、ワクワクするわ」

 と、好奇心に瞳を輝かせている。


「?これは何だ?カサカサに乾いているようだが、このまま食べるのか?」

 ガラ警部がガサガサとカップを振ってみせると、隊員が説明書を読みながら言う。

「えーと、沸騰したお湯をかけて、蓋を戻して、3分待って、食べるようですね」

「ほう。私たちの知るカップ麺は、レンジで温める必要があるからな。湯をかけるだけで良いのはなかなか画期的だな」


 私たちは、魔力で温めたお湯を、カップ麺の容器に注ぐ。ふんわりと、醤油の良い匂いが辺りに立ちこめた。

「香りはジャンキーだけど、たまにはこういうジャンクフードも食べたくなるのよねえ」

 部長が、待ちきれない様子でうろうろしながら言う。

「多分、今のカップ麺よりは美味しくないと思うけど……って、3分経ったわね」

 セロン先輩が、自分のカップ麺を引き寄せた。私たちも、めいめいにカップ麺を持って、箸を取る。


「容器が面白いわね。このふわふわしたのも、ポリエチレンでできてるのかしら?でも、確かにこれなら火傷せずに済むわ……よく考えられてるものね」

 セロン先輩が、感心したようにカップ麺を色んな角度から見ている。


 私は、お腹がすいていたので、すぐにカップ麺に口を付けた。


「……うん。うん。ジャンクな味」

「そうね……特別美味しくは、ないんだけど、なんか癖になる味ね」

「そう?私は好きよお?この味」


 私たちは口々に感想を言い合う。寡黙なオークのアジャリ先輩は、フーフーと何度も息を吹きかけて食べている。……猫舌らしい。


「この肉って、ミンチかしら?謎の中毒性があるわ。スープも澄んでて王道の醤油味よね」

「卵もふわふわでスポンジみたいですね。麺も、決して今のカップ麺よりは美味しくないんですけど、なんか、また食べたくなる味ですよね……」

「麺がふにゃふにゃだわあ!私は、あと1分短い方がきっと美味しく食べられると思うのお!」


 気がつくと、報道のカメラマンが、私たちをズームで撮っている。女子学生が物を食べている光景は、数字が取れるのだろうか。というか、警察の人を撮って欲しい。


「ふあー、ごちそうさまあ!美味しかったあ!」


 私たちは、空になったカップ麺の容器を、警察官が持ってきたゴミ袋に捨てた。ポリエチレン容器はリサイクルに回されるので、もちろんカップと割り箸は別々に分別して捨てる。


「さあ、今日は戻りましょうか。シュントたちも気になるわ」


 その部長の声で、私たちはアジト……隣人の留守に勝手に侵入して色々と使わせてます、的な隣人の別荘に戻った。


「シュントたちは……っと」

 と、再び画像転移をすると、なにやら騒がしい声が聞こえてきた。


『はあ!?食料がもうねえだと!?』

『は、はい……あとは、お米と、卵4個くらいしか……』


 どうやら、こちらも食糧事情が変わってきたらしい。

『警察に持ってきてもらうか?』

 普通顔が、思案して言う。

『でも、警察から食料貰うとか、かっこわるくねーか?今更って感じでよ』

 ヤンチャ男が言う。

『あ、なんなら、俺、食べなくて良いですから。他の皆で分けて食べましょうよ?』

 と、地味顔が提案する。


『いやいや~、そういうの止めろよ~』

『そうだよ~、俺ら皆でやってきたじゃ~ん!』


『あ、それなら、私が2個、スクランブルエッグで食べるわ。残り2個は他の子で分けなさいな』


 女教師風が、そんなことを言い出したので、緊張の糸が切れた。


『てめえ!!今のこの状況で、何言ってんだ!!』


 ヤンチャ男が、ついに、女教師風に銃を向けて、怒りをあらわにしたのだった。

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